清陀さんが無事でありますように……
「うきゃああああぁぁぁぁッ! シエンヌが一番乗りするですワン!」
嬉しそうに跳びはねながら四つん這いのシエンヌがカードに向かって駆け出していく。シエンヌの身体がスウウ~ッとカードの中に吸い込まれていった。
「くそお! シエンヌなんかに先を越されて、このオレ格好悪いじゃんかよ!」
ルーヴも四つん這いのままカードに向かってジャンプし、カードの中へと吸い込まれていった。
「あは! あは! あたしは三日月に乗ったままカードへGOだ! あは! あは!」
月ちゃんは宙に浮かぶ三日月型バイクに跨ったまま、カードの中へ吸い込まれていった。
「えっと……」
愛流華奈はカードの前で立ち止まったまま、考え込んでいた。
「ううむ? アルカナ殿はカードの中に入られぬのですかな……?」
魔術師ちゃんが怪訝な表情で愛流華奈の背中を見る。
「私がカードの中に入っちゃうと、魔術師ちゃんはどうなるのかな、って思って……」
愛流華奈が後ろを振り返り、困った目をして魔術師ちゃんに問いかけた。
「あいや! 我輩もカードに入るのですかな? あ、いや、まったくこりゃ想像もしておらんかったですかな……」
魔術師ちゃんは急に慌てだし、五芒星の護符や聖杯や剣などの置かれたテーブルを両手で掴みあげると、
「キエェイッ!」
と叫びながら、急いでカードの中へと飛び込んでいった。
「魔術師ちゃんって意外とせっかちなのね……」
取り残された愛流華奈は一人でクスッと笑うと、両手を胸に当て、目を閉じ、
「清陀さんが無事でありますように……」
と唱えながら、カードの中へと吸い込まれていった。
愛流華奈がカードの中へその姿を消すと、カードの発するピンク色の輝きがしだいに薄れていき、カードがすこしずつ縮み始め、やがて元通りの大きさにまで戻っていった。
誰もいなくなった真夜中の路地裏のアスファルトの上で、一枚のタロット・カードが風に舞っていた。




