ケット・シー
猫の妖精の事をケット・シーと呼びます、人の言葉を理解し、人の言葉を話し、自分の王国を持ち、人と同じ様に二本足で歩くと言う。貴方の所に居る猫は、もしかしたらケット・シーかも知れませんよ、どうやって見つけるのか方法を教えましょう、それは、猫の耳の先をハサミで切ると『無礼者!』と言って正体をばらす事があるそうです。猫騎士と呼ばれる所もあるようです。
「そうなんだ」
私が小さい時に、おじいさんから聞いた、
「ケット・シーはプライドが高いからね、絶対人間に気付かれない様にしているのだよ」
私の家には、私が生まれる前からケリーと言う名前の一匹の雌猫がいた、ある日その猫が居なくなった、おじいさんは、私に言った、
「猫はね、自分の命が尽きるのがわかるんだ、その姿を人間には見せないのだよ、だから、探さないでおいてくれ」
きっと自分の国に帰って行ったのかな?そう言う私に、
「そうかも知れないね、きっと猫の国に帰ってゆっくり暮らしているのだろう」
私は、何も言えていない、生まれてからずっと一緒に居たのに。
それから、何処に居てもその猫の事が気になって仕方無い、会いたい、ケリーに会いたい、会って言わないと、そして、猫を見つけると必ず耳の先を引っ張る、ハサミで切るなんてかわいそうで出来ないから。
野良猫はなかなか近づいてくれない、なので、こっそりママに内緒にキャットフードを買って公園に持って行く。
猫達は集まって集会を開くと聞いた、それが、この公園だ。
毎日、キャットフードを置く、すると何匹かは逃げずに私を待ってくれるようになった、それが、嬉しくて、毎日公園へ行った。
そこで、食べている間にそっと耳を摘まんで引っ張る、すると、一匹の猫が
「何をする!無礼者!」
と、喋った。その猫と目が合う、私は嬉しくて猫に話しかけてみる、
「貴方ケット・シーなのね!」
すると、猫が、
「最近耳を引っ張る人間が居るって聞いていたが、あんただったんだな、食べ物に釣られてつい言葉を話してしまった」
その猫はすっと二本足で立ち、前足を組んで、
「お嬢さんは一体何が知りたいんだ?」
私はその猫に言った
「私の家に居た猫を探しているの、ケリーと言う名前の雌猫よ、突然居なくなってしまったの、知らないかしら?」
その猫は、
「聞いた事の無い名前だな」
「もしかしたら、貴方達の国に居ないかしら?」
猫は考えて言う、
「私達の国に行きたいと言う事かな」
そう言われて自分でも驚く、行ってみたいと思う。
「君は毎日私達に食事を持って来てくれる、最近は野良猫に餌をあげるなと言う人間が多くて困っていたのだ、これからも毎日食事をくれると言うのなら考えよう」
私は直ぐに返事をした、
「毎日持ってきます、約束します!」
「分かった明日も同じ時間にここに来るといい、連れて行こう」
次の日、自分のお小遣いでキャットフードを沢山持って公園に行った。
沢山抱えているキャットフードを見て猫が言う、
「そんなに食べれないよ」
「これは、猫の国に持っていくのよ、これはケリーが好きだったから」
猫は二本足で立ち上がると、私に何かの粉をかけた、すると、私は猫になった。
「人間のままでは、連れて行けないから、猫になってもらった」
わあー、猫の目線ってこうなっているのね、キャットフードを口にくわえてその猫の後をついて行く、公園の奥の草むらのその奥へ小さな扉が見えてきた、そこをくぐるって入る。
そこには、二本足で歩いている沢山の猫がいた、気が付くと自分も二本足で立っていた。
「ここでは、これが普通なのさ、ほら、ケリーを見つけるのだろう?聞いてみるといい」
近くに居た三毛猫に聞いてみる、
「あのーケリーと言う名前の猫を知りませんか?」
「知らないわね」
次から次へと聞いて行くが皆知らないと言う、一緒に来た猫は、
「ここに居ないのなら、あそこかな?」
と、私の先を歩く、そこには大きなお城があった、
「猫の国の王様は本当にいるのね」
「そうだよ、我らの王は代替わりをした、その猫は人間に飼われていたと聞いた、もしかしたらってね」
お城に着くと猫の兵士が聞く、
「用事は何か」
すると、その猫は。
「王に献上したい物がありまして、これです、王は以前人間と一緒に暮らしていたと聞きました、それで、これを」
と私が持ってきたキャットフードを渡す、猫の兵士はそれを持って城へ入って行く、暫くすると門が開き中に入る。
階段を沢山上がって行く、猫の兵士と一緒に廊下を歩く、広間に来た。そこには、王座に座る美しい猫がいた、ケリーだ、私は嬉しくて泣いてしまった、猫の王ケリーは、
「やはり、貴方だったのですね、私が好きだった食べ物を見た時貴方の匂いがした」
「ケリー!ずっと探していたの、貴方に会いたくて、会いたくて」
私はボロボロ泣いた、ケリーは私の所に来て涙を拭いてくれた、
「私の可愛い桜子、黙って居なくなった私を心配してくれたのね」
私は、ケリーの長い綺麗な毛を撫で、
「ケリーに言いたい事があって探していたの」
「今までありとう、いつも傍にいてくれてありがとう、大好きだよ」
ケリーのふわふわした毛にしがみ付き泣いた、ケリーは私を撫でふーっと息を吐いた、途端に眠くなり目の前が暗くなった。
目が覚めると私は人間に戻って公園のベンチで寝ていた、あの猫は、私が目を覚ましたのを見て、にゃーと鳴いて何処かに行ってしまった。
探していたケリーに会えて言いたかったありがとうが言えた、“さがしもの”は見つかった。
でも、毎日ここに来よう、約束したからだけではない、野良猫の寿命は短いと聞いた、餌を探すのも大変だろう、それに、もしかしたら、また、猫の国に行く事が出来るかも知れない。
晴れた空を見上げて想う。
旅立って逝った大切な友人に捧げます。