第52話 大きな決断
お世話になっております。ヘイホーみりと申します。
この作品を選んでいただきありがとうございます。
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この日、セトはいつもよりも早い時間に目を覚ます。
(なんだか外が騒がしいわね)
セトはそう思いながら重いまぶたを開き、窓から外を見る。
すると、ギルドの入り口に大勢の人が集まっている。
およそ50人ほどいるのではないだろうか。
(あんなに大勢の人がこのギルドに何の用だろう?)
セトは不思議に思いながら眠気を我慢して1階へと降りる。
「タカラ、ロキ、おはよう。外に大勢の人がいるみたいだけど何かあったの?」
セトは1階にいたタカラとロキを見つけるとそう尋ねる。
「ああセト、おはよう。実はあの人たち全員『太陽の幼樹』への加入希望者なんだ。《月刊ニューヒーローズ》やこの前のギルド対抗戦で『太陽の幼樹』の評価がかなり上がったみたいだね」
タカラはそう言いつつも、困った顔をしている。
「『太陽の幼樹』の評価が上がったのは嬉しいことですが、さすがにあの人数が一気に増えるとなると私たちのほうで把握しきれませんし、ここの拠点も手狭になってしまいますね」
ロキも困ったようにそう言う。
「そうだよね。僕たちも考える時間が欲しいし、今日のところは帰ってもらって、また後日連絡という形にしよう」
「そうですね。それがいいと思います」
タカラの発言にロキも同意する。
そして、タカラは外に出て、ギルドの前に集まっている冒険者に説明しに行く。
「なんだか大変なことになったね」
セトがロキにそう言う。
「それだけ『太陽の幼樹』が注目されているということですよ。ありがたいことです」
セトの言葉にロキはそう返す。
その日の午後、『太陽の幼樹』のギルドでは、さっそくギルドの今後についての話し合いが行われた。
ギルドメンバー全員がギルドの1階に集まり、テーブルを囲んで座っている。
「これからギルドの今後について話したいと思ってるんだけど、みんなも何か思うことがあったら遠慮なく発言してほしい」
タカラは最初にみんなにそう言うと、ギルドの今後についての考えを話し始める。
「僕たちは、最初は駆け出しのギルドで名前も知られていないようなギルドだったけど、みんなの努力や活躍のおかげでこの町では知らない人がいないくらいのギルドになったと思う。実力で見てもダントツでこの町一番だ」
タカラはそう言うと、一呼吸おいてからまた話し始める。
「でも僕たちが目指しているのは世界一のギルドだ。この町一番のギルドで止まっている暇はない。だから、『太陽の幼樹』の活動の拠点を隣町「ベーサイド」に移そうと思ってる」
タカラがそう言うと、みんなは驚いた表情をしている。
「もちろん、今いる拠点がなくなるわけじゃない。ここは僕たちの始まりの場所だし、思い出も詰まってる。ここが『太陽の幼樹』の本部だということはいつまでも変わらないよ。ただ、ここにいつまでも留まるわけにもいかない。だから、隣町「ベーサイド」に『太陽の幼樹』の支部を作ってそこを第2の拠点として活動していこうと思ってる」
タカラはそこまで言うと話すのをやめ、みんなの反応を待つ。
少しの間沈黙が訪れた後、セトが話し始める。
「うん、それがいいと思う。私たちが目指しているのは世界一のギルドだもん! 少しでも止まっている暇はないよ!」
セトが気合の入った顔でそう言う。
「……そうだな。セトの言う通りだ」
ムサシもセトの言葉に強くうなづく。
他のメンバーもタカラの目を見ながら力強くうなづく。
「みんなありがとう。今『太陽の幼樹』はすごい勢いで成長している。この勢いのまま世界一のギルドを目指そう!」
「「「「「「「おう!」」」」」」」
タカラの言葉にみんなが大きな声で答える。
「みなさんなら必ずやれると信じています。みなさんがいない間、ここは私に任せてください」
ロキがみんなを見ながら笑顔でそう言う。
「えっ、ロキは一緒に行かないの!?」
セトがすかさずロキにそう問う。
当然ロキも一緒に行くものだと思っていたのであろう。
セトは驚きを隠せないでいる。
他のメンバーも不安そうにロキを見ている。
「今日の朝に『太陽の幼樹』に加入したいといって集まってくれた方たちの面倒も見ないといけませんからね、誰かは残らないといけません。私は『太陽の幼樹』のサブマスターですし、もともとここは私のお店ですからね。私に任せてください」
ロキはそう言いながらニコッと笑う。
それを聞いて、セトやマキ、テルルが静かに涙を流す。
他のメンバーもロキを見ながら不安そうな顔をしている。
それだけみんなにとってロキという存在は大きかったという証拠であろう。
「みなさん、そんな顔をしないでください。もう会えないわけではないですし、またみんなでギルドをやれる日が来ますから」
ロキもそう言いながら目を潤ませる。
当然ロキもみんなと別れるのはつらいのだ。
「ロキ、ありがとう。ロキの言う通り、またみんなでギルドをやれるときは必ず来ると思うからそれまでの辛抱だ。ロキの思いも背負って頑張ろうね」
タカラがそう言うと、みんなが力強くうなづく。
そして、みんなの目には覚悟のようなものが感じられる。
ロキの分まで頑張ると心に決めたのであろう。
こうして、ギルドの今後に関する話し合いは終わるのであった。
ギルドでの話し合いの後、タカラはセトを連れてダンロッドの邸宅に来ていた。
前回訪れたときのように、速やかにダンロッドがいる部屋へと案内される。
扉を開けるとダンロッドがそわそわしながら待っていた。
「ダンロッドさん、お久しぶりです」
タカラがダンロッドに挨拶をする。
「おお、来たか! タカラ君、久しぶりだね……それに、セトちゃん、初めまして。会いたかったよ」
ダンロッドは笑顔でそう言う。
「初めまして、『太陽の幼樹』のセトと申します。よろしくお願いします」
セトも笑顔でそう自己紹介する。
「君の噂はよく聞いているよ。なんでも私は君のファンでね、君に早く会いたかったんだ」
ダンロッドは笑顔を絶やすことなくそう言う。
「あの……ショコラさんの2号店を出すための資金を出してくださったと聞いて……私もショコラさんのタルトが大好きなので2号店ができて嬉しいです。ありがとうございます!」
セトはそう言って頭を下げる。
「いやいや気にしないでくれ。私がやりたくてしたことなのでな。君が喜んでくれて私も嬉しいよ」
ダンロッドは相変わらずの笑顔でそう言う。
まるで孫に久々に会った時のおじいちゃんのようだ。
(ダンロッドさん、今日はやけに笑顔が多いような……前会った時とは別人のようだ。そんなにセトに会いたかったのかな?)
ダンロッドのあまりの笑顔の多さに、タカラも戸惑いを感じている。
しかし、ダンロッドはそんなことはお構いなしといった感じでセトと楽しく会話をしている。
そうしていると、使用人がタルトとコーヒーを持ってくる。
タルトはもちろんショコラの店のタルトだ。
「わー! ショコラさんのところのタルトだ!」
セトがタルトを見て嬉しそうにそう言う。
「君のために用意したんだ。おかわりもあるから好きなだけ食べてくれ」
嬉しそうにしているセトを見ながらダンロッドがそう言う。
「はい、ありがとうございます!」
セトはそう言ってタルトを食べ始める。
3人はタルトを食べながらしばらく雑談をする。
そして、タカラが今回の本題を切り出す。
「ダンロッドさん、実は僕たち『太陽の幼樹』は隣町に活動の拠点を移そうと思っています。ダンロッドさんにはいろいろとお世話になったのでお礼を伝えようと思って今日は来させてもらいました」
タカラがそう言うと、
「何かあるとは思っていたがそういうことだったか……確かに、世界一のギルドを目指すならこのままここにいても仕方あるまい。隣町は広域中核都市なだけあってギルドの数も多い。その選択は正しいと思うよ」
ダンロッドは真剣な表情でそう言う。
先ほどまでの笑顔がうそのようだ。
さすが、世界有数の権力者なだけあって切り替えが早い。
「しかし、隣町というと「ベーサイド」か……拠点はもう見つけているのか?」
ダンロッドがタカラに問う。
「いえ、まだです。今度一度訪れていい物件がないか探してこようと思ってます」
タカラがそう答えると、
「ふむ……実は隣町「ベーサイド」にも私が所有している物件がいくつかあってね、もしよければそこを使うかい? 広さも申し分ないし、中心地からも近い。もちろんお金はいらないよ」
「ほっ、本当ですか!?」
思ってもみなかったダンロッドの提案にタカラも身を乗り出して聞き返す。
「私は君たち『太陽の幼樹』を全力で応援すると決めているからね。少しでも力になれるのなら全然かまわないよ」
ダンロッドはそう言ってにこりと笑う。
「ありがとうございます!」
「ダンロッドさん、ありがとうございます!」
タカラとセトは席から立ち上がりお礼を言う。
「まあまあ座りなさい。それではそのように手配しておこう。それと、優秀な使用人も用意しておくから仲良くしてやってくれ」
ダンロッドはコーヒーを飲みながらそう言う。
こうしてタカラはダンロッドからギルドの拠点を用意してもらうのであった。
「セトちゃん、これからも頑張るんだよ。そして、時間があるときはまた来てくれ」
「はい、また来ます」
ダンロッドの言葉にセトは笑顔で答える。
「タカラ君も世界一のギルド目指してしっかり頑張ってくれ。応援しているよ」
「はい、ありがとうございます。任せてください」
タカラも自信気にそう答える。
こうしてタカラ達は向こうでの活動拠点という思わぬ収穫を得てギルドに帰るのであった。
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