二度目まして、こんばんは
「うわあっ? だ、誰だあっ? こんな夜道に僕に話しかけてくるのはあああっ?」
突然の声に驚き、清陀が辺りを見まわすと、路地を寂しく照らし出す薄明るい街灯の下に一人の少女が佇んでいるのが見えた。
「やあ。二度目まして、こんばんは。アルカナのボーイフレンドだったよね、お前は?」
そこにはゴシック・ロリータの黒いドレスに身を包んだ赤いロングヘアの少女の姿があった。
とんがり帽子を頭に被った少女は、日傘を差したまま、地面に足を付けずに、すこしだけ宙に浮かび上がっていた。
「ア、アテュちゃん……?」
清陀は声をうわずらせて、忽然と姿を現した少女の名を呼んだ。
「ど、どうして急に君がこんな所に姿を現したんだい? ぼ、僕に何か用?」
「アハハハ。アルカナがお前のことを、『男』として見ているようだったからな……我の好敵手であるアルカナを出し抜くために、アルカナが好いている男にこの我が近づくのも悪くないだろう?」
アテュは清陀にそう言いながら、その紫眼をキラリと輝かせ、不敵な笑みを浮かべる。
「愛流華奈ちゃんが僕のことを『男』として見ているだって……?」
清陀は、不敵な笑みを浮かべるアテュに背筋をゾクゾクッと震わせながらも、
「ぼ、僕が男だっていうことくらい、愛流華奈ちゃんが分かって当然だろ? ぼ、僕はれっきとした男の子だよ? アテュちゃん、君は僕を女の子だと思っていたのかい……?」
と、アテュに向かって喚き出した。
「ギャハハハッ! こりゃ傑作だ! なんて鈍感な男なんだ、お前は!」
アテュは腹を抱えて笑い出した。
「『僕はれっきとした男の子だよー』だって! アハハハッ! こんな間抜けな男にアルカナがねえ……ギャハハハ! こりゃいい! こんな一本も二本も頭のネジが抜けたような男なら、この我ならモノにするのも造作もないことだ!」
アテュはそう言って清陀に向けて右手の手のひらを突き出した。
「うん? なんだい? 僕と握手するのかい?」
ポカン、と口を開け、笑い転げるアテュを眺めていた清陀はアテュが手のひらを差し出したのを見て、自分も右手を差し出そうとした。




