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そして誰もいなくなった

「うおおっ? 魔人ラヴァーズめええ! 何をする気だあああっ!」

 アテュは、魔人ラヴァーズの身体から発せられるピンク色の光にその目を眩ませた。


「あああっ? 我のタロット・カードが勝手に飛び出していくぞ?」

 光にひるむアテュのゴスロリのドレスから一枚のタロット・カードが飛び出すと、カードが魔人ラヴァーズと清陀の元へと飛んでいった。


 魔人ラヴァーズの目の前でカードが空間上に大きく広がっていき、今や人間大の大きさにまで広がっていた。


 トート・タロットの6番、「The Lovers」のカードは、ピンク色の輝きを放ちながら夜の暗闇の中に浮かび上がっていた。


「ご主人様、さあ、参りましょう」

 魔人ラヴァーズが清陀の耳元でそう囁くと、二人の身体が空間上に浮かび上がるカードの中にスウウウ~ッ、と引き寄せられていった。


「うわあああっ! た、タロット・カードの中に、す、吸い込まれるよおおおっ!」

 清陀は強くその身を魔人ラヴァーズに抱きしめられたまま、ジタバタともがきながら、なんとか必死の抵抗を試みるも、魔人ラヴァーズを振りほどくことは出来なかった。


「わあああっ、助けてえええっ」

 清陀が、その背中を空間上のカードの中にめり込ませていく。


 清陀をカードの中に押し込むようにして魔人ラヴァーズがその後に続いた。


「待て! お前たち!」

 アテュが魔人ラヴァーズの背中の翼を掴み、引き戻そうとあがくも、その試みも虚しく、清陀と魔人ラヴァーズの二人は完全にカードの中に姿を消した。


「くそう! こうなれば我も後を追うぞ!」

 アテュは二人を追うようにして慌ててカードの中へと飛び込んだ。


 アテュがカードの中へとその姿を消すと、カードから発せられるピンク色の光がその輝きを薄れさせていき、カードがしだいに縮み始めていった。



「待ちなさいよ! 私も海野君の後を追わせて頂きますわ!」

 一人取り残された形となっていた青峰貴梨花は、空間上に今や僅かに人の頭程度の広がりを残すだけとなったカードに無理やりその頭を突っ込ませた。


「ぎゃあああ、頭を突っ込ませるだけで精一杯ですわあ……」

 貴梨花が無理にその頭を突っ込ませたことで、カードの縮小がストップした。


「わた、わた、私の頭が引っかかって、これ以上縮みたくても縮むことができないのかしら……」

 貴梨花は頭だけをカードの中にめり込ませ、首から下の胴体がカードの外側へと宙ぶらりんになった状態のまま、身動きが取れなくなっていた。


「抜け……抜け……抜けないですわあ! わた、わた、私の身体がカードに挟まれて、み、身動きすることも出来ず、わた、わた、私は一生をこのままカードに挟まれたまま過ごすことになるんだわあああっ!」

 貴梨花はその手足を必死でバタつかせながら泣き喚いた。


 貴梨花がもがき続けていると、突然、ズルンッ! とカードが強制的に貴梨花の身体を巻き込んだ。


「うぎゃーっ! か、カードに食べられますわあああ!」

 貴梨花は悲鳴をあげながら、首から下の胴体をカードの中に回収されていったのだった。


 貴梨花の身体がカードの中へと完全に姿を消すと、空間上に浮かび上がっていたカードは元々のタロット・カードのサイズへと戻り、ヒラリ、と道路上に舞い落ちた。


 薄明るい街灯が、アスファルトの上に置かれた一枚のタロット・カードを心細く照らし出すなか、人気ひとけの少ない路地裏をふたたび夜の闇が覆い始めるのだった。


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