第67話 テルルの憂鬱
お世話になっております。ヘイホーみりと申します。
この作品を選んでいただきありがとうございます。
誤字・脱字、おかしな点がありましたら教えていただけると嬉しいです。
「はぁ……」
テルルは1人で街の中を歩きながら大きなため息をつく。
表情もいつものような明るい表情ではなく、どことなく暗い感じである。
(私って今の『太陽の幼樹』に必要とされているのかな? 私がいてもいなくても、かわらず『太陽の幼樹』はこのまま大きくなっていくんだろうな……)
テルルはそう思いながら再び大きなため息をつく。
どうやらテルルは、自分が『太陽の幼樹』に必要な存在なのかどうかということで悩んでいるようである。
(最近私以外のみんなはギルド対抗戦でどんどん腕をあげてるし、ギルドの勝利に貢献してる。特にコバルトなんて剣を習い始めたのは最近なのに、ギルド対抗戦ではいくつもの勝利を積み上げて急成長を遂げてる。パルルやポルルもまだ子供なのにギルドのために毎日情報収集をしてギルドの危機を何度も救ってる。それなのに……それに比べて私は……)
テルルはそう思うと、思わず泣きそうになる。
広域中核都市「ベーサイド」に来てからというもの、『太陽の幼樹』はギルド対抗戦ばかりであるが、回復魔導士であるテルルがギルド対抗戦に出ることはないので、余計そのように思ってしまうのであろう。
ギルドの他のメンバーに差をつけられてしまい、自分の存在価値もわからなくなり焦っているのだ。
そんなテルルが俯きながら歩いていると、前を見ていなかったせいか前から来た女性とぶつかってしまう。
「きゃっ!」
テルルとぶつかった女性が高い声で叫びながら地面に倒れる。
「あっ、すみません! 私が前を見ていなかったせいで!」
テルルは申し訳なさそうに謝りながら慌てて女性に手を差し伸べる。
するとそこにはこの世のものとは思えないほど美しい容姿をしたエルフの女性が倒れている。
(なっ、なんて美しい人なんだろう! こんな美しい人見たことない……)
テルルはそう思いながらその女性に見とれて動けなくなる。
「いいんです、気にしないでください。私もしっかり前を見ながら歩いていればこんなことにはならなかったですから」
エルフの女性は大きな帽子をかぶっており、帽子で顔を隠しながら歩いていたのでよく前を見ていなかったようだ。
テルルが女性に見とれていると、女性はそう言いながら自分で立ち上がろうとする。
テルルはその女性の言葉にはっと我に返り、慌てて女性に手を貸す。
「ありがとうございます」
エルフの女性はそう言いながらテルルの手を取り起き上がる。
女性が起き上がった後もテルルはついその女性に見とれてしまう。
「ふふ、エルフって珍しいですよね」
テルルが女性を見つめていると、女性が笑いながらそう言う。
「あっ、ごめんなさい! そういうつもりでは!」
テルルは再び慌ててそう言う。
「全然大丈夫ですよ。私あんまりそういうの気にしてませんから」
女性は笑顔を絶やさないままそう言う。
「私、テトラといいます。回復魔導士として冒険者をやっています。よろしくお願いします」
「わっ、私はテルルです! 私も回復魔導士です! よろしくお願いします!」
テトラの落ち着きのある自己紹介に対し、とても緊張した様子でテルルも自己紹介をする。
「あなたも回復魔導士だったんですね! じゃあ、今日こうして出会えたのも何かの縁ですね」
「そうですね! 私もびっくりです!」
「そうだ! 私これからお茶しようと思ってたんです! もしよかったら一緒にどうですか?」
「いいんですか!?」
「もちろんです! 1人よりも話し相手がいたほうが楽しいですし、テルルさんの迷惑でなければぜひ!」
テトラはテルルの手を取りながらそう言う。
「そういうことなら私も行かせていただきます!」
こうしてテルルは偶然出会ったテトラと一緒にお茶をすることとなった。
テルルはテトラに連れられて、あるお店に入る。
落ち着きがあり、おしゃれな空間のお店だ。
「わー! おしゃれなお店ですね!」
テルルがお店の中を見渡しながらそう言う。
「そうですよね! 私、一度ここに来てみたかったんです!」
テトラも嬉しそうにそう言う。
席に座りテルルとテトラは好きなものを注文してお互いのことを話し始める。
時間が過ぎるのを忘れて2人は楽しそうに話している。
どうやら2人の相性がいいようだ。
「それで、テルルさんは何か悩み事があるんですか?」
突然テトラがテルルにそう切り出す。
「えっ、なんでわかったんですか?」
「私、そういうことに敏感なんです。もしよければお話聞きますよ」
テトラは笑顔でそう言う。
「実は……最近ギルドでの私の存在意義がわからなくなってしまって……私がいてもいなくてもギルドは何も変わらないんじゃないかって……」
テルルは落ち込んだ表情でそう話し始める。
「みんなはギルド対抗戦で活躍しているのに私は何もできていないし、今だってみんな『漆黒の暴君』とのギルド対抗戦に向けて必死に頑張っているのに、私は何をしていいかわからなくなって……」
テルルはそこまで言うと下を向いて黙ってしまう。
涙が流れそうになるのを必死にこらえているのだ。
「その気持ちわかります。私も同じようなことで悩んだことがありますから」
テトラは何度もうなずきながらそう言う。
「でも、テルルさんは間違いなく誰かの役に立っているはずです。今だってこうやって私に付き合ってくれているじゃありませんか。テルルさんの笑顔や優しい雰囲気に私はすごく癒されましたよ。きっとギルドのみんなもそのように思っているはずです」
テトラはニコッと笑いかけながらそう言う。
「そうだといいんですけど……」
テルルは苦笑しながらそう言う。
2人が話していると、突然店の外から女の子の泣き声が聞こえてくる。
「私ちょっと行ってきます!」
泣き声を聞いたテルルは店を飛び出して泣き声が聞こえるほうへと走る。
テトラもあわててテルルについていく。
テルルが泣き声のもとに到着すると、女の子がうずくまっており、周りを数人の男の子が囲んでいるところを見つける。
「こら! 何してるの!?」
テルルがそう叫ぶと、男の子たちは蜘蛛の子を散らしたように逃げていく。
テルルは急いで女の子に駆けつけ、回復魔法を使おうとする。
「お姉さん! 私は大丈夫だから、この子をどうかお願い!」
女の子はそう言うと、お腹の下にいる白い毛並みの小さな虎のような魔物をテルルに見せる。
うずくまっているように見えたのは、この小さな魔物を守るためだったようだ。
よく見ると魔物はボロボロで、かろうじて息をしている状態である。
テルルは迷うことなくその魔物に回復魔法をかける。
「“癒しの陽光”」
テルルがそう唱えると、小さな魔物の外傷はみるみるうちによくなっていく。
しかし、呼吸状態は依然としてよくならない。
(どうしよう……呼吸がよくならない……)
テルルが困ったようにしていると、
「“女神の涙”」
後ろからついて来ていたテトラが状況を瞬時に把握し、魔物に回復魔法をかける。
すると、小さな虎の魔物は普段の呼吸状態に戻り、すっかり元気になる。
「ギャゥ!」
「タイガ! よかった!」
女の子は元気になった虎の魔物を抱きしめる。
「私はアイネといいます。この子はタイガです。私、物心ついたときから両親がいなくて、そのかわりにこの子がずっと私のそばにいてくれたんです。タイガは私の家族同然なんです。私の家族を助けてくれてありがとうございます!」
アイネはテルルとテトラを交互に見ながらお礼を言う。
「いえいえ、元気になってよかったね」
テルルは笑顔でそう言う。
テトラも笑顔で会釈する。
「ところで、どうしてこんなことになったの?」
テルルがアイネに尋ねる。
「私がタイガを連れてるから……魔物をこの街に入れるなって。魔物を連れているお前もこの街から出て行けっていわれていじめられていたんです」
アイネは悲しそうにそう言う。
「私、これ以上タイガがやられているのを黙ってみてるだけなのは嫌なんです。タイガを一人で守れるくらい強くなりたい。お姉さん、お願いです。私を強くしてください!」
アイネはそう言いながら真っすぐな目でテルルを見る。
「えっと……強くなりたいって言っても私は全然強くないし……」
そう言いながらテルルが困っていると、
「とりあえずテルルさんのギルドで面倒を見てあげてはどうですか? 両親がいないということは行く当てもないということですし……」
テトラがそう提案する。
アイネもわらにもすがるような目でテルルを見ている。
「わかりました。ギルドマスターに相談してみます」
テルルがそう言うと、アイネの表情がパッと明るくなる。
「アイネちゃん、よかったですね」
テトラは笑顔でそう言う。
「それでは私はそろそろ行きますね。今日はテルルさんと出会えて本当に良かったです。またどこかで出会えることを願っています」
「いえ、私のほうこそありがとうございました。テトラさんがいなければアイネちゃんとタイガは救えなかったと思います。本当にありがとうございました」
テルルはそう言いながら頭を下げる。
テトラはニコッと笑うとその場を去っていく。
(テトラさん、すごい優しい人だったな……それにしても私の回復魔法で治せなかったの一瞬で治しちゃうなんて……テトラさんって何者なんだろう?)
テルルはそう疑問に思いながら、テトラと別れるのであった。
読んでくださりありがとうございます!
初めての小説投稿ではありますが、小説化、漫画化目指して頑張ってます。
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