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拒絶されるシエンヌ

「クウウウーンッ! シエンヌの愛しの愛しのマイだーりんっ! まだ見ぬ貴方は今いずこ?」

 尻尾を振り振り、メイド姿のシエンヌが水色のパンツを露わに晒しながら、夜の住宅街の路地裏を駆け巡っていた。


「くんくん、くんくん! この辺りまで来ると、愛しのお方のキュートな匂いがいちだんと色濃くなってくるです!」

 シエンヌがその鼻をアスファルトに押し付けて、清陀の残り香を辿っていく。


「むむむ。愛しのお方のぷりぷりプリティーな匂いがここで途切れてしまっているです!」

 シエンヌがピタッと、その動きを止める。


「むむむ。なんですかね、これは?」

 シエンヌの鼻には一枚のタロット・カードがペッタリとくっ付いていた。


「くんくんくんくん! このカードの中から、愛しのお方のミラクルな香りが濃厚に漂ってくるです! のーうこーうっ! ノォーッ! コォーッ! オーッ、イエースッ!」

 シエンヌは前足を上げ、そのピンク色の肉球をペタッとカードに貼り付け、自らの鼻から剥がし取った。


「あうあー? このカードは何のカードなのです? シエンヌの知っているタロット・カードとは絵の雰囲気が違うのです!」

 シエンヌが手にしたカードを眺めてみると、剣のアーチに囲まれた場所で、王冠を被った男女がともに手を取り合い結婚式を挙げている様子が描かれていた。


「むむむ。シエンヌの愛しのお方の匂いがこのカードの中から濃厚に溢れ出てくるのは間違いないです……と言うことは、シエンヌの愛しのお方はこのカードの中で結婚式を挙げ……?」

 シエンヌはそう言いながらヨロヨロとその身をよろけさせた。


「オーッ! ショック! し、シエンヌの愛しいマイだーりんに結婚式なんて挙げさせないです! まだ見ぬ愛しのマイだーりん! あなたが結婚式を挙げるのは、このシエンヌとなのですワンンンッ!」

 シエンヌはそう言いながら、手にしたカードに自らの頭をグイグイ、と押し付けた。

「シエンヌもこのカードの中に入るです! ぐいぐい! ぐいぐい! 中に入るです!」


 しかし、シエンヌがカードに頭をいくら押し付けても、シエンヌの頭はカードの中に吸い込まれてはいかなかった。


「クウウウーンッ……シエンヌの愛が、カードに拒絶されているということですか……悲しいワン……」 

 シエンヌは首をうな垂れさせ、その場にへたり込んだ。


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