第92話 タカラの実力
お世話になっております。ヘイホーみりと申します。
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タクトは意識を失って倒れているセトをじっと見つめる。
(『太陽の幼樹』のセト……強いとは思っていたがまさかここまでだったとは。スピードと剣術の実力は向こうのほうが上。勝敗を分けたのは魔法の差か。とはいえ、最後こいつが気を失わなければ俺も無事ではなかっただろう。とてもではないが俺が勝ったとは言えないな)
タクトはセトを見ながらそう思う。
まさかセトの実力が自分のすぐ後ろまでせまって来ているとは思っていなかったようだ。
先に倒れたのはセトであるが、最後セトが意識を失っていなかったら自分もただでは済まなかったという事実に、タクトの背中に冷や汗が流れる。
(……それにしても、最後のは何だったんだ?)
タクトは先ほどの出来事を思い返し、そう思う。
タクトも最後のセトの様子に違和感を感じていたようだ。
少し遅れて『虹音の協奏曲』のギルドマスターであるドーラムもやってくる。
「セトさんは大丈夫ですか!?」
ドーラムは心配そうにセトのもとに駆け寄る。
「回復魔法はかけましたが、まだ目を覚ましません。このまま様子見ですね」
タカラはドーラムにそう伝える。
「そうですか……」
ドーラムは申し訳なさそうにそう答える。
もちろん、セトがこうなってしまったのはドーラムのせいでもタクトのせいでもないのだが、ドーラムも責任を感じてしまっているようだ。
(しかし……まさかタクトとここまでの勝負を繰り広げるとは。『太陽の幼樹』の実力はしっかりと把握しているつもりだったが、その考えを改めなければいけないかもしれないな)
ドーラムはセトを見ながらそう思う。
タクトと同様、ドーラムもセトがここまでやるとは思っていなかったようだ。
とその時、
「ん……」
そう言ってセトが意識を取り戻し、ゆっくりと目を開ける。
「セト!? 大丈夫!? 気分はどう!? 体に異常はない!?」
セトが意識を取り戻したとわかり、タカラはセトにものすごい勢いで話しかける。
セトのことがよほど心配であったのだろう。
「タカラ……私は大丈夫だよ……対決は?」
セトはゆっくりとタカラにそう尋ねる。
「セトはよくやったよ。そんなこと今はいいからしっかり休んでね」
タカラは泣きそうになりながらも笑顔でセトにそう言う。
「そっか……あのね、さっき夢の中で男の子にあったんだ。小さな男の子。私に笑いかけてた」
セトは目をつむりながらほほ笑んでそう言う。
「セトはさっきまで気を失ってたからね。多分そのせいだよ」
タカラはそう言う。
とにかく、セトが無事だということが分かり、タカラ達は落ち着きを取り戻す。
「タカラ殿、どうしますか? セトさんのことを考えて、今日はこれで解散ということでも全然かまわないですが……」
ドーラムはタカラにそう話しかける。
「いえ、セトも意識を取り戻しましたし、大丈夫でしょう。それに、もともと僕とドーラムさんの対決も約束してましたから。約束は守りますよ」
「そうですか。そう言っていただけるのならお言葉に甘えて」
どうやら従来の約束通り、タカラとダーラムも対決をするようだ。
タカラとドーラムは距離をとって対峙する。
(約束だから対決を続行したけど、それでもやはりセトが心配だ。相手の実力をゆっくり確かめたいところだったけど、そんな余裕はなさそうだね)
タカラはドーラムと対峙してそう思う。
ドーラムはタカラと対峙すると、身の丈ほどの杖を構える。
おそらくドーラムも魔法を使うのであろう。
(セトさんが気を失ってどうなることかと思ったが、無事タカラ殿と手合わせすることができてよかった。こちらとしてはタカラ殿の実力もできる限り把握しておきたいからな)
タカラと対峙してドーラムはそう思う。
ドーラムにとって今回の対決はセトとタカラの実力を把握することが目的である。
なので、タカラと対決をしないことには意味がない。
「行きますよ!」
ドーラムはそう言うと魔法を唱える。
「“炎帝の……」
しかし、ドーラムが魔法を唱えるよりも早くタカラの魔法がドーラムのもとに飛んでくる。
ドーラムは魔法を唱えるのを途中でやめ、タカラの攻撃を回避する。
そして、気を取り直してもう一度魔法を唱えようとしたとき、再びタカラの魔法がドーラムめがけて飛んでくる。
「ちっ!」
ドーラムは舌打ちしながら再びタカラの魔法をかわす。
しかし、その後もタカラの魔法による攻撃の手は休まることなく、タカラの魔法をいくらかわせど、ドーラムの攻撃のターンがやってくることはない。
それどころか、タカラの魔法はどんどん激しさを増していき、ドーラムは避けることさえ難しくなっていく。
(どういうことだ!? この私が全く反撃を許してもらえない!? なんだこの攻撃の多さは!? いや、魔法の詠唱が速いのか?……ちょっと待てよ……タカラ殿は確か支援魔導士ではなかったか!? どうしてこんなに戦い慣れしているんだ!?)
♢
「ドーラムさん、そしてタクト君、今日はありがとうございました。非常に勉強になりました。では、セトのことも心配なので今日はこれで失礼しますね」
「あ……ああ」
タカラはドーラムとタクトに別れの挨拶をするとセトをおぶってギルドへと歩き出す。
ドーラムとタクトはタカラの後姿を無言で見送っている。
「……『太陽の幼樹』のタカラ……とんでもない化け物ですね」
タカラの姿が見えなくなると、タクトは一言そう言う。
「ああ……そうだな」
ドーラムも力のない声でタクトに同意する。
(タカラ殿……とても本気を出しているようには見えなかった。私とはそもそも格が違う……か)
ドーラムは先ほどのタカラとの対決を思い出しながらそう思う。
「私もそこそこやると思っていたが、自信をなくしてしまうな。あんな化け物と戦うのはもう二度とごめんだ」
ドーラムは最後に一言そう言うと、タクトと一緒に『虹音の協奏曲』のギルドへと帰っていくのであった。
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