第61話 臆病者
お世話になっております。ヘイホーみりと申します。
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『中堅ギルド同盟』の一角であるクリニッチのギルドとのギルド対抗戦の日がやってきた。
『太陽の幼樹』のメンバーは特に緊張した様子はなく、いつも通りである。
毎日のようにギルド対抗戦をこなしていたおかげで、もうすっかり慣れてしまったようである。
闘技場の観客席にはいつも以上の人が集まっており、賭け事が盛んにおこなわれている。
冒険者協会で注目を集めてしまったことで、『太陽の幼樹』と『中堅ギルド同盟』とのギルド対抗戦のことが多くの人に伝わり、いつもより人が集まったようだ。
「おい、今日はどっちが勝つと思う? 今日も『太陽の幼樹』か?」
「いや、さすがに今日は厳しいんじゃないか? なんたって『中堅ギルド同盟』だぞ? 今までの相手とはわけが違う」
「だよな……よし、今日は『中堅ギルド同盟』に賭けるぜ!」
「俺も『中堅ギルド同盟』に15万モルだ!」
観客席からはそのような声も聞こえてくる。
ここまで連戦連勝の『太陽の幼樹』も今日は厳しいのではないか、という意見が多いようだ。
そんな中、多くの人で埋まっている観客席を見て、クリニッチはにやりと笑う。
(これだけ大勢の前で『太陽の幼樹』に恥をかかせればおとなしくなるだろう。俺を恨んでくれるなよ? 調子に乗っているお前らが悪いんだぜ?)
クリニッチはそう思いながらギルドメンバーのほうを向く。
「お前ら、手加減はいらないぞ! 圧倒的な試合展開で『太陽の幼樹』に恥をかかせてやれ!」
クリニッチは大きな声でそう言う。
ギルド対抗戦が始まり、『太陽の幼樹』から一番手のコバルトが出てくる。
クリニッチ側からは杖を持った魔導士のアインが出て行く。
(『太陽の幼樹』の一番手は剣士か。アインは遠距離魔法が得意だから相手は何もできないだろうな。とりあえず一勝目はもらったぜ)
クリニッチは剣を携えているコバルトを見ながらそう思い笑みを浮かべる。
アインとコバルトは少し離れた位置で構え、試合が開始する。
アインは早速、得意の遠距離魔法を唱えようとする。
しかし、アインが魔法を唱えるよりも早く、コバルトがアインとの間合いを詰めて斬りかかる。
(なっ!? 速い!)
アインがそう思い、避けようとしたときにはもうすでに遅かった。
コバルトの攻撃が見事に決まり、勝負がつく。
これまでのギルド対抗戦の経験を経て、コバルトはかなり腕を上げたようだ。
(アインが何もできずに終わるだと!? いや、それよりもあの剣士、動きが速すぎないか!?)
クリニッチはコバルトの速さに面食らっている様子である。
もちろん、コバルトが特別速いというわけではない。
間合いを詰めるスピードならセトのほうが圧倒的に速いであろうし、攻撃のスピードならムサシのほうが速いであろう。
ただ単に、クリニッチが今まで大した相手としかギルド対抗戦をしていないということである。
そんなことにも気づかないクリニッチはコバルトの速さに面食らっている。
(落ち着け、あんなに強い奴がそう何人もいるはずがない。さては『太陽の幼樹』のエースを一番手に持ってきて驚かせようという作戦だな? まんまとはまってしまったが、後の勝利は俺たちがいただくぜ)
クリニッチはそう思いながら気持ちを落ち着ける。
しかし、クリニッチの考えとは裏腹に2試合目、3試合目、4試合目もあっという間に負けてしまう。
(どうなっている!? 一番手のやつが一番強かったのではないのか!? 明らかに一番手のやつより強いじゃないか!)
クリニッチはひどく混乱していた。
余裕で勝てると思っていた相手に一方的にやられるとは微塵も思っていなかったのであろう。
ここにきてクリニッチはようやく『太陽の幼樹』がいかに強いかということを理解する。
そして、『太陽の幼樹』の強さを理解すると、急に恐怖が押し寄せてくる。
(まずい! もし次に出てくるやつが今までで一番強い奴なら俺に勝ち目はない! すでに俺のギルドの敗北は確定しているし、『中堅ギルド同盟』の顔にも泥を塗ってしまっている。そのうえさらに痛い思いをする必要なんてない!)
クリニッチは心の中でそう考える。
本当であればクリニッチが5番手で『太陽の幼樹』に引導を渡してやろうと考えていたようだが、今は自分の身の安全しか考えていないようである。
「おい、審判! 降参だ! 俺たちのギルドはもう帰るぜ!」
クリニッチはそう言うと、ものすごい速さで逃げ帰る。
こうして、『中堅ギルド同盟』の一角であるクリニッチのギルドとのギルド対抗戦は『太陽の幼樹』の勝利であっけなく終了する。
「おいおい、結局今日も『太陽の幼樹』の圧勝かよ」
「『中堅ギルド同盟』も大したことないな」
「ギルドマスターが戦わずに逃げるなんて前代未聞だぜ?」
観客席ではそのような声があちこちから聞こえる。
今回のギルド対抗戦で『太陽の幼樹』の評価は上がり、『中堅ギルド同盟』の評価はかなり下がったようである。
「今日もいつも通り勝っちゃいましたね!」
「……強い相手らしかったんだけどな」
「いつもと変わらなかったよね!」
「私なんて戦ってないよ?」
テルル、ムサシ、ブラン、セトがそのように話している。
どうやら強さ的にはいつもの相手と大差なかったようだ。
この都市の中堅ギルド程度では『太陽の幼樹』には全く歯が立たないのであろう。
とにかく、『太陽の幼樹』は大勝利でギルド対抗戦を終えるのであった。
♢
その日の夜、『中堅ギルド同盟』では緊急会議が開かれていた。
いつものように8人のギルドマスターが集まっている。
「クリニッチ、これは一体どういうことですか!?」
「まさか本当に『中堅ギルド同盟』の顔に泥を塗って帰ってくるとは呆れたな」
「新入りには荷が重かったかのう……」
『太陽の幼樹』に敗北したクリニッチは他のギルドマスター達にひどく責められている。
「あいつらの強さは本物だ! 俺たちが敵う相手ではない!」
クリニッチは声を荒げながらそう反論する。
「俺たちだと!? お前のギルドが負けたのはただ単に実力がなかったからであろう? 私のギルドと同じにしてもらっては困る」
「そうじゃのう。敗北してきてさらに言い訳までするとは救いようがないのう」
「それだけでなく、あなたは戦いもせずに逃げ帰ってきたそうですね。そんな臆病者は『中堅ギルド同盟』に必要ありません。あなたを『中堅ギルド同盟』から追放します」
そう言うと、他のギルドマスター達も大きくうなずきながら同意する。
「どうやら他の皆さんも賛成のようです。速やかに出て行ってください」
「そっ、そんな……せっかくここまで上り詰めたのに……」
クリニッチはそう言いながらうなだれている。
そして、静かに部屋を出て行く。
「さて、我々もこのまま顔に泥を塗られて黙っているわけにはいきません。クリニッチのせいで『中堅ギルド同盟』の評価もひどく下がっています」
「ここは『中堅ギルド同盟』一丸となって『太陽の幼樹』をつぶしましょう」
こうして『中堅ギルド同盟』全員で『太陽の幼樹』を相手にすることとなったのだが、実はこの会話もパルルとポルルにひそかに聞かれており、すぐにタカラに知られることとなる。
そして、『太陽の幼樹』にギルド対抗戦で仕返しをしようとするのだが、クリニッチのギルド同様、『太陽の幼樹』に手も足も出ず、『中堅ギルド同盟』は圧倒的敗北を味わうのであった。
読んでくださりありがとうございます!
初めての小説投稿ではありますが、小説化、漫画化目指して頑張ってます。
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