「7番 THE CHARIOT 『戦車』」、「8番 STRENGTH 『力』」、「20番 JUDGEMENT 『審判』」
「もう! こうなったらトート・タロットの魔人たちには、ウェイト版大アルカナからの女の子たちの具現化で対抗よ!」
愛流華奈は魔人デスの大鎌を必死に躱しながら、バッ、と空中に数枚のタロット・カードを放り投げた。
「7番、THE CHARIOT.『戦車』のカードから具現化せよ、戦車ちゃん!」
「8番、STRENGTH.『力』のカードから具現化せよ、力ちゃん!」
「20番、JUDGEMENT.『審判』のカードから具現化せよ、審判ちゃん!」
愛流華奈がたて続けに叫んだ。
空中を舞うそれぞれのタロット・カードがボムッ! という音をたてると、『戦車』のカードと『力』のカードからは黄色い煙が、『審判』のカードからは水色の煙がたちこめ、それぞれに人の形を作っていく。
「うむ、オレが来たからにはこの戦いは必ず勝利する! 前進あるのみだ!」
『戦車』のカードから出た黄色い煙は、黄金の冠を頭に被り、甲冑に身を包んだ少女に姿を変えた。
十代半ばくらいで、セミロングの髪に鋭い切れ長の目をしており、精悍な顔つきをしている。少女は右手に細長い棒を持って、二輪の車輪の付いた台座に乗っていて、台座の前には白と黒の二頭のスフィンクスが並んでいる。この二頭のスフィンクスによって戦車が牽引される構造だ。
「戦車ちゃん! トートの愚者をやっつけて!」
愛流華奈が『戦車』のカードから出て来た少女に叫ぶ。
「よし! 突撃だっ! 行くぞ! ノワール! ブランシュ!」
戦車ちゃんはそう叫ぶと、右手に持った棒で黒と白のスフィンクスの尻をそれぞれに叩いた。
「うぎゃああ! 戦車ちゃん痛いってば! 痛いってばさあ!」
ブランシュと呼ばれた白いスフィンクスが前足を仰け反らせて跳び上がる。
「しかたなねえなあ! いっちょ、ぶっ放してやりますか!」
ノワールと呼ばれた黒いスフィンクスが前足で地面を掻き出し、
「全速前進! ワオーン!」
と唸り、一目散に駈け出した。
「うわわわ、ノワールが行くならワタシも行かないとだーっ! ……ってか、ワオーン、ってなにさ、ワオーンって! どこかの犬型ロボットの発進じゃないんだから!」
ブランシュも慌てて走り出す。
「うおおおおおーっ!」
戦車ちゃんは、ノワールとブランシュに引きずられるようにして、台座ごと魔人フールに突進し、激突した。
「ぐわああああ!」
魔人フールが戦車ちゃんの直撃を受け、その体勢を大きく崩した。
「わあああー」
そのはずみで清陀は魔人フールの手から投げ出され、道路のアスファルト目がけ落下していく。




