ぷにぷに肉球超特急
「あうあうあーっ! アルカナちゃんってば、まるで魔法使いさんみたいな格好しているです! シエンヌも魔法使いさんの格好してみたいです!」
シエンヌは、真横を走る愛流華奈の一見地味に思えるも、よく考えれば不審者丸出しな、ひときわ目立つ赤いローブ姿を羨望の目で見つめた。
「はぁ……はぁ……シエンヌちゃんはそのメイドさんの格好がとても似合っているから、そのままがいいと思うわよ。私はアテュと戦うために魔術師としての正装をしてきただけよ……はぁ……はぁ……」
必死にペダルを漕ぐ愛流華奈が息を切らしながらシエンヌに応える。
「ホントですかー! シエンヌのメイドさん姿が似合ってるって言ってもらえてミラクル嬉しいですうううーっ!」
シエンヌがお尻の茶色い尻尾をブンブン振って喜ぶ。尻尾が上下に振られるたびに、メイド服のミニスカートが尻尾によって捲りあげられる。
「いやん! 嬉しすぎて、シエンヌのパンツが見えちゃいますー!」
シエンヌが慌てて捲り上がったミニスカートを押さえる。
「うふふ。シエンヌちゃんは可愛いわね……」
愛流華奈がシエンヌの姿を微笑ましく見つめる。
その時、
「ウオオオオォォォォーンンンッ!」
とルーヴの凄まじい雄叫びが聞こえた。
「アスファルトの上によおっ、あの教科書の匂いと同じ匂いを見つけたぜええっ!」
ルーヴが拳を振り上げてガッツポーズをして叫んだ。
「あは! あは! ルーヴよく見つけたよね! 偉い! 偉いよ! あは! あは!」
月ちゃんは空中に浮かぶ三日月の上に跨ったまま、いまだに妙なテンションのままだった。
「あ、ここは私と清陀さんとがバイバイした場所だわ……」
愛流華奈は自転車を停め、辺りを見まわしてみた。
アテュ達との戦いが終わって、星ちゃんが愚者ちゃんを治療して、そしてその後、すぐに私が清陀さんと別れた場所ね……ということは、このまま道路の上の清陀さんの匂いを辿って行けば、清陀さんの今いる場所が分かるはずだわ……
愛流華奈がそう思っていると、
「うきゃああああああぁぁぁぁぁぁッ!」
と突然シエンヌが色っぽい悲鳴を上げた。
「シエンヌのラブリーな愛しのお方の匂いですうううーっ!」
シエンヌは、なりふり構わず道路の上で四つん這いになると、
「くんくんくんくんくんくん!」
とアスファルトの上の清陀の残り香を無我夢中で嗅ぎまわるのだった。
「うひゃひゃああああああぁぁぁぁぁぁッ! シエンヌはこの匂いをすぐさま追跡LOVEトラッカーしますです!」
ボムッ、と音がするとシエンヌの両手と両足がピンクの肉球の付いた犬の手足に変化した。
「ぷにぷに! にくきゅう! 超特急うううっ! クウウウウーンンンッ!」
四つん這いのシエンヌはメイド服のミニスカートを捲りあげ、水色のパンツを露わにはだけさせながら、猛スピードで夜の道路を走り去って行った。




