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もっと命を大切にしろ!

「うおおっ! シエンヌのやろおーっ! なんちゅう速さでやんだよ! シエンヌなんかに負けてられっかよおっ!」

 負けじとルーヴがすぐさまシエンヌの後を追う。


「あははは! あたしのヴェロモトゥールも負けないよーっ! あは! あは!」

 月ちゃんの乗る三日月型の空中バイク、『ヴェロモトゥール・リュネール』は黄金の光の輝きを増しながら加速し、ルーヴの後を追いかけていった。


「ええええっ? また皆で私を置いて行っちゃうのね……」

 愛流華奈はペダルに置いた足に渾身の力を込め、ふたたび自転車を漕ぎ出した。


「はぁ……はぁ……待ってえええーっ! シエンヌちゃぁぁぁーんっ、ルーヴちゃぁぁぁーんっ、月ちゃぁぁぁーんっ……はぁ……はぁ……」

 必死に自転車を漕ぎ続ける愛流華奈の背中を、夜空に浮かぶ本物の満月が優しく照らし続けるのだった。



「わあああっ! あ、アテュちゃんっ! どうして君がこんな物置部屋になんて隠れているんだよおおおっ!」

 魔人ラヴァーズの屋敷の物置部屋で、清陀は気を失った青峰貴梨花を抱きかかえたまま、剣を片手にしたアテュと対峙していた。


「お前、うるさいぞ! 我は、恋の獲物を奪う魔人ラヴァーズを懲らしめるため、トートの『恋人』のカードの中まで追って来たのだ! しかし、その前に今お前が抱きしめているそのメスを斬り殺すほうが先だよな!」

 アテュは、青峰貴梨花の背中を突き刺そうと剣の切先を貴梨花の背中に目がけて突き付けた。


「うわあ! 青峰さんを剣で突き刺すなんてさせるものかあああっ!」

 清陀はクルッと身体の向きを回転させ、抱きしめる貴梨花を反対側に回し、自らの背中をアテュの剣に晒すのだった。


「ちょ、ちょっと待て! ば、バカか、お前? 自分から剣に向かって背中を晒すなんて何考えてるんだお前は!」

 アテュは慌てて清陀の身体を掴み、グルッと回転させた。貴梨花の背中がふたたび剣の先に晒される。


「うむ。これでいい。今度こそ、このメスを刺し殺してやるっ!」

 アテュがふたたび手にした剣を貴梨花の背に向け突き立てようとすると、

「青峰さんを剣で突き刺すなんてさせるものかあああっ!」

と、清陀はまたもクルッと身体の向きを回転させ、自分の背中をアテュの剣へと晒すのだった。


「バッキャローっ! バカバカ! お前バカ! そんなに死にたいのか! もっと命を大切にしろ、バッキャローっ!」

 アテュは足で床をドンドン踏みつけながら、清陀に喚き散らした。


 その時、部屋の扉の向こうから、


「わあっ? この物置部屋で何かドンドン音がしてるよ? ね? アベル?」


「ホントだ。きっと物置部屋の床で足踏みしている音だよ? ね? カイン?」


と二人の少女が囁き合う声が聞こえてきたのだった。


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