第80話 予想外の態度
お世話になっております。ヘイホーみりと申します。
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大規模都市防衛戦当日。
タカラ達『太陽の幼樹』のメンバーはまだ太陽が昇っていない未明から、防衛場所である広域中核都市「ベーサイド」南西部に向かう。
防衛場所につくと、すでに第4部隊所属のほとんどのギルドが集まっている。
他の防衛場所も同じようにだいたい集まっているようだ。
魔物が来るだいたいの時間はわかっているが、何が起きてもいいようにどのギルドもかなり早めに集まっているのだ。
(だいたい集まってそうだね)
タカラは第4部隊の戦力を把握するために周りを見渡しながらそう思う。
第4部隊だけでおよそ1万人ほどであろうか。
全ての部隊を合わせると、およそ6万人の冒険者が今回の作戦に参加しているらしい。
かなりの人数である。
タカラが第4部隊の戦力把握に努めていると、一人の男性がタカラに近づいてくる。
そして、タカラの目の前でひざまずく。
「タカラさん、お忙しいところすみません。『漆黒の暴君』ギルドマスターのネリです。この度は俺が第4部隊の副隊長に立候補し、それを認めてくださりありがとうございます。タカラさん、そして『太陽の幼樹』のみなさんの役に立てるよう頑張るので、俺たち『漆黒の暴君』を遠慮なく使ってください」
ネリはひざまずいたままそう言う。
タカラは思いもしなかった状況にポカーンとしている。
(えっと……『漆黒の暴君』のギルドマスターってこんな感じの人だったっけ? おかしいな。僕が知っている人と全く違う。頭でも打ったのかな?)
タカラの知っているネリとは全くかけ離れており、タカラはひどく困惑している。
もちろん、ネリがこんなふうになってしまったのはタカラのせいである。
しかしタカラは、まさか自分のせいでネリがこのようになってしまったとは全く思っていないようだ。
「おい、あれって『漆黒の暴君』のギルマスじゃねーか?」
「なんで『漆黒の暴君』がこんなとこにいるんだ? こういう面倒ごとには参加しないんじゃなかったのか?」
「そんなことより、あのネリがひざまずいているぞ? どういう状況なんだ? ネリをひざまずかせている奴は何者だ?」
周りにいた冒険者たちはまさかの光景にざわついている。
ただでさえネリは4大ギルドのギルドマスターとして知名度が高いのに、4大ギルドの中でも飛びぬけて素行の悪い『漆黒の暴君』のギルドマスターがひざまずいているというありえない光景に、みんなが注目している。
「ちょっと、そんなひざまずいたりしなくていいよ。周りの人も驚いてるし」
タカラは慌ててネリにそう言う。
「いや、タカラさんの前で礼儀を欠くわけには……」
ネリはそう言って立ち上がろうとしない。
(本当にどうしちゃったんだろう? 僕なんかしたっけ?)
タカラはそう思いながら、ネリを無理やり立たせる。
「とにかく、ちゃんと僕たち第4部隊をサポートしてくれるなら嬉しいよ。よろしくね」
「はい。必ず期待に応えてみせます」
ネリはそう言うとその場を去っていく。
(どこかに行ってくれてよかった。みんなが注目してたし、僕が悪い奴みたいにみられても困るし……でも、ちゃんと副隊長の役割を全うしてくれそうで何よりだ)
タカラは先ほどのネリの様子からそう思う。
(そろそろ第4部隊の部隊長としてあいさつしておこうかな)
タカラはそう思うと、第4部隊所属の冒険者たちに向けて話し始める。
「みなさん、僕は今回この第4部隊の部隊長を任されることになった『太陽の幼樹』のギルドマスター、タカラといいます。みなさんの働きに期待しています。よろしくお願いします!」
タカラはなるべく多くの人に聞こえるように、魔法で声を大きくしながらそう言う。
「おい、あの人、さっき『漆黒の暴君』のネリをひざまずかせていた人だぞ!」
「なんだって!? あのネリが? あの人そんなにすごい人なのか!?」
「ネリをひざまずかせるなんて、この都市一番のギルド『虹音の協奏曲』のギルドマスターでさえ不可能だぞ?」
「そんなにすごい人が俺たちの部隊長だなんて! 俺たちはついてるな!」
先ほどのネリをひざまずかせていたという出来事が瞬く間に広がっていき、大きな歓声となる。
先ほどの出来事が図らずもプラスに働いたようだ。
しかし、当の本人はというと、
(なんでこんなに盛り上がっているんだろう? 大したスピーチでもなかったと思うけど……)
タカラはなぜこんなに大きな歓声が上がっているのかわからないでいる。
一方その頃、広域中核都市「ベーサイド」南門では、第1部隊の部隊長である『虹音の協奏曲』のギルドマスターと、『虹音の協奏曲』のエース的存在であり、冒険者ランキング15位でもあるタクトが話している。
「隣の第4部隊が何やら盛り上がってるな。部隊長のタカラ殿が何かしたのだろうか?」
『虹音の協奏曲』のギルドマスターがそう言うと、
「ふっ、どうせたいしたことはしてないでしょう」
タクトは鼻で笑いながらそう言う。
「タクトは『太陽の幼樹』のことになるとやけに突っかかるな。お前らしくないぞ? そんなに『太陽の幼樹』のことが気になってるのか?」
「別にそんなんじゃありませんよ」
タクトはそっけなくそう言う。
「それにしても、戦う前からあの人数の冒険者たちをやる気にさせるなんて、さすがタカラ殿だな。思っていた通り、タカラ殿は部隊長にふさわしかったようだ」
『虹音の協奏曲』のギルドマスターは感心したようにそう言う。
その後も『虹音の協奏曲』のギルドマスターとタクトが戦闘配置や細かい対応などを確認していると、
「魔物が来たぞー!」
見張り役の1人が大きな声でそう言う。
目を凝らすと、少し離れたところから砂ぼこりが上がっているのがわかる。
魔物の大群が押し寄せてきているのだ。
「タクト、配置につけ。いつも通り、期待しているぞ?」
「任せてください。『太陽の幼樹』には負けませんよ」
タクトはそう言って自分の配置場所に戻っていく。
「……やはりタクトのやつ、『太陽の幼樹』のことが気になっているな」
『虹音の協奏曲』のギルドマスターはやれやれといった様子でそう言う。
こうして、大規模都市防衛戦の火蓋が切って落とされるのであった。
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