死の舞踏
「ごめんねアルカナちゃん! ひっさしぶりに私を呼んでくれたでしょ? ひっさしぶり過ぎてトランペットがなかなか音が出なくてさあ! 困っちゃったあ!」
トランペットを手にしてそう微笑む少女は、ボブの金髪に切れ長の目、水色の衣を身に纏った十代半ばくらいの少女で、その背中には大きな翼が生えていた。
少女の手にするトランペットには、白字に赤の十字の描かれている旗が付いている。
「それでは私、審判ちゃんこと、大天使ガブリエルの演奏によります、骸骨ダンスをご堪能ください!」
審判ちゃんは愛流華奈にそう言ってウインクすると、トランペットを魔人デスに向け、高らかにトランペットを吹き始めた。
「♪ プッププププッププップップー、プッププププッププップップー♪」
審判ちゃんの吹くトランペットの音色が魔人デスの身体を包み込んでいく。
「ありゃ? こりゃ? 一体、どういうことでやんすか? あっしの身体が勝手に動いてしまうでやんすよ?」
魔人デスは大鎌を片手にいきなり踊り始めた。
「ありゃ! こりゃ! そりゃ! あらよっと!」
魔人デスが大鎌をブルンブルンと振るいながらクネクネと身体をくねらせる。大鎌を一振りするごとに、その刃から泡が生まれ、泡が飛び跳ねだしたと思うと、次々に魚へとその姿を変えていく。泡から生まれた何匹もの魚が魔人デスのまわりを飛び跳ねる。
「こ、これは『死の舞踏』でやんすよ! し、死と再生のダンスでやんすが、今回死ぬのは一体誰でやんすか?」
魔人デスがその額に冷や汗を垂らしながら喚く。
「あっははは。それは魔人デス、お前だよ。『最後の審判』を告知する、この審判ちゃんこと、大天使ガブリエル様がお前に『死』の訪れと、新たな『再生』を告知するのさ!」
そう言って審判ちゃんはニヤリと口角を上げて笑った。
「ぐわああああー。あっしの身体がバラバラに砕けていくでやんすーっ!」
ガラガラガラッ、と音をたてながら、骸骨そのものの姿をした魔人デスの全身の骨が砕けていく。
「このあっしが、まさかお陀仏するとは思いもよらなかったでやんすーうううっ!」
魔人デスは、今やシャレコウベの頭蓋骨だけの姿に変わり果てていた。
ゴロンゴロン、と頭蓋骨が道路上を転がり、空間上に口を開けたままになっていた暗闇の中にスウウウ~ッと吸い込まれていった。
「な、何ということだ! 我の可愛い魔人フールに、それに魔人デスまでも、アルカナごときの具現化魔術にこうもあっさりとやられてしまうとは!」
アテュは、フワフワとその身を宙に浮かせたまま、驚愕の目で愛流華奈を見た。




