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第50話 それぞれの思い

お世話になっております。ヘイホーみりと申します。

この作品を選んでいただきありがとうございます。

誤字・脱字、おかしな点がありましたら教えていただけると嬉しいです。



「んっ……ここは?」


アカヤは『疾風の黒豹』の控室で目を覚ます。


「ギルドマスター! 目を覚ましたんですね! よかった!」


『疾風の黒豹』のサブマスターであるゾーダがそう言いながらアカヤのもとに駆け寄る。


「ゾーダ……そうですか、私は負けたのですか……」


アカヤはそう言いながら、上半身を起こす。

そして、ゾーダのほうを向いて話し始める。


「ギルドを設立したときから、この町で一番のギルドを目指して一生懸命やってきましたが、それももう終わりですね。『疾風の黒豹』は本日で解散です。ゾーダ、あなたはギルド結成当初からサブマスターとして支えてきてくれましたね。本当にありがとうございます」


アカヤは座ったままゾーダに頭を下げる。


「ギルドマスター、何言ってるんですか。またこれからもみんなで頑張っていきましょうよ。そして、また『太陽の幼樹』と対抗戦をして次こそ勝利をつかみましょうよ」


ゾーダはアカヤの目を見ながら笑顔でそう言う。

よく見るとゾーダの目が潤んでいる。

ゾーダは決して泣くまいと必死にこらえているようだ。


「……いえ、それはできません」


アカヤはそう言うと、控室の入り口のほうへと目をやる。

そこには冒険者協会の関係者と思われる人間が2人立っている。


「『疾風の黒豹』ギルドマスターのアカヤとサブマスターのゾーダだな。お前たちが『太陽の幼樹』のメンバーの暗殺計画を(くわだ)てたとして冒険者協会本部から捕縛(ほばく)命令が出ている。一緒についてきてもらおう」


冒険者協会の人間がそう言う。


「わかりました。しかし、暗殺計画を企てたのは私1人です。ゾーダは何も関係ありません」


アカヤはそうきっぱりと言い切る。


「ギルドマスター!? 確かに私は暗殺計画を企ててはいませんが、ギルドマスターからその話は……!」


「あなたには!……あなたには『疾風の黒豹』のみんなをまとめて、次こそは『太陽の幼樹』に勝利するという目標があるはずです。次は正々堂々と挑戦者(チャレンジャー)として」


ゾーダの言葉をさえぎって、アカヤはゾーダにそう言う。


「『太陽の幼樹』が彗星(すいせい)のごとく現れて、町でどんどん人気になって、私は焦っていたのかもしれません。彼らを何とかしないと、今まで『疾風の黒豹』として積み上げてきたものが崩れてしまうような気がして……でもそれは間違いでした。今回間違いに気づくことができてよかったです」


アカヤはすっきりした表情でそう言う。


「『疾風の黒豹』のみんなを頼みましたよ」


アカヤはゾーダの目を見ながら笑顔でそう言う。


「……では、『疾風の黒豹』のギルドマスターであるアカヤ、君を連行する」


冒険者協会の者がそう言う。


「はい、ありがとうございます」


アカヤはそう言うと、立ち上がり、冒険者協会の人間と一緒に控室を出て行くのであった。

残されたゾーダの目からは、今まで我慢していた涙が一気にあふれ出す。


(アカヤさんが帰ってくるまで、また一からやり直そう。そしてまたいつか……)


ゾーダは涙を流しながら、そう心に決めるのであった。


その頃観客席では、見物人たちが帰りの準備をしていた。

帰りの準備をしながらも、みんな興奮気味に今日のギルド対抗戦について話している。


「いやー、今日のギルド対抗戦はすごかったなー! 中でも一番すごかったのはやっぱりセトちゃんかなー!」


「いやいや、ムサシだってすごかったぞ! なんたってあのハヤトを一瞬だったからな!」


「いーや、俺はガンテだね! あの巨体が吹っ飛んだときは何だかスカッとした気持ちになったよ!」


どこもかしこもこのような話で盛り上がっている。

それだけ今日のギルド対抗戦が白熱したものであったということであろう。

そんな中、観客席でずっと座ったまま動かない人物が2人いる。


(はあ……やっぱり『太陽の幼樹』は強かったな。まさか『疾風の黒豹』の選抜メンバーが歯もたたないなんて。それに……セトさんまた強くなってた……セトさんがどんどん手の届かない人になってしまう。できることならセトさんと同じギルドで切磋琢磨したかったな)


そう思いながら座ったまま動かないのは『疾風の黒豹』のメンバーであるコバルトだ。


(でも逆に『疾風の黒豹』がコテンパンにされて良かったのかもしれない。心残りはあるけど、僕の冒険者人生はここで終わりにしよう)


コバルトは心の中でそう決心する。

コバルトは、命の恩人であるセトを暗殺しようとしていたギルドに自分が所属していたという罪悪感と、今回のギルド対抗戦を止めれなかったことへの責任を感じており、このまま自分は冒険者を続けるべきではないと思っているのだ。


(最後にもう一度だけ、セトさんに会いに行こう。そして、謝罪だけはしっかりして冒険者を引退しよう。それが僕の冒険者としてのけじめだ)


コバルトはそう思い、『太陽の幼樹』の控室へと向かうのであった。


そしてもう一人、観客席に座ったまま動かない人物がいる。


(やけに騒がしい場所があるなと思って来てみたら、まさかあのタカラの試合が見れるなんて。今日はラッキーだな。たまたまこの町に来ていてよかった。いい土産話が手に入ったよ)


ある一人の男性が観客席に座ったままそう思う。

頭にはとんがり帽子をかぶっており、魔導士がよく着るローブを羽織っている。


(タカラは魔導士だし、トルーとも元パーティーメンバーだ。いずれまた会える日が来るだろう)


男はそう思いながら笑みを浮かべる。


「おい、あんた! ギルド対抗戦はもう終わったよ。早くしないと闘技場の出口が閉められてしまうよ」


男が座ったまま笑みを浮かべていると、他の見物人にそう注意される。


「これはすまない。わざわざ忠告ありがとう」


男はそう言うとスッと立ち上がり、闘技場の出口へと歩いていく。


「あの人どこかで見たことがあるな……あっ! そういえば今月の《月刊ニューヒーローズ》に出ていたような……」


男に注意した見物人はそう言うが、はっきりとは思い出せない。


「帰って《月刊ニューヒーローズ》もう一回チェックしてみるか……」


見物人はそう思いながら家に帰るのであった。


その頃コバルトは、『太陽の幼樹』の控室の扉の前で緊張した面持ちで立っていた。


(よし、いくぞ!)


コバルトは覚悟を決め、扉をノックする。


「はーい」


中から声が聞こえ、扉が開かれる。

するとそこにはセトが立っている。


「セトさん!」


いきなりのセトの登場にコバルトは動揺する。


「えっと確か……コバルト?」


セトは自信なさげにそう言う。


「そうです! 覚えていてくれたなんて嬉しいです!」


コバルトは嬉しそうにそう言う。


「どうしたんですか?」


セトがそう聞くと、コバルトのテンションが明らかに下がる。


「実は……セトさんに謝りに来たんです。僕が『疾風の黒豹』に所属していたことは知っていますよね?」


コバルトがセトにそう聞くと、セトはうなずく。


「実は『疾風の黒豹』のギルドマスターがセトさん達『太陽の幼樹』のメンバーの暗殺を(たくら)んでいたんです。僕はそのことを知っていたのに何もすることができなかった」


コバルトがそう言うと、セトは目を見開いて驚いている。


「暗殺?……私たちを?」


セトは突然の暗殺という言葉を受け入れることができないでいる。


「今回のギルド対抗戦だってそうです。『太陽の幼樹』のみなさんを(おとしい)れようとしているのをわかっていたのに、僕はそれを止めることができなかった。命の恩人であるセトさんを裏切ったも同然です」


「そんなことない! 暗殺のことはよくわからないけど、コバルトさんは今こうやって私にちゃんと謝ってくれているじゃないですか! それだけでもすごいことだと思います!」


セトがそう言いながら、コバルトの発言を否定する。


「セトさんにそう言ってもらえるだけで僕は報われます。実は僕、今日で冒険者を辞めようと思うんです。自分なりのけじめとして……最後にセトさんに出会えて本当に良かったです。ありがとうございました」


コバルトはそう言ってお辞儀をし、その場を立ち去ろうとする。


「待って!」


セトはそう言って、コバルトの腕を引っ張る。


「私はそんなこと望んでないし、そんなこと許さない。本当にこのまま辞めていいの? まだやり残したことあるんじゃないの!?」


セトは感情的になりながらそう言う。


「もちろん、心残りはありますよ。セトさんに恩返ししたかったし、セトさんと同じギルドで一緒に切磋琢磨できたらどれだけよかっただろうって!」


セトの質問に、コバルトも感情的になりながらそう答える。


「やっと本心を言ってくれた。なら一緒にやろうよ。『太陽の幼樹』で一緒に切磋琢磨しようよ!」


セトはコバルトの目を真っすぐ見ながらそう言う。

セトの誘いにコバルトの心は大きく揺れる。


「……でも……」


それでもコバルトは自分に責任を感じており、セトの誘いを受けるかどうか決めきれないでいる。


「セトの言う通りだよ。君が責任を感じて冒険者を辞める必要はない」


後ろで2人の話を聞いていたタカラがそう言いながら割って入る。


「むしろ君は冒険者を続けていくべきだよ。君は何もしていないと言ったけど、わざわざ『太陽の幼樹』まで来て正直に暗殺計画のことを話してくれたし、今だってセトにちゃんと謝りに来ているじゃないか。君みたいな正義感のある人が冒険者にならないで他に誰がなるっていうんだい?」


タカラはそう言いながらコバルトに近づいていき、力強く説得する。

コバルトはタカラの話を聞きながら、下を向いて思い詰めている。


「もう一度聞くけど、もし良かったら僕たちのギルドに入らないかな?」


タカラがコバルトにそう尋ねる。


「……本当にいいんですか?」


コバルトは声を震わせながらそう尋ねる。


「もちろんだよ。僕たちは君と一緒に冒険者をやっていきたいと思っているから誘っているんだ」


タカラは優しくそう言う。


「……よろしくお願いします!」


コバルトは涙をこぼしながら力強くそう言う。


「やった!」


セトはそう言いながらとても喜んでいる。

『太陽の幼樹』の他のメンバーも笑顔でコバルトのほうを見ている。


「無事勝利もできたし、新しい仲間も加わったことだし、ギルドに帰ってお祝いしようか!」


「「「「「やったー!」」」」」


タカラの提案にセトたちは大喜びである。

コバルトも笑顔を見せている。

こうして、『太陽の幼樹』のメンバーはギルドに帰るのであった。



無事にギルドに帰ってきたタカラ達であったが、初めてのギルド対抗戦で思っていたより疲れていたのか、タカラとロキ以外はみんな自分の部屋で寝てしまっている。


「相当お疲れだったようですね」


ロキはほほ笑みながらそう言う。


「うん、そうだね。でも、みんな本当によく頑張ったよ」


タカラもほほ笑みながらそう言う。


「お祝いのパーティーはまた今度だね。コバルトも今はいないし」


タカラは苦笑しながらそう言う。

コバルトはあの後『疾風の黒豹』に話を通しに行くといって出て行ってしまった。

ギルドの移籍は本人の自由である。

元いたギルドに挨拶しないまま移籍する冒険者もいるが、それはコバルト自身が許さないのであろう。

どこまでも実直な人間である。


(『疾風の黒豹』は解散して新しいギルドとしてまた一から始めるみたいだね。コバルトのように他のギルドに移籍する人もたくさんいるだろうね……)


タカラはそう心の中で思う。


「次また彼らとやるときはギルド対抗戦の本来の目的である、ギルド間の親睦(しんぼく)を深めるためにやりたいですね」


タカラの顔を見て何かを察したのか、ロキがそう言う。


「そうですね」


タカラがしみじみとそう言う。


「それにしても今日は濃い一日でしたね。私も疲れてしまいました。少し早いですが我々も寝ましょうか」


ロキがタカラにそう言う。


「そうですね。そうしましょう」


タカラもロキに同意する。

こうして、『太陽の幼樹』の初めてのギルド対抗戦は終わり、長い長い一日が終わりを迎えるのであった。

読んでくださりありがとうございます!

初めての小説投稿ではありますが、小説化、漫画化目指して頑張ってます。

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そして、コメントや感想などもお待ちしています!

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