乱入する愛流華奈たち
「魔人ラヴァーズ! 我がお前を叩き斬るッ!」
アテュが剣を魔人ラヴァーズに振り下ろすと同時に、魔人ラヴァーズの弓から真っ黒い毒矢がアテュに向かって放たれた。
その瞬間のことであった。黄金の光が炸裂し、アテュと魔人ラヴァーズの目が眩まされた。
「うわ、何だ一体? 何が起こったと言うのだ!」
「きゃあ! 何事です? この光は何なのですか!」
アテュと魔人ラヴァーズのどよめく声が響くなか、
「ウォォーンッ!」
という雄叫びとともに、四つ足のオオカミ耳の少女が飛び出して来た。
「うおうっ? こりゃ先端舐めたら即アウトだぜ!」
真っ黒い毒矢のシャフト部分を口に咥えたルーヴは、そう言うと、毒矢をペッと吐き捨てた。
ガキン! と鈍い金属音が響き、アテュの剣が黄金に輝く三日月に跳ね返された。
「あは! あは! あたしのヴェロモトゥールは頑丈だからね! あは! あは!」
三日月に跨る月ちゃんが妙なテンションで笑って言う。
「うきゃああああぁぁぁぁぁぁッ!」
茶色いメイド服を着た犬耳の少女が、甲高い叫び声をあげるなり、トールの槌を振り上げるカインの背後に跳びかかっていく。
「シエンヌの愛しのお方を襲う悪い子ちゃんですねー。暴力はいけませんです! レッドカード退場なのですワンッ!」
シエンヌはカインの背中に跳びつくと、爪を立てガリガリガリッ、とカインの背中を引っ掻き続けた。
「ぎゃあああっ! 痛い痛いっ! 変な犬みたいな女の子が襲ってくるよー。助けて! ねええ? アベルううう?」
カインがその背中を仰け反らせて悶える。
「わぁっ! カインを苛めるなよーっ! こんにゃろーっ! こんにゃろーっ!」
アベルはシエンヌの背中にしがみつき、カインからシエンヌを引き離そうとやっきになっていた。
「愛流華奈ちゃん! 助けに来てくれたんだね!」
清陀はその身を起き上がらせると、目の前に姿を現した赤いローブ姿の少女に向かって叫んだ。
「はい。清陀さん、ご無事で良かったです……」
愛流華奈は、仔猫のようなパッチリとしたその瞳にうっすらと涙を浮かべて清陀を見つめた。




