フツーの女の子とは、だいぶ違う
「あ、そうか。そう言えば、帰り道の分からない愛流華奈ちゃんを家の近くの大通りまで送ってあげるところだったんだっけ……なんだかいろんなハプニングがあったから、すっかり忘れていたよ……」
清陀は放心状態からすこし気を取り直して、愛流華奈に言った。
「……女の子が夜道を一人で帰るのは危険だからさ、やっぱり、あの大通りまで送っていくよ……」
「大丈夫ですよ、お気遣いなく。もし何かあったらカードの女の子たちに守ってもらいますから……お気持ちありがとうございます、清陀さん……」
愛流華奈はそう言って、清陀に軽くおじぎをすると、
「……明日も学校があるんですし、清陀さんの家はここから遠いんですから、清陀さんも早くお家に帰ったほうがいいですよ……」
と、清陀を優しげな瞳で見つめた。
「そ、そう? 本当に大丈夫かい……?」
清陀は、すこしガッカリとした表情を愛流華奈に見せた。
女の子を夜道に一人で帰らせるなんて、デリカシーが無い男になっちゃうって思って言ったんだけどなあ……
フツー、こういうシチュエーションでは、男が女の子を送り届けるのが定番かなって思ったんだけど……
僕が女の子に気が利かない男じゃない、っていうところを愛流華奈ちゃんに分かって欲しかったのになあ……
清陀は心の中でそう思いながら、
「分かったよ。気をつけてね。また明日ね、愛流華奈ちゃん……」
と笑顔で愛流華奈に手を振った。
「はい、清陀さんもお気をつけて」
愛流華奈も優しく微笑み、清陀に手を振るのだった。
◇
「やっぱり愛流華奈ちゃんは、フツーの女の子とはちょっと違う、いや、だいぶ違うんだよなあ……」
清陀はブツブツと独り言を漏らしながら、自宅への夜道を一人、足早に歩いていた。
「……タロット・カードから次から次に女の子を呼び出しちゃうから、なんだかそれが当たり前みたいに感じちゃうけど、よーく考えたら、そんなことが出来るのって、フツーじゃないよな……フツーの女の子じゃない愛流華奈ちゃんを夜道に一人で帰らせたこと、気にするのもバカバカしいか!」
清陀がそう独り呟きながら、自宅近くの人どおりの少ない路地に差し掛かった時、
「いや、フツーだぞ。少なくとも我とアルカナにとっては幼き時よりカードからの具現化など日常茶飯であったぞ……まあ、我はライスの上に紅茶をかける趣味はないがな……」
という声がどこからともなく聞こえてきた。




