カインとアベル
「う、うーん……」
清陀が目を覚ますと、なぜかベッドに寝かされているようだった。
「うわっ? ぼ、僕はなんでベッドなんかに寝ているの? こ、ここはどこっ?」
清陀が周囲を見回すと、広い天井には幾本ものロウソクの立てられたシャンデリアが吊り下げられ、壁には天使たちの描かれた絵が飾られていた。
ピンク色に壁やカーテンなどが統一されていて、どことなく上品な雰囲気の漂う空間だった。
室内にはソファやテーブルなどの家具も置かれていたが、どれもその脚の先がクルッと丸まっている猫脚で、全体的にロココ調を彷彿とさせる雰囲気の部屋だった。
清陀にとってみれば、何かの間違いで、どこかのお金持ちのお屋敷の寝室にでも自分が紛れ込んでしまったのかと思えるくらいだった。
「あ、あれ? 僕、なんでこんな格好しているんだ……? おかしいな、僕は高校の制服を着ていたはずなのに……」
清陀が自分の格好に目を向けると、その身は白いナイトガウンに包まれていた。
「い、今は朝なの? それとも夜なの?」
シャンデリアは部屋を薄明るく照らしていたので、室内の様子はまあまあ見通すことが出来ていた。しかし、窓はカーテンで覆われていて、外の様子が分からなかった。清陀が室内を見渡してみても時計らしいものがまったく置かれておらず、今が何時であるのかも分からない。
「うわ……外は真っ暗だあ……」
清陀が窓へと近寄って行き、そっとカーテンの隙間から外の様子を眺めてみると、窓の外には、漆黒の闇が広がっていた。
夜空には星ひとつ出ておらず、外の景色もまったく知ることができない程の闇がそこにはあるのだった。
「やあ! 意識が戻ったみたいだね」
「ほんとだ。意識が戻ったみたいだあ」
清陀が窓の外を見ていると、清陀の背後から二つの声が聞こえてきた。
「だ、誰だい……?」
背筋をビクッと震わせて、清陀が後ろを振り向くと、そこには二人の少女たちが裸で立っていた。
「私はカイン」
「私はアベル」
二人の少女が、それぞれに名前を名乗る。
カインと名乗る少女は褐色の肌をしており、ボブの髪にクリッとした瞳がとても印象的だった。
アベルと名乗る少女は色白の肌をしているが、やはりカインと同じようにボブの髪にクリッとした瞳をしていた。
二人とも、年齢はその印象からして、だいたい十二、三歳前後、と言ったところだろうか。




