第93話 セトの決断
お世話になっております。ヘイホーみりと申します。
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セトとタクトの対決から1週間がたち、セトはもうすっかりと体調を取り戻していた。
しかしふとした瞬間、セトはいつも浮かない顔をしている。
そのことに気づいていたタカラはギルドの食堂でセトに話しかける。
食堂にはタカラとセト以外のメンバーの姿は見当たらない。
「セト、最近浮かない顔をしているけどどうしたの? 何か悩み事?」
タカラがセトにそう尋ねる。
「……タカラ、もう気づいてるんでしょ? 『虹音の協奏曲』のタクトさんとの対決を見てたんだから……」
セトはタカラにそう言う。
やはり、この前のタクトとの対決で何か思うところがあったようだ。
「確かにタクト君に勝ったとは言えないけど、それでもかなりいい線いってたよ? タクト君に追いつくのも時間の問題だよ」
タカラはそう言う。
タカラはいつものように接しているつもりであろうが、それでもどうしてもセトに気を使っているように見えてしまう。
「いい線いってた? タカラ、ほんとにそう思ってる? 正直にこの前の対決の感想を言ってほしい」
「……」
セトの言葉にタカラは黙ってしまう。
もちろん、タカラは思っていないことを言っているわけではない。
セトとタクトの対決を見て、セトは本当に良く戦ったと思っている。
しかし、当の本人は全くそのように思っていないみたいだ。
「タカラはいい線いってたって言ってくれるけど、誰が何と言おうと私は負けたのよ」
セトはそう言いながらこの前の対決について話し始める。
「確かに剣術に関してはタクトさんよりも優れている自信がある。今までカインさんとたくさん修行してきたし、スキル:<剣聖>もあるし、それが私の強みだと思ってる。でも、私とタクトさんの決定的な違い……それは、魔法よ。それが今回私がタクトさんに敗北した理由……」
セトはタクトに負けた原因をしっかりと理解していたようだ。
セトはそう言いながら涙を流し、さらに話し続ける。
「タクトさんも言ってた。魔法ができていないやつが魔導剣士を名乗る資格ないって……魔法と剣術、両方できてこその魔導剣士だって! 私、魔法をもっと極めたい……タクトさんよりもすごい魔導剣士になりたい!」
セトは涙を流しながらタカラにそう訴えかける。
(いい線いってただなんて……そうじゃないだろ! 僕は今まで何をやってきたんだ! 魔法のことで仲間を泣かせてしまうなんて……僕はギルドマスターとして、魔導士として失格だ!)
タカラは涙を流しているセトを見てそう後悔する。
タカラ自身魔導士であるにもかかわらず、魔法ができないと言って泣いている仲間を見て自分が許せないのであろう。
タカラは自分自身に対して怒りが抑えきれないでいる。
そして、同時にタカラは決心する。
何としてでもセトの願いを叶えようと。
「セト、今まで本当にごめん。魔導士である僕がいながら魔法のことで悩ませて、そして涙まで流させてしまって本当にごめん。だけどもう大丈夫だ。僕がセトを世界一の魔導剣士にすると約束するよ」
タカラは真剣な表情でセトにそう言う。
セトは涙を流したまま、真っすぐとタカラを見ている。
「よし! そうと決まればすぐに出発だ!」
タカラはそう言って勢いよく立ち上がる。
「出発するってどこに?」
セトは困惑しながらそう言う。
「もちろん、魔法都市「フースイ」だよ」
タカラは困惑しているセトに対して笑顔でそう言う。
「魔法都市!?」
セトは驚いたようにそう言う。
セトも名前は聞いたことあるようだ。
「確かにセトは剣術に比べると魔法がまだ未熟なところがある。そして、魔法の差がタクト君との対決の勝敗をわけたというのも正解だと思う。だから、まずは魔法をもっと強化していく必要がある」
タカラはそう言いながらさらに説明を続ける。
「僕が魔法を教えてもいいけど、セトは世界一の魔導剣士を目指しているんだ。だから魔法も世界一の場所で習うべきだよ。魔法都市「フースイ」には世界中の魔導士が集まる。それだけ魔導士のレベルも高いし、魔法の修行環境としても世界トップレベルだ。魔法を習うならここ以外考えられないよ」
タカラはセトにそう力説する。
「私、魔法都市で魔法を習いたい!」
タカラの話を聞いてセトも乗り気なようだ。
♢
その日の夜、タカラは『太陽の幼樹』のメンバー全員をギルドの食堂に集めた。
セトと一緒に魔法都市「フースイ」に行く許可をもらうためだ。
「みんな、集まってくれてありがとう。今日は僕とセトからお願いがあって集まってもらったんだ」
タカラがそう言うと、セトもタカラの横に並ぶ。
「実はさっきセトと話していたんだけど、セトからもっと魔法を極めたいというお願いがあってね。それで僕が魔法都市「フースイ」で魔法を学ぶことをすすめたんだ。セトを一人で行かせるわけにもいかないから僕もついていこうと思ってる。だから、みんなの許可が欲しんだ」
タカラがみんなに向けてそう言う。
続けてセトがみんなに向けて話し始める。
「私、どうしても世界一の魔導剣士になりたいの! だけど、私自身魔法があまり得意じゃないこともわかってる。だから魔法都市「フースイ」でトップレベルの魔法を学びたい。自分勝手でわがままなお願いだということはわかってるんだけど、どうか許してくれないかな? お願い!」
セトはそう言ってみんなに頭を下げる。
話を聞いていた他のメンバーは黙ったままである。
少し沈黙が続いた後、ムサシが話し始める。
「……許すも何も、なあ?」
ムサシは他のメンバーを見ながらそう言う。
「そうですよ。そんなことに私たちの許可なんていりません!」
「レベルアップしようとしている仲間を止める奴なんて『太陽の幼樹』にはいないぞ?」
「セトの好きなようにするべきだよ!」
ムサシの問いかけにテルル、ガンテ、マキもそう答える。
他のメンバーもみんな笑顔でうなづいている。
「みんな! ありがとう! 私、絶対強くなって帰ってくるから!」
セトは再び頭を深く下げながら力強くそう言う。そんなセトに対して、
「……何言ってるんだ? もちろん俺たちも行くぞ?」
当たり前だというようにムサシがそう言う。
「もちろんですよ! セトとタカラだけ行かせませんから!」
テルルもそのように言う。
「みんな、本当にいいのかい? せっかくこの都市でも知名度が上がってきたのに……」
タカラがそう聞くと、
「そんなことどうでもいいですよ! それに、私たち魔導士にとってはメリットしかないですからね!」
テルルはブランの横に移動しながらそう言う。
「魔法都市楽しそうだなー!」
ブランも行く気満々のようである。
「……剣の修行は1人でもできるし。それに魔法ばっかりじゃ剣の腕がなまるぞ?」
「ですね! 剣術の練習相手も必要ですし!」
ムサシとコバルトは肩を組みながらセトにそう言う。
「ムサシ……コバルト……」
セトは2人の言葉に泣きそうである。
「僕たちも行くー!」
パルルとポルルもそう言いながらタカラに抱きつく。
「あっ! わっ私だって行きますよ!」
「ガゥ!」
タカラに抱きつくパルルとポルルを見て出遅れたと思ったのか、アイネもタカラのもとに走って行き、タカラに抱きつく。
そしてアイネを追いかけるようにタイガがついて行く。
「ダンロッド様には私のほうから説明しておきますね」
レフィーナもそのように言う。
もうみんなで行くことが決定しているかのような口ぶりである。
「みんな、ありがとう! じゃあ、みんなで魔法都市に引っ越しだ!」
こうして、広域中核都市「ベーサイド」でかなり知名度が上がっていたにもかかわらず、『太陽の幼樹』は急遽魔法都市「フースイ」へ拠点を移すことを決定したのであった。
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