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春日丘町のネコさん  作者: JUN
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春日丘町放火事件

 春日丘町はそれほど都会でもなく、それほど田舎でもない。ほどほどにのんびりしている町だ。わたしの仕事はそこを巡回する事で、困っているヒトを見かけたら、気が向けば助けてやる。

 まあ、ねぐらにしている郡司家のニンゲンが中心だが。

 今日もわたしは悠々と巡回をそていた。昨日までの雨が上がり、今日は快晴だ。

 と、叫び声がした。あれは、時々丸干しをくれるイシダさんの声だ。

 やれやれ。何かわたしの手助けを必要とする事が起こったのかもしれない。わたしは足を速めて、イシダさんの家へ駆けつけた。

 何かの燃える臭いがする。しかし、サンマや丸干しではない。

 近付くと、イシダさんはバケツの水を黒い燃えカスにかけ、青い顔をしていた。

「にゃああ」

「あら、ミーコ。ごめんなさいね。今日は丸干しを焼いていたんじゃないのよ」

 そう言いながらわたしの顎の下をかく。わたしも気持ちいいが、イシダさんもそれで落ち着いて来たようだ。

「どうしたの?」

 買い物帰りのタカミが通りかかり、自転車にまたがったまま止まった。

「何か変な臭いがすると思って外に出たら、干してあった運動靴が燃えていたのよ」

「まあ!怖いわねえ。

 え。まさか、放火?」

「まあ、火の気なんてなかったものねえ。でも、放火だなんて……」

 困惑したようにイシダさんは言う。

「この前、そこのお宅のカズ君。タバコ吸ってたのよねえ」

「まあ!」

「注意したら凄く睨まれちゃって」

「まさかそれで恨まれちゃったんじゃ?」

「どうしましょう!?」

 わたしはそこを離れる事にした。

 どうも、一波乱ありそうな予感である。


 ミキオが帰って来て親子3人で夕食を摂りながら、ミキオにタカミは小火の事を話した。

「え、放火!?怖いなあ」

「この前、カズくんっていう高校生がタバコを吸っている所を見たんですって。そうしたら睨まれたって」

「え。じゃあ、目撃者って事で?」

「そうなるのかしら」

 ミキオはううんと考えた。

「まあとにかく、燃えそうな物は外に置かないようにした方がいいな」

 いつの間にか、外はまた、雨が降り始めていた。

 この鬱陶しい雨にように、その陰鬱な事件の噂は、この呑気な春日丘町をギスギスした雰囲気に変えるのだった。





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