表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

南の島のよくある話

作者: 超伝説巨匠じゅんぶんが君

挿絵(By みてみん)


ある南の島にある男がいた。

彼は若い漁師だった。

背が高く精悍な顔立ちで、さわやかな青年だった

欲がなくおだやかな性格で誰からも愛された

常に笑顔を絶やさず

村の友人たちと過ごす時を大事にしていた

村に一軒しかない居酒屋で

漁師仲間と酒をくみかわすのが楽しみだった

月の輝く夜にはいつまでも

彼と仲間達の笑い声が聞こえてきた

漁で得た金は、すべて新妻に預けた

新妻は「外で遊んできなさい」

と彼のズボンのポケットに

こずかいを突っ込んで送り出したが

いつも使わずに家に帰ってきた。


戦争がはじまって、彼は兵隊にとられた

遠くの島で敵に散々負けて

彼の部隊は敗走した。

彼は部隊からはぐれ、敵兵に追われた

死にもの狂いで逃げた先に洞窟があった

洞窟の入り口には、一人の怪我を負っている敗残兵がうずくまっていた

彼は、その兵士には目もくれず

洞窟の奥へ隠れた。

体を丸めて、目を瞑り震えていた

しばらくして

洞窟の入り口の方で銃声が鳴った

彼は助かった


やがて戦争に負けて彼は妻の元へ返ってきた

その時すでに、彼から笑顔は消えていた

寡黙になって

毎日浴びるように酒を飲むようになった

毎日、歩けなくなるまで酔っ払い

毎日、友人たちが家まで運んできた

居酒屋では、彼から決して

飲み代を取ろうとしなかった。

しばらくして、彼は体を壊して死んだ

いやすでにあの時、彼の心は殺されていた


夫婦に子はできず

その妻は何十年も夫の墓を守っている


南の島ではよくある話だ

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 戦争は常に弱いものを壊す。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ