ヒロインの思い
私は今、とある男を中心としたパーティに所属している。
元々は奴隷で日々、過酷な労働を強いられていた私を解放し、自由にしてくれた恩を返すことが目的で彼に同行を願ったのである。
少しの間2人での旅だったが行く先々で仲間が増えていき、今では7人となっている。
旅を続けていくに連れ、少しだけあった違和感が徐々に大きくなっていくのを感じた。
まずは彼についてだ。
初めて会った時は、自分を助けてくれたこともあり、とても印象の良い好青年という感じだった。
しかし、奴隷だった私がいうのもなんだが、彼は知識の偏りがひどく、時々当たり前の事を聞いてくる。特に魔法関連のことはなにも知らないようだった。生活をしていく上で必ず使うのにも関わらず全く知らないというのはどう考えてもおかしい。
記憶喪失かなにかだと思ったがどうやら違うようだ。
あまり聞いたことのない名前であったり、私の知らない言葉が時々出てきたりなどもあり、どこから来たのか尋ねてみたが、とてもとても遠い所から来たとしか答えてくれなかった。
そして彼は異常なまでに強い。
魔法関連のことをなにも知らなかったのに、一度見聞きした魔法は全て使うことができるようだ。それに加え身体能力もあるようで、適当に剣を振っているようになのだが、負けることはおろか追い込まれる姿すら見たことがないし、1番足の速い種族である獣人の仲間よりも速い。どう見ても細身なのにそれらをやってのけるから余計に不思議に思える。
さらに、新天地に着くたび、様々な人のピンチな場面会い、その都度旅の仲間に加えている。しかもその全てが容姿の整った女性なのである。種族や年齢もバラバラで、エルフのお姉さんや幼い獣人などがいる。
奴隷であった私や、強面な人達にからまれているところ、村全体から迫害を受けているところなど、違いはあるにしても不幸な目にあっている女性に出くわし、その全員を助け、例に漏れず、旅の仲間に加わっている。
助けたうちの1人に王族の娘がいることもあってか、国のお偉いさんとも仲がいいようでだ。よく相談に乗っているところを見かける。
発言に強制力でもあるのか、相談した人々は言われた通りのことを必ずしている。少し間違っていると思うとこがあっても、向こうはなんの疑問も持たずに実行しているのだ。私が彼に直接指摘してみると、この世界ではどうとかあっち世界ではどうとかよく意味のわからないことを言って聞く耳を持ってくれない。
次に、仲間の女性達についてだ。
まず1つ目に、私以外全員が彼会って間もなく、惚れていることである。
ほかに男がいないから彼のことを好きになる人がでてくるのは別に構わないが、全員となると話は別だ。しかもどんなとこが好きかを聞いたら、「危険なところを助けてくれたところ」や、「優しくて強いところ」ということぐらいしか言ってこなかった。
2つ目は、私達が着替えているときに彼が部屋に入ってきたり、何もないところで転び、胸を触り倒れるなどのことが頻繁に起き、しかも彼女達その時は怒るものの、後々になって偶然起きたことなのに怒り過ぎたと謝り、触られたり見られたことに対する嫌悪感を少しも見せないところだ。狙ってやった可能性もあるのに、疑う素振りも見せず好きでいられる精神が私には分からない。
3つ目は、不可解なことに一夫多妻制を容認していることだ。
ずっと昔にその制度があったらしいが、それもごくわずかで、今では無いに等しい。なのにも関わらず。
「昔はあったんだし、いいんじゃない?」 などと言いだす始末だ。最初から一夫多妻制を認めていたのかもしれないが、それが5人も偶然集まるとなると流石におかしいと感じずにはいられない。
「まだ会って時間もそんなにたっていないし、結婚とかはもう少し先送りにしてもいいんじゃない? 気が変わるかもだし」
と提案したら、
「そんなこと言っちゃって、あなたも好きなんでしょ。早く素直になりなさいよ」
と言われ、話を聞いてくれなかった。
初めて会った頃はまだ普通だったのだが、旅をしていくに連れてこのような発言をするようになっていったのだ。
彼が私以外の全ての人に、何か洗脳でもかけたのだろうか。それともこの世界がそうなるように仕組まれているのか……。それならば何故私だけは彼に惚れず、彼の発言に疑問を持つことができるのだろうか。
あの男は一体何者なのだろう。これならいっそ私も彼を好きなれば良かったと常々思うが、こうして正常な思考が出来るので、精一杯できる範囲のことをしていきたい。
恩があるがそれとは別だ。
彼は何者なのかをはっきりさせ、彼女達をどうかもとの状態に戻し、これ以上被害が出ないようにしていきたい。
これらの新しい目標を胸になんとか手掛かりを見つけるため、旅を続けよう。




