恋の矢発射!
「アハハハ。なんでお前が恥ずかしがって目を覆っているんだよ? 目隠ししているのは魔人ラヴァーズの方なんだし、どうせラヴァーズにはお前の姿なんか見えないんだから、お前が恥ずかしがる必要なんてないじゃんさ!」
アテュは、清陀の顔を覆う手を掴み、無理やりその手をどかせると、
「よし、魔人ラヴァーズよ、コイツに恋の矢を放ち、このアテュ様にメロメロにさせてやれ!」
と魔人ラヴァーズに向かって叫んだ。
「御意にございます、アテュ様!」
魔人ラヴァーズはアテュにコクリ、と頷くと、腰の矢筒からピンク色の矢を取り出し、弓にその矢を番えた。
「わああっ! 弓矢で僕を殺す気だなあああっ!」
清陀は自分が殺されると思い、その身を恐怖に震わせた。
「バカ! お前、動くんじゃねえよ! ジタバタするな! ジッとしてろってば!」
アテュが清陀の両肩をガシッと掴み、その身を固定させる。
「うわあっ! 放せ! 放せえっ! 僕はまだ死にたくないんだよおおおっ!」
清陀がその身を悶えさせながら、泣き喚く。
「ウーン……ところでどうして私は目隠しなどさせられているのでございましょう……ね、狙いを定めようにも、これではどこにターゲットがいるのか分からないのですが……」
ギリギリッ、と弓を引き絞る魔人ラヴァーズの矢はアテュの方にその照準を定めていた。
「ま、魔人ラヴァーズ! ま、待て! わ、我に狙いを定めてどうする! お、おいっ! やめろ! やめろって!」
アテュはうろたえ、その身をフワッと急上昇させた。
ビュンッ! と勢いよく放たれた矢がアテュの足元をかすり、民家の塀に突き刺さった。
「うわあああ! 危ないなあっ! 僕の顔の真横に当たったじゃないか……」
清陀は、自身の真横でブロック塀にめり込んで突き刺さっている矢を恐怖の目で見た。
「こ、こんな危険な武器で僕を狙うなんてえ! お、お返しだあああっ!」
清陀は身に迫る生命の危機を感じて半ば興奮状態になっていた。自身を守ろうとする防衛本能に従うまま、ブロック塀に突き刺さった矢をおもむろに引き抜くと、そのまま魔人ラヴァーズに向けて投げ返した。
「きゃっ」
清陀の投げ返した矢が、魔人ラヴァーズの左胸に命中した。
その瞬間、魔人ラヴァーズの左胸から大きなハートマークが現われ、鮮やかなピンク色の輝きを放った。




