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けしからん、逮捕だ!

「もう! 星ちゃん! 道の真ん中で、そのお兄さんに抱きついちゃだめよ! 離れて! 離れるのよ!」

 愛流華奈が大慌てで、星ちゃんを清陀から引き離そうとする。


「ヤダもン! ヤダもン! あたしはこのお兄たンから一生離れないン!」

 星ちゃんは、愛流華奈が引き離そうとすればするほど、より強く清陀にしがみつくのだった。


「まあ、なんだか騒がしいと思ったら、あんなところに素っ裸の女の子がいるわ!」


「ううむ、今どきの若い子はなんて大胆な……オレも若い時にあんな経験してみたかった……」


 あまりの騒がしさに、全裸姿の星ちゃんの存在が道行く人々の目に留まってしまう。


 その時だった。

 ピカッ、と猛烈なライトが星ちゃんと清陀を照らしたかと思うと、キキキィーッ、と自動車の急ブレーキを踏む音がふたたび聞こえ、蛇行しながら走ってきた新たな自動車が、今さっき民家の塀にぶつかった自動車の後部に衝突した。


「な、なんで全裸の女の子が道にいるんだ? 見とれてしまって運転どころじゃなかったぜ、畜生……」 

 運転席から飛び出して来た男がそう言いながら、星ちゃんの前で膝を落とした。


「こらーっ! 公衆の面前で全裸になるとはどういうつもりだーっ! けしからんっ! 逮捕だーっ! 貴様を逮捕するーっ!」

 道の向こうから制服を着た二人の警察官が、お互いに向かい合ってワルツのステップを踏みながら、星ちゃんの方へと近づいて来た。


「もう! 星ちゃん! あなたのせいで滅茶苦茶よーっ!」

 愛流華奈は顔を真っ赤にして、星ちゃんに怒ると、

「せっかく愚者ちゃんを助けてくれたから大目に見てあげていたんだけど、こうなったら、星ちゃんを強制的にカードに戻すわ! 星ちゃんの具現化を解きたまえ! 星ちゃん、カードの中に戻るのよ!」

と、『星』のカードを星ちゃんに向けて突き出した。


「うわぁン、このお兄たンから離れたくないのにン……」

 ボムッ、という音をたて星ちゃんが黄色い煙にその姿を変えると、スウウウ~ッ、と愛流華奈の手の中の『星』のカードに吸い込まれていった。


「ははは。星ちゃんを今度呼び出す時には、星ちゃんに似合う洋服を用意しておいてあげないとだね……」

 清陀はまるでユデダコのように顔を真っ赤にしたまま、放心状態で言うのだった。

「……星ちゃんの肌の温もり……フカフカのお布団みたいだったなあ……」


「むう……そうやってすぐに鼻の下をびろびろに伸ばすんだから……」

 愛流華奈は不機嫌に唇を尖らせると、

「……清陀さん、夜もすっかり遅くなってしまっていますし、私を送ってくださるのはもう大丈夫です。私、なんとか一人で帰りますから……」

と、清陀に言うのだった。


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