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『りこさんへ』


 イベント、出られなくて、本当にごめんなさい。そして、迷惑をかけてごめんなさい。りこさんはいつも私の近くにいてくれて、会えないときも、りこさんのことを考えながら毎日乗り切ってました。だから、本当に本当に感謝しかありません。

 




 だけど、限界でした。絵を完成させるまでは、そう思ってたんですけど、体が動かなくて、外に出るのも怖くて、もう、笑うことも、嫌になって、それで心配されて、りこさんたちに笑ってもらえなくなるのはもっと嫌でした。





 私は2年前に、今の事務所に入りました。それで半年後くらいにはお仕事をもらえるようになって、オーディションとかは、落ちることの方が多かったけれど、最後の最後にメンヘラジオに出会えて、今までやってきた中で最高の作品でした。前も少しお話ししましたが、大きな役は今回が初めてでした。でも、それでも、この映画に関われて本当に良かったと思っています。





 私の役は、DVとか、いじめとか受ける役だったけど、正直私よりも似合う人はいないなって思ってました。(笑)DVはなかったけど、よく色んなこと言われてきたんです。「ブス」とか「キモい」とかは日常で、「モデルやってるからって調子のんな」「学校なんできたの?」なんて言われることもあったし、物隠されたり、酷い時は階段から蹴落とされて痣ができちゃって、撮影の時に怒られたこともありました。(笑)





 私の学校は中高一貫で、高校はエスカレーター式でそのまま進学したのでクラスメートもほとんど変わんなくて、嫌がらせは高校の時も相変わらずでした。去年の6月の顔合わせの日の朝、私、学校に行ってたんですけど、放課後に私、男子トイレに連れ込まれちゃって、そこで強制的に犯されたんです。ゴムしてたのは見たけど、これはさすがの私もショックでした。(笑)




 その時から、なんかもう全部どうでも良くなっちゃってたんです。自己紹介の時に、ちょっとだけ男子トイレの話しちゃった気もするんですけど、今までにないくらい私声張ってたなーって思ってて、あ、実は私それまで本っ当に根暗だったんですけど、このことがあってから失うものなくなって、投げやりになったからか分かんないけど明るい人間になってました。(笑)でも、やっぱりトイレに行くと思い出しちゃって、少し怖かったんですけど、今は初めてりこさんと話せた、言わば出会いの場になったから、もう怖いとかは思わなくなりました。りこさんのおかげです。





 撮影の時に、私が痩せたのってストレスなんです。ダイエットって嘘ついてごめんなさい。でも、結果的に良い役に出会えたから、高校のクラスメートには感謝してます!犯してくれてありがとう。(笑)というのは、冗談ですけど、この期間、りこさんには本当に支えてもらいました。あわよくば、1回でも共演できたら最高でした。でも、仕方ないですね。





 その分、イベントではずっと一緒に居られる!って思って、嬉しくってつい勢いで電話しちゃいました。突然のことなのに出てくれて嬉しかったです。いっぱい騒いでごめんなさい。でも、りこさんも出られるって聞いて本当に嬉しくて、だから、一緒に何か企画したいなんて思うようになって、たくさん提案して、一ノ瀬さんとSEDOさんがいいよ〜って言ってくれて。私もその時は本気でイベントに出るつもりでした。





 でも、その間ネットで誹謗中傷もいっぱいされました。映画公開とフォーカスのイベントが楽しみすぎて仕方ないという気持ちもあって、それでなんとか乗りきれるかな〜って思ってたんですけど、SNSは唯一私を応援してくれるコメントで普段はいっぱいだったから、流石に参っちゃいました。学校でその中傷コメントを音読する奴もいたんですけど、恥ずかしくないのかな?可愛そうって無理やり思うようにしてました。だから、SNSも学校も余計しんどくなって、早く打ち合わせにならないかな〜仕事いっぱい来ないかな〜とか考えて生きるようになりました。





 モザイクアートのデザイン、私にやらせてもらえたこと、嬉しかったです。本当にありがとうございました。りこさんが受験だからという理由も嘘ではないんですけど、その時期、学校での嫌がらせが少し度を超えていて、そろそろ私死ぬんじゃないかなって思い始めてたんです。(笑)だから、私が死んじゃう前に、生きた証を残さなきゃって・・・本当に終活みたいなこと考えてたんです。





 りこさんには、たくさん謝らないといけないです。6月中にデザインの画像送るって言いながら、7月になっちゃってごめんなさい。実は作成してる時に、携帯壊されちゃったことがあって、それでデータ全部吹き飛んでしまったんです。言い訳みたいになっちゃうんですけど、新しいもの家族に頼んで買ってもらって、マッハで作成しました。





 それから、それ以降、連絡できなくてごめんなさい。その画像を送った直後に、携帯奪われちゃって、トイレの便器に投げ込まれちゃったんですよね。そしたら、携帯救出してる写真を撮られて、ネットで出回っちゃったんですよ。トイレに手を突っ込んでる写真が。携帯は防水機能もあったけど、つかなくなってしまって。親に言ったらめっちゃ怒られました。





 事務所からも怒られました。この写真で、私のイメージが悪くなっちゃったんです。そしたら、私に対する信頼も減って仕事が一気になくなってしまって、そうなると、学校に行く時間が増えちゃうから、しんどくなって、気づけば眠れなくなって、身体起こすのも辛くて、無断欠席しても家帰ったら何言われるか分かんないし、せめて家だけは何もない場所であって欲しくて。でも、気づいたら私、何のために生きてるんだろうって、生きることに執着するのも馬鹿らしくなっちゃいました。





 大好きなりこさんに会えなくなるのは本当に寂しくって、映画もイベントも、共演したナナさんやSEDOさん、空さんや一ノ瀬さんたちも本当に大好きだし、メンヘラジオに救われてたし、あ、これって「咲」と全く一緒ですね。だから、心残りは本当にそれだけなんです。





 でも、耐えられませんでした。イベントが終われば、離ればなれになる。なら、今消えたって一緒だって思ってしまいました。嫌いな奴の手で殺されて、最期に見る景色がそいつらになるなら、好きな人の顔を思い浮かべて逝きたいって思って。モザイクアートのデザインという名の遺作も残せたし、私の中で悔いは無くなりました。





 自分勝手で、本当にごめんなさい。





 りこさんとクレープ食べたり、一緒にお洋服を見たりしたこと、一緒に帰ったことも、絶対忘れません。





 私の、唯一心から笑っていられた場所でした。





 大好きです。映画も、イベントも、モザイクアートも、楽しみにしています。





 7月29日 相田ゆかり


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