女とイチャつくとは許せねえ!
「うふふ。ボク、大丈夫?」
清陀がアスファルトに直撃する直前、清陀の身体が女性の両手で優しく抱きとめられた。
「私は力ちゃんって言うのよ。ボク、危なかったわね。お尻が地面にぶつかったら、痛い痛いしちゃうもんね……」
そう言って清陀に優しく微笑む女性は、白い衣を身に纏った金髪で丸い瞳の十代半ばくらいの女性で、その頭の上には「無限」を表すレミニスカートという「∞」の記号が浮かんでいる。
「わあ、僕を受け止めてくれてありがとう……」
清陀は力ちゃんの母性的な微笑みに思わず頬を赤らめた。
「ムハハハッ。このガキ、見せつけてくれやがるなあ! この魔人フール様の目の前で女とイチャつくとは許せねえ! その女ともども叩きのめしてやらあ!」
魔人フールが両手を大きく広げ、鼻息を荒げながら、清陀目がけて突進する。
「まあ、そんなに荒っぽいご気性じゃご婦人に相手にされないわよ」
力ちゃんが魔人フールに優しげに微笑むと、両手で魔人フールの頭と顎を押さえ、
「よーし、よし、よし」
と、まるで動物園の飼育員が猛獣を手なづけるかのように、魔人フールを手なづけるのだった。
「クウーン、クウーン……」
魔人フールは、犬のように甘えた呻き声をあげながら、両手足を折り曲げ、腹を見せて、あおむけになった。
「あはは、トートの愚者がまるでペットの仔犬みたいになっちゃった!」
清陀は魔人フールの情けない姿に吹き出した。
一方、愛流華奈は、魔人デスの振るう大鎌の刃を、その剣で必死に受け止め続けていた。
「へへへ! しぶといでやんすね! いっそ、ひと思いに切り刻まれてくれりゃあ、あっしの稼業もグンと楽になるでやんすのに! あっしも気が短けえ性分でやんすから、これ以上面倒をかけねえでおくんなせえ!」
魔人デスがイライラを募らせ、大鎌を振るう勢いを増した。
その瞬間、ガキン! という鋭い音とともに、愛流華奈の剣が弧を描きながら空中を舞った。
「きゃあ! 私の剣が!」
愛流華奈が飛ぶ剣を見て悲鳴を上げた。
「へへへ! これでようやく、あの世へ、おめえさんをお連れできるというものでやんすね!」
魔人デスが愛流華奈目がけ大鎌の刃を振り下ろす。
「きゃあああ!」
愛流華奈が自らを襲う刃に叫び声をあげたその時、
「♪ プックプクプックプックプックプックプクプー♪」
と、突然、トランペットの音色が響き渡った。
「審判ちゃん!」
愛流華奈が叫んだ。




