第32話 ドワーフの重騎士
お世話になっております。ヘイホーみりと申します。
この作品を選んでいただきありがとうございます。
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セトとカインが帰ろうとしたちょうどそのとき、入り口の扉が開き、一人の男が入ってくる。
ボンじいと同じく、小柄のドワーフである。
しかし、ボンじいとは違ってその体は屈強であり、重そうな鎧をまとっている。
「おお、ガンテ、帰ってきたかのう」
その屈強なドワーフはガンテという名前らしい。
ボンじいがそう言うと、ガンテは小さくうなずく。
ガンテはセトとカインから離れた場所に座り2人を見ている。
少し警戒しているといった様子である。
「ボンじい、彼は?」
カインがボンじいに尋ねる。
「あいつはガンテといってのう、ワシの知り合いの孫なんじゃ。わけあってこの町でワシが面倒を見ておるんじゃ。今は1人で冒険者をしておるのう。冒険者としてはかなりの腕前じゃぞ。ちなみに役職は重騎士じゃ」
ボンじいがそう説明する。
「へえ、ボンじいが冒険者をほめるなんて珍しいな」
カインが少し驚きながらそう言う。
「そんなことないじゃろが。お前さんのことはよく褒めたもんじゃぞ」
「俺をそこら辺の冒険者と一緒にするんじゃねーよ。次元が違うぜ」
カインはそう突っ込みながら、ガンテのほうへと目を向ける。
カインなりにガンテを見定めているようだ。
カインだけでなく、セトもガンテを見て何やら考えているようだ。
(あの屈強な体にしっかりとした鎧、それに重騎士という役職。今私たちに足りないものをすべて持ってる。彼がいればロックドラゴンとの戦いがもっと楽になっていたに違いないわ)
セトはそう思いながらガンテを見つめる。
確かに、ロックドラゴンとの戦いでロックドラゴンの攻撃を正面から受けきれる者がいればもっと余裕をもって戦えていたに違いない。
そしてそれはこの先の戦いにおいても同じことが言えるだろう。
(ボンじいさんが優れた冒険者というなら間違いないと思うし……それに……彼からは私と同じ何かを感じるわ)
セトはガンテに不思議と親近感のようなものを感じていた。
セトはガンテに近づいていく。
「私はギルド『太陽の幼樹』のセト。よろしく」
セトはガンテにそう言うと右手を差し出して握手を求める。
ガンテはセトの顔を見つつもセトの握手を無視する。
セトは手を引っ込める。
「私はあなたと一緒に冒険者をしてみたい。初対面だけどあなたを見てそう思ったわ。もしよかったら私たちのギルドに入らない?」
セトはガンテにそう言う。
ガンテはセトにそう言われ、一瞬目を大きく開いたがすぐに下を向き、またもセトを無視する。
「もし少しでも気が変わったらギルド『太陽の幼樹』に来てほしい……私、待ってるから」
セトはそう言うと、カインのほうを向き、
「カインさん、帰りましょう」
セトはカインにそう言う。
「おう、そうだな。それじゃあ、ボンじい、ありがとな」
カインはそう言うとセトと一緒に『小人の洞窟』を出る。
2人が帰った後、『小人の洞窟』にいたボンじいとガンテは一言もしゃべることなく、しばらくの間沈黙が訪れる。
「ガンテ、本当に良かったのかのう?」
ボンじいがそう言い、沈黙を破る。
「……なにが?」
ガンテはわからないふりをしてそう言う。
もちろん、ガンテも本当はわかっているのだろう。
「確かにお前さんは昔仲間たちに裏切られ、そのせいで両親も失った。人が信じられずに今までずっと一人で冒険者を続けてきたのもよくわかるぞい。しかしのう、もうそろそろお前さんも前を向いて進むべきではないかのう。お前さんの両親もそれを望んでいるはずじゃ」
ボンじいがガンテにそう言う。
ガンテはボンじいの話を聞きながらずっとうつむいている。
「さっきの男のほうはカインというんじゃが、あやつとは昔からの仲でのう。ワシがほれ込んだ男の1人じゃ。とても仲間思いなやつでのう……そのカインの弟子ということは技術だけでなくカインの意思も受け継いでいるはずじゃ。あのエルフの目には強い信念のようなものが見えたしのう……それに、ワシの経験上、神に愛される者に悪い奴はおらんぞい」
ボンじいは続けてそう言う。
ガンテはボンじいの話を最後まで聞くと席を立ち、扉のほうへと向かう。
「……考えてみるよ」
ガンテはそう言うと扉を開けて外に出て行ってしまった。
「……すぐには決断できんかのう。もう少し時間がかかりそうじゃのう」
ボンじいはそう言いながら、セトのレイピアの修復に取り掛かるのであった。
♢
セトがボンじいにレイピアを預けて1週間がたった。
セトは約束通り、レイピアを受け取りにボンじいのところに向かう。
今日はカインは一緒ではなく、セト1人である。
「失礼しまーす」
セトはそう言って『小人の洞窟』の扉を開けて中に入る。
「おお、来たかいのう。お前さんのレイピアは元通り直っておるぞい」
ボンじいはそう言ってセトにレイピアを手渡す。
セトはレイピアを受け取り、すぐさま確認する。
レイピアの剣先は以前のように戻っていた。
「ボンじいさん、本当にありがとうございます! これで修業の続きができます!」
セトは大喜びでそう言う。
「いいんじゃいいんじゃ。ワシもその武器に興味があったからのう。お互い様じゃ。それにこの前はガンテをギルドに誘ってくれてありがとのう」
ボンじいはそう言いながらセトのほうを見る。
「いえ、私は思ったことを言っただけなので……今日はガンテは来ていないんですか?」
セトは周りを見渡しながらそう聞く。
「うむ、今日はまだ来とらんのう……お前さんからギルドに誘われてからは一度もここに来てなくてのう。あやつもいろいろと思うところがあるのじゃろうのう」
ボンじいはしみじみとそう言う。
「そうですか……また会えるかなと思っていたんですが……まあ、私はいつまでも待ってますから。ボンじいさん、今日はどうもありがとうございました!」
「うむ、それではのう。またなんかあればいつでも来るがよいぞう」
ボンじいがそう言うと、セトは一礼して、ギルドへと帰っていった。
♢
ガンテは1人でどうすればいいか悩んでいた。
セトから真っすぐな目で一緒に冒険者をやりたい、ギルドに来てほしいと言われてガンテは正直嬉しいと感じていた。
そして、嬉しいと思っている自分にひどく動揺していた。
昔仲間に裏切られたこと、そしてそのせいで自分の両親を失ったことは今でもトラウマである。
そのせいで今まで人と関わることを避け、ずっと一人で冒険者をやってきた。
なのに、初対面のセトにギルドに誘われて嬉しいと思ってしまったのだ。
あの日ボンじいに言われたこともガンテは十分にわかっていた。
セトは自分を裏切ったような奴らとは違うということもセトと対峙したときにわかっていた。
ただ、セトの誘いに乗ることで今までの自分が変わってしまうのではないかと恐れていたのだ。
また誰かと仲間になり、裏切られ、大切なものを失うことを恐れていたのだ。
(父ちゃん、母ちゃん……俺……あいつのこと信じてもいいのかな?……俺あいつと一緒に冒険者やりたいよ)
ガンテはそう思うと、勝手に涙がこぼれ落ちる。
「うっ……うっ……」
次第にこぼれ落ちる涙は増えていき、ガンテは声をあげて泣く。
(お前は自分のやりたいようにやっていいんだよ。前を向いて進みなさい)
ガンテの心の中でふとそう聞こえた気がした。
ガンテの父と母がそう言っている気がした。
ガンテはそう思うと同時に、考えるよりも早く自分の体が動いていたのだった。
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初めての小説投稿ではありますが、小説化、漫画化目指して頑張ってます。
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