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奴隷少女とカエサルの後継者  作者: ビジーレイク
第四章 荒ぶる大河
10/25

第五話 黄金橋

チート炸裂回です。

        1

 陣付近の森で、兵士たちが木を伐る。集めた木材を組み合わせると、船が完成した。

 森から川まで船を移したいが、陸上の船はさすがに目立つので、夜になるまで待つ。暗闇の中、船を二輪の台車に載せて搬送する。

 川に到着すると、兵士たちを船に乗せ、対岸に送り込んだ。アフラニウスは川全体に防衛線を張っていたが、味方は敵の薄い箇所を急襲し、一帯を占領した。

 敵がいない(すき)に、こちら側と向こう岸の両方向から橋を架ける。

 味方の頑強な橋を見て、森に隠れていたガリア増援部隊が動き出す。安定した足取りで橋を踏み越えた。

 ついにガリア増援部隊が、本陣に到着する。食糧を心待ちにしていた兵士たちは、声を上げて歓迎した。ガリア人に抱擁する者もいる。

 補給経路が復旧した。カエサルの策が功を奏した。

 ガリア増援部隊の中に、ローマ人の兵士が混ざっていた。憔悴(しょうすい)しきった表情で、鎧は崩れ、服を着ているのかボロを(まと)っているのか、分からないほどだ。

 靴をなくした片足を引きずり「マッシリアから来た」と、半狂乱で(まく)し立てている。

「デ、デキムス・ブルートゥス殿。ポンペイウス・マッシリア連合艦隊と交戦し……」と、白目を剥いて倒れた。

私は駆け寄り、兵士を揺すった。

「ねえ、何があったの。ブルートゥスはどうしたの。死んだの。負けたの」

 が、返事がない。死んではいないが、意識を失っただけだ。気絶した兵士は、どこかに連れて行かれた。ブルートゥスの生死に興味はないが、マッシリアの敵がこちらに押し寄せてくるか不安になった。 カエサルは、暖かい食事を前にして喜ぶ兵士たちを素通りして、天幕に入っていく。後を追いかける。

 補給経路が復旧すると、ローマからの報告も復旧した。カエサルは厳しい顔つきで机上の報告書に目を通し、空中に向かって指示を出す。私は口述筆記し、命令書を作成する。

 高速で事件を処理していくカエサルであったが、一通の書類に手を止めた。

「セルウィリア」と、声を弾ませた。

 私は(はな)(みず)を吹いた。カエサルに私の異常を気づかれたが、顔を伏せて誤魔化す。

 セルウィリア。カエサルの不倫相手で、最も有名な人物だ。

 ご主人様……マルクス・ブルートゥス様のお母様でもある。

 手紙を手にしたカエサルの表情は優しい。

「なんて書いてあるの」と、身を乗り出して訊いた。ご主人様の安否が分かるかもしれない。

「セルウィリアはローマを脱出して、郊外の別荘に避難していたそうだ」

 郊外の別荘。そうか、混乱していて、そこまで頭が回らなかった。気付いていれば、カエサルに従軍しなくてもよかった。

「ローマの混乱も鎮まり、セルウィリアはローマに戻っておる。無事であったか」

 ローマに戻れば、セルウィリア様の待つ家に帰れる。辛い従軍生活が終わり、いつもの日常が甦る。私は心の中で喜び踊った。

「セルウィリアの小僧は、ポンペイウス側についたな」

 小僧、という呼び方は不快だが、安心した。

 ご主人様は生きている。優しげな顔が思い浮かぶ。私にとってブルートゥスとは、やはりマルクス・ブルートゥス様である。粗野で下品なデキムス・ブルートゥスではない。

 カエサルは首を(ひね)り、手紙を放り出した。

「面妖な。セルウィリアの小僧め。何故、余に味方せぬのか?」

 カエサルは、ご主人様が味方してくれると期待していた。裏切られた、と思ったのかもしれない。

「マッシリアから報告に来た兵士が、意識を取り戻しました」

 兵士が間に入ってきた。カエサルは立ち上がり、天幕を出た。さっきの兵士が声を張り上げる。

「デキムス・ブルートゥス殿には、マッシリア海域にてポンペイウス艦隊を打ち破り、敗走させました」

 カエサルの陣が一瞬、静まり返った。事態を把握するまで多少の時間が掛かったが、すぐに、一際ぐんと大きい歓声が響いた。

「デキムス・ブルートゥス殿、勝利っ。我が軍、勝利っ」

 兵士たちはブルートゥスの名前を連呼した。永く包まれていた敗戦の雰囲気が消え、兵士たちは戦争に勝ったかのように狂喜乱舞した。

 私は「たった二隻の漁船で、どうやって?」と、一人だけ冷静だった。

 敵の艦隊を奪う、とブルートゥスと二人で考えてはいたが、まさかポンペイウスを撃退できるほどだったとは信じられない。誤報の可能性もある。

「これが、デキムス・ブルートゥスである」

 カエサルは目を細めて、ころころと喜んだ。カエサルが見せる、初めての表情だった。まるで我が子の活躍を喜ぶ父親のようである。

 さっきご主人様を小僧呼ばわりしていた態度と、かなり違う。

 だが、歓喜は続かなかった。

 突然、川から轟音が鳴った。大地を揺るがす体感に、誰もが川の氾濫だと気付いた。橋の残骸が、上流から流れ落ちる。

 兵士たちは、「我々は神々すら敵に回したのか」と、嘆いた。

 カエサルは冷静な口調で「復旧せよ」と、指示を出す。「神々が悪戯に飽きるまで、何度も作り直せばよい。神々に勝てずして、どうやってポンペイウスに勝てるのか?」

 兵士たちは各自の職務に取り懸かる。だが、戦勝気分が消え失せた反動で、動きが鈍い。

 誰かが、「絶対に流されない、絶対に壊されない橋は、できないだろうか……?」と、呟いていた。心からの願いである。

「黄金で造ればいいのよ」と、私は口走った。兵士の一人が私を睨む。

 兵士の視線をごまかすため、東方の兵法書を開いた。

 黄金でできた橋の作成方法が書いてあるかもしれない。

 一番最初に目が止まった記述は「()の近くでは貴売(きばい)する」であった。「駐屯地では物資が高騰する」という意味だ。今の状況そのものである。

 川の氾濫といい、兵法書の著者は予言者なのかもしれない。だが、さすがに橋の造り方までは書いていない。

「手柄に見合った報償を与えよ」「敵を吸収して強くなれ」「敵を痛めつけるより降伏させよ」「敵の弱点を衝け。さもなくば敵の弱体化を計れ」……。

 敵の弱体化とは、なんだろう。武器を取り上げる、とかだろうか。他には、戦意を失わせる。敵を誘導し、兵力を分断させる。

 敵の分断。私の内部で、川の景色が見えた。水流は勢い強く、下流に向かって流れ落ち、橋を打ち砕く。

 この橋は障害物なので、落ちても問題ない。崩れ落ちた橋の先に、答が見えた。絶対に落ちない橋の姿だ。

 気付けば、私はカエサルの天幕に走っていた。軍机から地図を取り出す。……できる。絶対に壊れない橋、つまり黄金(おうごん)(ばし)は実現可能だ。

 そのまま夜になった。カエサルの職務は激しさを増す。カエサルも私も不眠不休だが、体力の限界は、私が先に来そうである。兵士が寝静まった頃、密偵が戻ってきた。

「敵の補給部隊が石橋を渡って、敵陣に入りました」

 報告を受け、カエサルは意外そうな表情を浮かべた。

「イレルダからの補給は、なくなったのか」

 全ての材料が出揃った。このときを待っていた。

 この戦い、勝てる。問題は、いかにしてカエサルに、黄金橋の造り方を伝えるか、だ。

 カエサルが仕事を終えて寝台に入るのを待つ。カエサルの寝息を後にして天幕を出た。

         2

 松明の火が揺れる。天幕の内よりも外が明るい。

 兵士の影を、火が照らす。兵士の顔に記憶があった。平均的一般人のルクルスだ。

「貴方が不寝番(ねずのばん)をしているとはね」

 ルクルスは私に気付くと、気怠(けだる)そうな笑顔を見せた。

「なんでもやるよ。誇り高き平均的一般人は、仕事を選ばない」

 早速、私は作業に取り懸かった。天幕の前で、石を積み上げる。ルクルスの訝しげな視線を感じる。

「小さい軍略家さん。君は夜遅くに石で遊んで、何をしているんだい」

「戦いの勝ち方が分かったの。勝つには絶対に流されない橋が必要なんだけど、カエサルに橋の模型を見せようと思って」

 泥にまみれた手を動かしつつ、私は説明した。

「模型なんて造らずに、カエサルに直接、案を伝えればいいのに」

 ルクルスが平均的一般的な意見を言う。

「駄目よ。あたしは奴隷で、しかも女。カエサルが聞き耳を持つかしら」

「そりゃ、聞いてくれないだろうね。言葉って、内容よりも誰の発言であるかが大事だって、死んだおばあちゃんが言ってた。でも、視覚に訴えるなら、上手くいくかもね……君は今こうして僕たちがいる三角州を再現しているのかい」

 上流から流れる二叉の川が三角州を造っているが、これは今の現在地だ。地図の記憶を頼りに形を作る。毎日、必ず地図を見ているカエサルなら、一目で分かるはずだ。

 三角州の近くに別の川を作る。二叉川のうちの一本と平行している。二本の川を跨ぐように、溝を掘る。溝に木の枝を()め込めば、完成だ。光源が松明(たいまつ)だけなので、時間が掛かった。

「二本の川と川の間に木を埋め込んで……って、その木橋なのかい?」と、ルクルスが模型を見て不思議がった。

「違う。この木の枝を引き抜くと、絶対に壊れない橋が完成するの。つまり、黄金橋よ。敵の石橋に対抗して、黄金橋」

「平均的一般人の僕には、意味不明だよ。それに、黄金橋って、なに? 黄金ででも造るのかい? 黄金橋を造ったからといって、どうやって敵に勝つの?」

「黄金橋が完成すれば、私たちは勝てる。イレルダの食糧は、底をついたのだから」

「イレルダの食糧が、なくなるはずないよ。いっぱいあるんだから」

「食糧を口にするのは八万の大軍だけじゃないわ。貴方も言ったでしょ。住民にも取り分がある、って。大軍に住民。食糧の減る速さは、圧倒的に敵が先よ」

「確かにそうだけど。ヒスパニアはポンペイウスの政治基盤だよ。協力的だから、食糧はいくらでも貰えるはず」

「基盤だからこそ、貰えないの。アフラニウスはイレルダに、強く要求できないわ。親分ポンペイウスの支持基盤に傷をつけるなんて、怖くてできるかしら? 略奪なんてしたら、もっと大変よ」

 降っている雨を背に、ルクルスは雷に撃たれたかのように驚いた。

「軍隊よりも住民の立場が強いんだね。面白いね。そういう意味で、アフラニウスの食糧は底を突いたんだ」

「だから、アフラニウスは外部から補給を頼むしかないの。補給経路は、ローマを通れないから、ローマの反対側になると思う。たぶん、ヒスパニアの奥地になるわね」

「なんで、敵の食糧がなくなるって、わかったの? 直感かい? 平均的一般人としては、直感で理論を展開するのは、受け入れ難いね」

「直感かもしれないわね。でも、直感じゃなく理論があるとすれば、石橋が根拠になるわ。戦略的価値がないはずの石橋を、アフラニウスは強固に防備していた。アフラニウスは、当初から食糧の不足を想定していたのよ」

「石橋と食糧が、どう繋がるんだい?」

「石橋は、補給経路の出入口なのよ。石橋を越えて、ヒスパニア奥地に向かうの」

 驚くルクルスに、私は話を続ける。

「私たちは黄金橋を渡って、向こう岸に回り込めばいい。イレルダの石橋を抑えれば、敵の補給を断てる。私たちは、黄金橋から補給を受ける。……カエサルは、もう理解している」

「この戦い、勝てるね! ……でも、黄金橋って、絶対に造れないと思うよ」

「そのためにはカエサルが、この木を引き抜いてくれないと」

 カエサルの注意を惹かなくてはいけない。

 ブルートゥスから貰った布を取り出した。黄金の布……絹だ。木に巻き付ける。

 周囲は明るみを帯びてきた。朝だ。

 カエサルが天幕から出てきた。私たちは慌てて隠れる。カエサルは足下の模型に気付いた。雨で模型に水が溜まっていた。

 気付いたカエサルは、優雅な手つきで、絹が巻かれた木の枝を引き抜いた。木を取り除くと、溝が残る。川から、溝が繋ぐ、もう一本の川に、水が流れ込む。

 カエサルは驚きと閃きの表情を同時に浮かべた。兵士たちを呼び集め、工事を命じた。

 陣内の兵士たちが慌ただしく作業を始めた。ルクルスがツルハシを持って、私に話しかけた。

「カエサルに、どんな魔法を使ったんだい」

「敵を弱らせる方法を知っているかしら」

 私の質問に、ルクルスは頭を振った。

「敵を分断させればいいのよ」

「敵って、ヒスパニア軍団かい」と、ルクルスは頭を掻いた。

「違う。今回の敵は、川の水よ。あたしたち、一緒に見たでしょう。下流の村々には水害はなかった。下流に行けば行くほど、川が網の目のように分かれて、水の勢いが分散されるのよ」

 私の説明に、ルクルスが目を見開いた。

「水路を造って、川の流れを別の川に逃がすの。三角州のもう一本の川を上流で堰き止めたら、どうなると思う?」

 ルクルスは「あっ」と自分の口を押さえた。

「橋が水で流されてしまうのであれば、水そのものをなくせばいい。……絶対に壊れない黄金橋とは、浅瀬のことだったんだね」

 ルクルスは息を吸い込んで、私を見つめた。

「よく思いついたね。小さな軍略家さん。君は、いったい、何者なんだい?」

「さあね。ただの奴隷よ」と、片目を(つむ)って応えた。

 カエサルが水路工事を始めると、三角州の水位が下がっていった。

 報告が入る。

「敵が、陣を放棄しました。イレルダの石橋を越えて、対岸に進軍しています」

 カエサルは口元を緩ませ、命令した。

「アフラニウスめ。こちらの作戦に気付いたか。……工事を止めよ。アフラニウスを逃がしてはならぬ。出撃するぞ」

 アフラニウスはこちらの作戦を見抜き、食糧を求めて逃走した。

 敵の逃亡。想定外の事態だった。私であれば狼狽(ろうばい)するところだが、さすがはカエサルである。戦術を柔軟に切り替えた。

 カエサルは対岸を阻む川を見た。工事は十分に完成しておらず、水位が残っている。騎兵は渡れても、歩兵には無理な高さだ。

 カエサルは騎兵を川の中で横一列に並べ、人馬で柵を作った。水流が逸れ、別の川に流れ込む。

 カエサルは水位が下がるまで待ち、歩兵を渡らせた。雨に打たれ、冷たい川に身を投じる歩兵たちは、表情を凍らせる。

 馬上の人となったカエサルは、「そなたは、ここに残れ」と、私に命令した。真紅の戦袍を翻し、声を響かせた。

「敵を先回りし、補給経路を徹底的に叩く」

 カエサルの軍は向こう岸に渡っていった。後姿は、雨で見えなくなった。

        3

 カエサルが出陣して三日が経った。その後の戦況がどうなったかは、分からない。連絡もなければ、兵士たちも話題にしない。

 私はカエサルの天幕にいた。する仕事もなく(たたず)む。雨音は静かで、久しぶりの休息だ。

 外から異様な雰囲気を感じ取った。これまで感じた経験のない、戦争とは別な危険が近づいている。

「早くここから出ろ」と私の内部が、警告した。だが、天幕から離れる理由がない。

 数人の兵士たちが、指揮官の天幕に無遠慮に入ってきた。数は四人。カエサルの兵士だと分かるが、見慣れぬ男たちだった。

 いや、一人だけ見覚えがある。村娘を強姦した兵士が処刑されたときに、笑っていた男だ。

「やあ、お嬢ちゃん。俺はクピドゥスだ。一緒に俺たちと遊びをしないかい」

 笑っていた男クピドゥスが下品な笑みを浮かべる。クピドゥスは出入り口で立ち塞がり、他の二人はゆっくりと左右に広がって、私を半包囲した。

「遊びって、なにかしら。この前の村娘にやったことだったりして」

 私の発言に兵士たちは表情を変えず、クピドゥスが口を開いた。

「犯人は死んでいる。もう終わったことだよ」

 クピドゥスたちは事件に関係している。

「あたしが誰だか、分かっているの。カエサルの恋人よ。手を出したら、棒打ちの刑じゃ済まないわ」と脅す。声が震えるのを極力抑えたが、相手には気付かれているだろう。

「どうする、クピドゥス……」

 仲間の一人が少し困った表情を浮かべ、クピドゥスに意見を求めた。

「構わんよ。いつものように、俺たちの代理を立てるまでだ」

 クピドゥスは薄暗い笑みを浮かべた。やはり、この男が強姦の真犯人だ。無関係の人に無実の罪を着せ、自分たちの犯行を繰り返す。

「ねぇ、賢いクピドゥスさん」

 じりじりと包囲網が狭まるのを見ながら、私は話し掛けた。

「貴方の悪事は、カエサルにバレているわよ。実は、書面を書いて、この部屋に隠した。カエサルの留守中、貴方が何もせず帰ったら、書面を破り捨ててあげる。あたしが死んだら、書面は残り、貴方たちは罰を受ける」

 仲間の兵士たちが真っ青になる。

 今だ。

 私は彼らの横を通り過ぎ、何事もなかったように天幕を出ようとする。しかし、クピドゥスに腕を(つか)み取られた。

「嘘をつくな。そんな遠回しな真似を、カエサルがするか」

 駆け引きは、これ以上は無駄だ。私は叫んだ。

 天幕に男が、入ってきた。ルクルスだった。

「あれ、どうしたの? 皆さんで昼食の時間? 混ざってもいい?」

 クピドゥスの手が緩んだので、振り払い、ルクルスにしがみついた。ルクルスに提案した。

「逃げよう。あたしは、あの人たちと一緒にご飯を食べる気はないから」

 平均的一般人ルクルスは事態を把握できない。私は、ルクルスの腕を引っ張って外に出た。

「あたしを、どこか遠くに連れてって」

 私の発言に、ルクルスは呆気に取られた表情を見せた。

「そのつもりで来た。カエサルの命令で、君を迎えに戻ってきたんだ。昼食を取る余裕はなくて、残念だけど」

 ルクルスは騎乗し、私を馬上に引き上げた。クピドゥスたちは諦めたのか、追ってこない。

「アフラニウスが降伏したんだ。カエサルが、取り決めの文書を作るから君を連れてこいって」

 ルクルスの馬が水溜まりの泥を()ね、無人の道を駆ける。

 雨は上がっていた。空を見上げると、暖かい太陽が姿を現した。

ありがとうございました。

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