伝説の勇者シーザーの伝説
よろしくお願いします。
勇者シーザー ♂正義感に溢れていた男。
魔王討伐のため、旅に出る事になった。
しかし、魔王に故郷を滅ぼされ、復讐に燃えるようになった。
表記:シーザー
子供 &ナレーション不問
シーザーとカリーナの子供で勇者を継ぐもの。
呼ばれる時は○○と書くので、その時の役者の名前や適当な名前をどうぞ。
表記:子供 ナレ
カリーナ♀旅の最中に出会う事になる女性。後のシーザーの妻
表記:カリーナ
魔王&村人D♂or♀悪の親玉。この世の悪を司るもの。絶対悪。
表記:魔王 村人D
村長&村人B♂村の住人。
表記:村長 村人B
村人A&村人C&医者♂ 村の住人。医者。
表記:村人A 村人C 医者
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ナレ「ハニカミ村。
今ここで、若き男が旅に出ようと準備をしていた。
この者の名前はシーザー
10年前に突如として現れ、世界を征服しようと軍を行進させている魔王を討伐するため旅立つ勇者である」
シーザー「勇者の血筋として、あの憎き魔王を討伐してきます!」
村長「うむ、無事に務めを果たしてくるのだぞ」
シーザー「合点承知の助!」
村人A「シーザー!頑張れよー!」
シーザー「おう!帰って来たら三日三晩宴をしよう!」
村人A「あぁ、当たり○田のクラッカ〜ってな(笑う)」
シーザー、村を出る。
村長「シーザー、勇者シーザーよ。自分の人生に抗うのだ。
そして、乗り越えてみせよ。
全てを成した時、血筋よりも大切なものを見つけるのだぞ」
暫くして……
村長「……魔王の軍勢め!
勇者を殺しに来たようだが、もう遅い!
勇者はお前を倒すために旅に出た。
さぁ、殺すなら殺せ!
だが、お前は必ず討ち果たされるだろう!」
一方その頃
シーザー「勇んで村を出たは良いものの、まさか忘れ物をするとはな……どうもカッコがつかないな……」
シーザー「な、なんなんだ……これは!
村が、俺の故郷が、燃えている……!?」
魔王「ん?まだ生き残りがいたか」
シーザー「なっ……お前は!?」
魔王「我を知らぬか、なんと愚かな。
人間よ!我の名をよく聞け!我は魔界より産まれし魔の王、魔王である!」
シーザー「魔王、一族の敵……お前があの魔王か!」
魔王「ほう、一族とな?」
シーザー「俺の名前はシーザー、勇者の血を引き継いだ男だ!
お前を勇者の一族の務めとして、そして故郷を滅ぼした怨みを晴らすため、今ここで倒してやるっ!」
魔王「ふふははははっ……まっこと、愚行にして愚直なり!
貴様では我に勝つ事など不可能だ」
シーザー「やってみないと分からないだろ!」
魔王「いいや、我には分かる。
そして、お前も薄々勘付いているのだろう?」
シーザー「なんの話だ!」
魔王「ほぅ……?我の口から言って良いのか?
貴様には勇者としての力が備わっていないのだよ!」
シーザー「ぐっ……!」
魔王「お前は勇者という器しか持っていない。
言うならば、酒の入ってないジョッキみたいなものだ。
そんなお前が、魔王として闇の魔法の全てを会得した我を倒せると本気で思っているのか?」
シーザー「それは……」
魔王「しかし、我も雑魚相手ばかりで退屈だったのだ。
丁度いい、貴様に空のジョッキに酒を注ぐ方法を教えてやろう」
シーザー「お前に言われなくともその方法は心得ている!」
魔王「はははっ、もっと手っ取り早くそして確実だ。
それはなぁ、復讐に身を委ねる事だ!我に対する憎悪や憎しみによって貴様は強くなる!」
シーザー「……なっ!」
魔王「だからこそ、お前が旅立った直後にお前の村…ハニカミ村を滅ぼしたのだ!感謝しても良いのだぞ?」
シーザー「ふざけるな!そんなことのために、そんなくだらないことのためだけに村を……!
勝てるかどうかではない!今叩き切ってこの恨みを果たしてやる!」
シーザー、魔王に襲いかかるも逆に吹き飛ばされてしまう。
魔王「くくくっ……棒切れを振ることに関しては筋がいいようだな。……では、我は魔王城にてお前を待つとしよう。精々、復讐に身を焦がし、強くなることだな、勇者」
ーーー魔王去るーーー
シーザー「くそっくそっくそっくそっくそくそくそくそくそくそぉぉぉぉ!」
ナレ「勇者は心の底の感情を爆発させて叫んだ。
1つは魔王に対する怨み。
1つは故郷を失った悲しみ。
そして、そんな魔王に対して何も出来なかった己の無力さに。
彼の叫びはまるで悪魔の鳴き声ようで、それでいてどこか赤子のようであった」
間
ナレ「勇者シーザーが旅に立って2年が過ぎた。
シーザーは魔王に対する復讐心だけでほとんど休まず、魔王城まで辿ろうとしていた。
しかしーー」
シーザー「はぁ、はぁ、くそっ……なんで俺の足は動かないんだ。
なんで、なんで、前に進まないんだ。動け、動けよ。
早く、早く魔王を殺して、この怨みを、嘆きを、終わらせて……くっ!」
ナレ「休まずに歩き続けた結果、足は疲労により鉛の棒のように化していた。そしてシーザーは、ついに限界が来て眠ように大地に倒れこんでしまった。
もう幾度と日が昇っただろうかも分からなくなったある日のこと、
朧げな意識の中、シーザーは女性の声を聞いた」
カリーナ「そこのお方、大丈夫ですか?」
シーザー「………俺に触るな、俺は、一刻も……早く、魔王城に行かなければならないんだ……」
カリーナ「しかし、そのお身体では」
ナレ「シーザーの身体はボロボロだった。
持っていた剣は折れ、鎧には所々穴が空いていて、身体は切り傷、刺し傷、打撲、火傷、その他諸々の跡が残っていて、見ていられない状態に陥っていた」
シーザー「俺に、構うな!俺はどこも怪我などしていない!……ぐあっ!」
カリーナ「なにを言っているんですか!貴方の目や脳は麻痺しています!ちゃんと見てください、ボロボロじゃないですか!」
シーザー「……うぐぅ」
カリーナ「この近くに私の住む町があります。どうか、そこで手当てをさせてください」
シーザー「構うなと、言っているだろ!」
カリーナ「ああ、もうほんと強情な人!
分かりました、えぇ、分かりましたとも!
もう構いませんからそこでくたばってくださいね!」
ーーーカリーナ、町へ帰るーーー
シーザー「ふんっ、行ったか、それで良いんだ……よ」
ナレ「シーザーは体を起こそうとしたが、立つ事は儘ならず、また意識を手放してしまった」
間
村人B「つんつん」
シーザー「…」
村人B「つんつんつん」
シーザー「……」
村人B「つんつんつんつん」
シーザー「んっ……」
村人B「(息を吸う)元気ですかぁぁぁぁ!」
シーザー「んっ……ぐっ……」
村人B「良かった。どうやらまだ生きているようですね」
シーザー「くぅ……耳がキンキンする、どうしてくれるんだ」
村人B「貴方が生きているかどうか確認したかったんですよ」
シーザー「そんな耳元で叫ぶな……。
というかそれよりもっと効果的な方法があっただろ」
村人B「いやまぁ、私、倒れている人に『元気ですかぁぁぁぁ!』と叫ぶのが趣味でして」
シーザー「そんなものを趣味にするな……!」
村人B「てへぺろっ☆ぺろっ☆ぺろぺろっ☆
……はぁ。私は貴方を町に運びに来たんです。
全く、話をそらさないでくださいよ」
シーザー「目覚めない方が良かったのかもしれない。
とんでもなくウザいものに絡まれるなんて、嗚呼、ツイてない」
シーザー「……って、なに!?運びに来ただと?
そんなものは頼んでいない!
水でも置いてさっさと俺の前から消えろ!」
村人B「あれ、意外と図々しいですね。
いやしかしねぇ、私もカリーナさんに言われたんでね。
そのままって訳にもいかないんですよ」
シーザー「カリーナ……さん?」
村人B「あれ?分からないですか?貴方に声をかけたらしいですよ?」
シーザー「もしや、あの女か?……ったく余計な真似を」
村人B「まっ、とにかく連れて行きますんで抵抗しないでくださいね」
村人B、シーザーを引き摺ろうと足を掴む。
シーザー「ちょっ!まっ、はな、離せっ!ぬわっ!うあぁぁっ!せめて、せめて頼む、頼むから普通に、運んでくれ!」
村人B、肩をすくませてからシーザーをお姫様抱っこする。
ナレ「男は想像以上に力強く、シーザーは抵抗虚しく街に連れられてしまうのであった。
そしてーーー」
ーーー町の中、カリーナの家ーーー
村人B「よいしょっと!カリーナさん!例の人、連れて来ましたよ」
カリーナ「ありがとうございます。いつもの回復薬、お安くしておきますね」
村人B「おっ、助かるよ!それじゃ、私は畑仕事が残ってるので失礼するよ。いいかい?元気があればなんでも出来る!この言葉を忘れないようにね」
カリーナ「相変わらずですね。確か、気合いだ気合いだ気合いだ気合いだ、気合いだー!っていうのも口癖でしたよね?」
村人B「あー、それは違う人だよ」
カリーナ「ほえ?」
村人B「まぁとにかく、後は若いもん同士でね」
カリーナ「あはは、ありがとうございました」
ーーー村人去るーーー
カリーナ「一応言っておきますけど、私ではなく、“あの人が”構ったんですからね」
シーザー「分かった分かった。それで良いよ」
カリーナ「随分あっさりと引き下がるんですね」
シーザー「このやりとりだけでお前が頑固なのはよーく伝わったからな」
カリーナ「ありがとうございます」
シーザー「褒めてねぇよ」
カリーナ「ありがとう……ございます」
シーザー「だから褒めてねぇって言ってんだろ」
カリーナ「ありがとう、ございます……(泣きそうになる)」
シーザー「いやだから褒めてねっ……て、なに泣いてんだよ」
カリーナ「その……今回は助けられたので」
シーザー「今回は……?」
カリーナ「はい、その、少し昔話をしても良いですか?」
シーザー「長いのか?」
カリーナ「……はい」
シーザー「それなら、今すぐここから去る」
カリーナ「……ん、んぇっ!?なんでですか!?
シーザー「俺には今すぐ殺しに行きたいやつがいるからな。お前の長話には付き合ってられねぇんだよ」
カリーナ「ぐすっ、そんな事言わなくたって良いじゃないですかぁ…」
シーザー「だぁぁ!泣くな泣くな」
カリーナ「じゃあ、話を聞いて、くれますか?」
シーザー「いんや、長いならここから出る」
カリーナ「そ、そんな……うぐ、ひっぐっ(泣き)」
シーザー「……っはぁ、分かったよ。分かった分かった!昔話、付き合ってやるから話せよ」
カリーナ「本当ですか!じゃあ、始めますね。……昔々ある町に、1人の女の子がいました」
シーザー「よし、去る!」
カリーナ「待ってぐだざいぃぃ……!」
シーザー「3行で纏められないのか?」
カリーナ「無理ですね」
シーザー「そうかい、はぁ」
カリーナ「じゃあ、続けますね。
その女の子は回復系魔法の才能があり、町の人に大変頼りにされていました。
ある日、その女の子は1人の男の子と出会います。
彼は町で立ち入り禁止とされている封印の森を遊び場にしているそうで、毎日の様に封印の森に入っては薬草やらキノコを採取していました。
そして、その彼は言ったのです。
『毎日大人を相手にして退屈ではないのか?』と
女の子は大人に頼られている事が嬉しいと感じていたのでそんな事は思っていなかったはずなのですが、確かに、心の底では思っていたのです。
『私は色んな世界が見てみたい』
女の子は彼にそれを口に出すと言ったのです。
『なら、俺と一緒に森で遊ばないか?冒険をしてみないか?』と
女の子は雷に打たれた様な衝撃を受けました。
女の子はその彼と一緒に森に遊びにいくようになりました。
今までにない、未知との遭遇による高揚感。
それはそれは幸せでした。しかし、悲劇が起きたのです。
1年が過ぎ、今まで何も起こらなかった事による傲慢から油断していたのでしょう。
森の奥から現れた魔物に気付かず、ギリギリのところで気付いた彼が私を庇って大怪我を負ったのです。
女の子は彼の元へ駆け寄り、回復魔法をかけましたが、傷は塞がりませんでした。
女の子は回復魔法をかけ続けましたがただ魔力が失われるばかりで傷は癒えません。
それを見かねたのか、彼は言ったのです。
『俺に構うな!そんな暇があったら町まで逃げるんだ!』
私は泣きながら町まで逃げました。
私にもっと力があれば…私にもっと察知能力があれば…彼は死ななかったのにと………
だから、俺に構うなだなんて言わないで下さいね」
シーザー「……(寝息)」
カリーナ「もうっ!ちゃんと聞いててくださいよ!はぁ、まったく、仕方ないんですから」
ーーー起きるーーー
シーザー「ん……んぁ?……寝てた、のか?」
カリーナ「……そうですよ。こんな話で寝るなんて、どうかしてます」
シーザー「そりゃ、すまん」
カリーナ「なぁんて、怒ってませんよ。
寝ている間に身体の傷、治しちゃいましたからねっ」
シーザー「あぁ、そうか、ありがとう」
カリーナ「やけに素直ですね」
シーザー「2年間、復讐の為だけに旅を続けていた。
だから、その、あー、なんていうか、その、な。人の優しさを改めて感じられたのが、ちょっと、ちょっとだけな、嬉しいんだよ」
カリーナ「そう言えばそんな事も言っていましたね。嫌でなければその、話してくれませんか?」
シーザー「俺はな……魔王に村を滅ぼされたんだよ。
しかも、俺が魔王を倒す為に旅立ってすぐ後にだ。
『貴様では我には勝てない。貴様が強くなるには復讐に身を委ねるしかない』なんてことを言われてな。そんなことになるものか、なんて思っていたこともあったけど、気づいたらこれさ、ハハッ笑っちまうだろ?」
カリーナ「………」
シーザー「俺は強くなりたかった。俺は村を滅ぼした魔王を殺したかった。
……だから俺は誰の手も借りず、ただ復讐に身を委ねてここまで進んできたんだ」
カリーナ「……お疲れ様でした」
シーザー「あ?」
カリーナ「貴方はかなりのご無理をしてきたんですね。
……でも、もういいんですよ。もうそんなに躍起にならなくていいんですよ」
シーザー「……は、なにを言って」
カリーナ「いいですか?復讐に身を委ねた所で、貴方は強くなんてなれません。むしろ1つの事しか見れなくなって、返って弱くなるまであります」
シーザー「なら、今更どうしたらっ!?」
カリーナ「……簡単ですよ。仲間を作るんです。信頼できる唯一無二の存在を」
シーザー「なか、ま……?」
カリーナ「はい、仲間です。貴方に足りないものは力ではありません。貴方を支えてくれる、援護してくれる仲間なんです」
シーザー「そんなのどこに!」
カリーナ「分からないんですか?私は今、貴方にアプローチをしてるんですよ?色んな世界を見てみたいと言っている薬師で僧侶の“超有能な”後衛がですよ」
シーザー「それって……」
カリーナ「私も一緒に連れて行ってください。絶対に貴方を死なせないと誓います」
シーザー「でも、俺は……2年もの間、人を遠ざけてきたし、遠ざけられてきた!そんな俺に!」
カリーナ「でも、今はこんなにも近いじゃないですか」
カリーナ、シーザーに顔を近づけて手を握る。
シーザー「っ……///」
カリーナ「もしかして、照れてますか?」
シーザー「うるせっ!慣れてねぇんだよ……」
カリーナ「あはは!」
間
カリーナ「私の名前はカリーナ。カリーナです。これから、末永く、よろしくお願いしますね」
シーザー「俺の名前は、シーザーだ。こちらこそ、その、なんだ、よろしくな」
ナレ「こうしてシーザーとカリーナは共に魔王を倒すために旅立ったのであった。シーザーは復讐ではなく仲間を守ることを第一に考えて戦うようになる。その結果、自分の、人や世界を守ることを本懐としている勇者としての才能が開花し強くなっていくのを日に日に感じてめきめきと強くなっていく。
ーーーそして、時は更に流れて3年後。共に戦っていくうちにシーザーとカリーナは次第に惹かれあい、ついには結婚に至ったのである」
村人B「いやぁー、めでてぇ話だなぁ」
ナレ「まだ終わってませんよ、ほら、見てください」
ーーーとある町でーーー
カリーナ「ねぇ、実は、その、アナタに話したいことがあるの」
シーザー「なんでも聞くよ」
カリーナ「私、アナタとの子供を宿したみたいなの」
シーザー「なっ、本当か!?」
カリーナ「ええ、ほら、お腹を見て」
シーザー「おぉ……はははっ、本当だ」
カリーナ「私、この子の名前を考えたんだけどト○ネコってどうかな?」
シーザー「うーん……将来は商人にでもなりそうな名前だな。俺としては立派な剣士にしてやりたいんだが」
カリーナ「そうね……じゃあ、ライ○ンなんてどうかしら?」
シーザー「青い浮遊生物をお供にして旅に出そうな名前だなぁ」
カリーナ「じゃあ、クリフ……」
シーザー「(遮るように)ザ○キッ!」
カリーナ「もー、じゃあアナタが決めてよ」
シーザー「そうだな……よし!○○(決めた名前)なんてどうだ?」
カリーナ「○○……○○……○○!○○ね、気に入ったわ!
そうね、この子の名前は○○よ!」
ナレ「こうして2人の子供の名前は○○に決まった。
○○を育てるため、そして2人が更に強くなるために8年の間、強い魔物が生息している山奥の村で自給自足の生活を送ることとなるーーーそして」
シーザー「○○、お前も8歳になった事だし、お父さんとお母さんがやらなきゃいけない事を話そう」
子供「お父さんとお母さんがやらなきゃいけない事?」
シーザー「そうだ、お父さんとお母さんはな。魔王という、とてもとても怖い化け物を倒さなきゃいけないんだよ」
子供「どうして?どうしてお父さんとお母さんがやらなきゃいけないの?」
シーザー「それはお父さんが勇者だからさ」
子供「勇者ってなぁに?」
カリーナ「勇者っていうのはね。悪いことをしている怪物や人を懲らしめるお仕事なの」
子供「かっこいい!お父さんかっこいいね!」
シーザー「ははっ、お父さんかっこいいか、そうかそうか」
子供「うん!えっと、当たり前田のクラッカーって言うんだっけ?」
カリーナ「あらあらなぁにそれ、お父さんに教えてもらったの?」
子供「うん!」
カリーナ「アナタァ?後でお話があります」
シーザー「あ、え、あ、はい。なんで、そんな般若みたいな顔してるんだ……ゴホンッ!まぁ、そのーなんだ。そろそろ頃合いだしな。奴との決着のため、魔王城に乗り込もうと思っているんだ」
子供「○○も行く!」
シーザー「○○を守りながら戦える程、相手は弱くない……」
子供「でも、でも!」
カリーナ「連れて行きましょう」
シーザー「なっ!?お前は自分が今、何を言っているのか分かっているのか!」
カリーナ「そんなの、分かっているわ。でも、この子もいずれ勇者になる子。また魔王みたいな化け物が現れるかもしれない。
その時のために……」
シーザー「分かった、そうだった。お前は昔から頑固だからな」
カリーナ「分かってるじゃない」
村人D「どうもこんにちは〜」
シーザー「何者!?」
村人D「どうも、しがない村人ですよ〜って、お呼びでない?こりゃまた、失礼しましたー!」
カリーナ「なんなの、この人……」
村人D「何なのこの人って……ふふふっふははっふははははは!あは!!!!」
子供「この人……怖い」
村人D「なんなのこの人って、そうです。私が……我が魔王さんです」
魔王「だっ○んだ〜!」
魔王が魔法の言葉を発すると共に家が吹き飛ぶ。
シーザー「なっっ!?」
魔王「勇者よ。貴様が12年遊んでいた間に、我はド○フを研究していたぞ!」
カリーナ「なんでよ!」
シーザー「俺は遊んでいた訳じゃない!お前を殺すために今まで旅をし、修行をしてきた!」
魔王「ふん……なんでと言われてもな。人間の国の制圧は下の者が勝手に進めてて暇だったしったく、配下の者は我に、頼むから楽をしててくれなどと言って来る始末で……ではなく!
お前の旅や修行など、所詮は遊びだ。前にも言ったであろう?
お前では我を倒せんとな。復讐心も薄れたお前が、我に勝てる訳もなかろう?」
シーザー「そんな事はない!俺は、この10年間で仲間の大切さ、家族への愛を知った。俺は俺の……いや、俺達の家族愛をもって、お前を倒す!」
シーザー、剣を抜き魔王に突撃する。
魔王「ならば、無駄ではなかったと証明してみせろ!」
それを迎えるように魔王も剣で応戦する。
シーザー「はっ!はっ!はぁあっ!」
魔王「ふんっ!はぁっ!はっ!」
ナレ「こうして勇者シーザー達と魔王の戦いが唐突に始まったのであった!しかし、どちらも拮抗した実力を持ち、その戦いは激しく、時に静寂に、時に美しく火花を散らし、時間を置いていってしまいそうになる程の熾烈を極めた。
……だが、その戦いは幾度もの暗闇を過ぎた末に決着がつこうとしていた」
シーザー「ぐっ……!はぁはぁ……くっ!」
魔王「ぐっ……ふっ、ふふふふ、どうやらお前はもう限界とみえる」」
シーザー「まだだ、まだ終わっちゃいない!」
魔王「だが、お前の女は魔力切れを起こして意識が朦朧としているぞ?
我がお前を殺せなかったのは、その女のちまちまとした回復魔法と回復薬があったからだ。
それが尽きた今、お前を殺す事など容易いわ!」
カリーナ「ごめんね、アナタ……私、もう……限界、みた、い」
子供「ママ!ママ!」
シーザー「カリーナ……無理させて悪かったな。この戦いを早く終わらせて、お前を安全な所で休ませてやるからな」
魔王「この一撃で、お前達を楽にしてやろう!喰らえぃ!」
シーザー「楽になるのはお前の方だ!はあぁ!」
魔王・シーザー「「ぬおぉぉぉぉぉぉ!!」」
間
ーーー東京・病院ーーー
子供N「夏本番。大地が焼けるような季節の中、○○こと私は東京都心の大学病院に居た」
子供「ここに、お父さんが……」
医者「どうされましたか?」
子供「お父さんは何号室ですか」
医者「あぁ、えっと、お名前は?」
子供「田中 ○○です!父の……田中 英雄田中 英雄のお見舞いに」
医者「英雄さんの関係者さんでしたかさぁ、ご案内しますので付いて来てください!」
ーーー病室内ーーー
子供「そんな、そんな事って」
医者「申し訳ございませんでした」
子供「謝られても……!謝られても困りますよ!」
医者「分かっています。ですが……言わせてください。
本当に、申し訳ございません」
子供「父さん、父さん!」
医者「腫瘍が脳でかなり肥大化していて、我々も手を尽くしたのですが……」
子供「そう、ですか」
医者「はい」
子供「うっ、ううっ……」
医者「そういえば亡くなる前にあなたにこれを渡してくれと頼まれていたんでした、どうぞ」
子供「これは、ゲームカセット?
ファンタジークエスト3……これって!」
医者「懐かしいですねぇ。
確かそれ、20年前くらいのゲームですよね」
子供「はい。私が小さい頃、よく父がやっていました。
世界をドン底に陥れた魔王を倒すために勇者が旅に出る。王道のRPG。このゲーム、仲間機能があるんですけど勇者の他に2人、パーティーに入れられて……名前とか性格を自分で設定できるんです。
そこに入れられていた名前が、私の母と私のもので……
懐かしいなぁ……。
倒したり逆にやられて全滅するのを見て一喜一憂してたっけ」
医者「あ、そういえばゲーム機が確か病院の物置部屋にあったと思うんですが、取ってきましょうか?」
子供「え、病院にあるんですか?」
医者「別の先生が気分転換に持ってきたのを仕舞ってたんですよ」
子供「そうですか。なら、是非お願いします」
子供「お父さん……このゲームの事、覚えてたんだね。
私も覚えてたよ。
どんな魔物が出てきたのか。
どんなストーリーだったのか。
そして、お父さんがどこまで進めていたのかも」
子供「ラスボスとの戦闘シーン……。
カリーナの魔力が尽きて、シーザーが瀕死の状態で、そして私の体力が満タン」
医者「いやー、あったあった。動くかどうかの保証は出来ませんけど、ほら!」
子供「ありがとうございます」
SE:ガチャガチャ、カチッ ブーンッ
医者・子供「「動いた!」」
子供「戦闘途中のバトルが有ります。続きからプレイしますか……?」
医者「もちろん、やりますよね?」
子供「もちろんです」
ーーー魔王戦ーーー
シーザー「ぬぅあぁぁぁぁ!」
魔王「ふふふふ……あの女が居なければ容易いものよ!」
シーザー「がはっ……っ……ぐぁ!……ぐふぅ」
子供「お父さん……!お父さん……!」
シーザー「○○……!俺は、もう……戦えねぇ……だから、お前に最期の力を託す!お前は、俺の、俺達の子供だ!お前……ならできる!俺の剣を使えぇぇ!そして踏ん張れ!俺の力はぁぁぁ!気ィ引き締めねぇと、身体が持たねぇぞぉぉぉぉぉ!!」
子供「うっ……うああああああああああ!!!!」
シーザー・子供(シーザーに続いて、子供が叫ぶ。最終的には2人が叫んでいる状態)「おぉぉぉぉぉぉぉ!」「あぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
魔王「な、な、な、なんなんだこの力は……!
あり得ん、あり得んあり得んあり得んあり得ん!そんな、馬鹿なァ!」
子供「私は、私達家族は、絶対に負けない!例えどんな事があろうと絶対に!」
魔王「こんな結末など、認められるかぁぁぁぁっ!」
子供「これが現実だぁぁっ!」
魔王「ぬぅぅあぁぁぁぁ!」
ナレ「こうして世界から魔王の脅威が去り、平和が戻ってきた。
勇者シーザーは自らの力と、そしてこれからの未来を子供に託し、天に昇っていった。
○○は、どこからかシーザーの声が聞こえた気がした。
『俺の時代は終わった。
これからはお前が、魔王の居ない平和な世界で、未来を作ってくれ』と」
ーーー病院室内ーーー
子供「お父さん……今までありがとう。私はお父さんが居なくてもやっていけるよ。だから、ずーっと見守っていてね」
ナレ「勇者と呼ばれた男、シーザーは死んだ。
それは世界にとって、とても悲しい出来事だろう。
……しかし、悲観する必要はない。
この世界は平和になったのだから。
この平和になった世界で、生き残った人々は……そして私はなにをしていくのか。これから、新しい伝説の物語が紡がれる」
ありがとうございました。