1番 THE MAGICIAN 「魔術師」
「うふふ。月ちゃん、それを言うなら『月』のカードに帰る、でしょ……? でも、月ちゃんにはもうちょっと私の側にいてもらうことになりそうよ……」
愛流華奈は、月ちゃんに笑ってそう言うと、
「シエンヌちゃん、ルーヴちゃん、大丈夫よ。トートの『恋人』のカードの中に私たちも入りましょう!」
と、シエンヌとルーヴに微笑んだ。
「1番、THE MAGICIAN.『魔術師』のカードより具現化せよ、魔術師ちゃん!」
愛流華奈は赤いタロット・ポーチから一枚のタロット・カードを取り出し、そう叫んだ。
すると、ボムッ! という音とともに、カードから黄色い煙がたちこめた。黄色い煙がしだいに人の形へと変わっていく。
「呼ばれて飛び出てじゃじゃじゃじゃーんですかな?」
カードから出た煙は、白い衣服に赤いマントを羽織った一人の少女の姿に変化した。
ボブの黒髪に紫の瞳をした見た目に十代半ばくらいの少女。少女の頭上には、無限を表すレミニスカートという「∞」の記号が浮かんでいる。少女は右手に白い聖杖を持ち、その右腕を天に向けて高く掲げ、左手で大地を指していた。少女の目の前には一台のテーブルが出現していた。テーブルの上には、剣と棒と聖杯と五芒星の護符とがそれぞれ置かれている。
「アルカナ殿、我輩に何用ですかな? ありゃま! アルカナ殿のそのお姿、我輩とキャラがいささか被ってしまっているのですかな?」
魔術師ちゃんと呼ばれる少女は、愛流華奈の赤いローブ姿を見て、苦笑いをした。
「魔術師ちゃん! トート・タロットの中の世界に連れてって!」
愛流華奈がルーヴの鼻先に落ちているトート・タロットの『恋人』のカードを指さして言う。
「なんと! 我輩を『魔術師』のカードの中から具現化させる力を持ちながら、アルカナ殿はトート・タロットのカードの中に入りこむ力をお持ちでないということですかな? よかろう。我輩が汝の望み、叶えてしんぜよう!」
魔術師ちゃんはそう言うと、おもむろにテーブルの上に並べられた道具をいじくり始めた。




