第12話 「やめてあげて」
「反省しておりますので」
そう言ってマインは地面に頭を擦りつけながら謝罪をした。いわゆる土下座だ。
マインの頭には大きなたんこぶがいくつもできていた。顔も真っ赤に腫れてしまっている。
そりゃそうだ。あんなに殴られてたんだから。逆になんでこの程度で済んだのか不思議だよ……
「もう私にあんな変な事しないでよ?!」
「は は――」
ミーシャは腕を組み足元でひれ伏すマインを見下ろしていた。まだ少し怒りが収まってないのかもしれない。
しかし、ミーシャの身体から出ていた赤く可視化した霊力はもう消えていたので、腕力で握りつぶされる心配はもういらないようだった。
偶然だとしてもテレスを赫星させられる人間なんてそういるもんじゃない。さらに彼女は珍しいテレポートの零械具も持っているんだ。
最初僕はミーシャが高貴な家の人間だから人攫いなんかに狙われているのだと思ったが、もしかしたら何か違う理由があるのかもしれない……
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その後、マルマルが今度はちゃんとした飲み物を飲ませてくれるというので、僕達は席に座り彼かカップを受け取って、喉を潤しながら話をした。
「しかし赤毛くぅん。 あんなにボカボカに殴られたのに、よく死ななかったねー」
「ああ、よく生きてたよ…… 俺。」
僕達三人(ミーシャ以外)はアルコールを摂取していたので、所々ろれつも回っていなかったし頭の中もぼやっとした感じであった。
「う…… でもッ 悪いのはマインなんだからね! 女の子に変なもの食べさせたりしたら普通嫌われるよ?」
「それはごめんね もうしないって! ははは…… あれ? 普通ってわざわざいう事は、ミーシャちゃんは俺のこと嫌いじゃない……むしろ好き?!」
「き、きらいだから ……調子に乗らないっ!」
彼女はむきになって言い返していた。
僕が今飲んでいるのはアルコール飲料を紅茶で薄めたものだ。僕のお気に入りでここに来るとよく飲んでいた。
「そういえば、ミーシャはさっき赫星してたときって、意識とかあったのか?」
「……赫星?」
「ほら さっきマインのこと痛めつけてたとき体から赤い色の霊力が出てただろ」
ミーシャにそう言ったとき、向かいに座っているマインが飲んでいたお酒を吹き出しているのが横目で見えた。
「い、俺って痛めつけられてたんだ 」
「は? 今更なにいってんの?」
「いや…… 改めて言われるとなんか……(女の子に痛めつけられるってどうなんだろ)」
ミーシャは、僕が尋ねると少し考えてから答えた。
「うーん 私がマインになんかしたってのは、なんとなく分かるんだけど……気が付いたら傷だらけのマインが目の前にいたの」
ああ つまり無意識下でマインをボコボコにしてたってことか……
ミーシャの話を聞いて僕と同じことにマルマルも気が付いたようだ。
「ふぅん。 意識がないときにあれだけ殴るってことは……、 マインくぅん 相当恨みをかったね」
「ぐすぐす 俺、そんなに嫌われ…… うぅぅぅっっ!!…………」
「まあ、飲め 忘れなさい?」
そういってマルマルはマインのカップに酒を継ぎ足した。
「あーあ!! 可哀そうにぃ!!! 何も無意識で殴り倒すほど嫌いにならなくてもいいのにィィーー!!!」
マルマルはミーシャにまるで挑発するように言い放った。本当はミーシャに対する嫌みだったのだが、ダメージを受けたのは彼女ではなかった。
「うあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
紅茶カクテルに酔ってマインは大声で泣き喚いた。マルマルは背中をさすりながら、ミーシャに非難の視線を向け始めた。
「い、いや 私 そんなに嫌いになってないと思うよ! 無意識って、きっとそういう意味じゃないと思うんだけどな!」
「…………そういう意味って?」
「…………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………ふふッ」
「うあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
ああ、今日も平和だ。