女剣士アルカナ
「うわあ! 愛流華奈ちゃん、危ないっ!」
清陀は、アテュに襲われる愛流華奈を助けようと、前へと躍り出た。
「わああ? アルカナちゃんが剣で襲われてるううう?」
清陀が激しくその身を動かした振動で、清陀の背中の愚者ちゃんが目を覚ました。
「アルカナちゃんを助けなきゃーっ!」
愚者ちゃんはフワリ、とその身体を浮き上がらせ、清陀の背中から離れた。
「ムハハハッ。愚者は愚者同士で戦わないとな! ウェイト版『愚者』の相手は、この魔人フール様だ!」
宙を浮かぶ愚者ちゃんの背中をムンズッ、と魔人フールが鷲掴みにする。
「わあああっ! 放せえーっ! 放せったらあーっ!」
バタバタッと手足を振りながら愚者ちゃんが魔人フールの手の中で暴れる。
「あ、愛流華奈ちゃん……?」
前へと躍り出た清陀の目に異様な光景が映し出された。
制服姿の愛流華奈がワイシャツの下に隠していた六芒星のペンダントを手に握り、
「ソードのナイトよ、我が身において具現化せよ!」
と叫ぶ。
その瞬間、ペンダントから一枚のタロット・カードの映像が現われた。
鎧を身に纏った騎士が剣を片手に白馬に跨り疾走しているカードである。カードのヴィジョンが愛流華奈の全身を包み込む。
その瞬間、愛流華奈の着ていた紺のブレザーの制服が、みるみるうちにブルーのビスチェ、ブルーのプリーツスカートという姿に変化した。ツバの広がった羽根付きのブルーの帽子を被り、ブルーのマントを背に羽織り、腰には剣を差している。
「ハッ!」
瞬時に抜刀した愛流華奈が、その剣身でアテュの剣を受け止める。
「うわっ? 愛流華奈ちゃんが変身したっ?」
清陀は、まるで女剣士のような姿に変化した愛流華奈を驚愕の目で見つめた。
「剣の騎士をお前自身の身において具現化させたか!」
アテュが愛流華奈を鋭く睨みつける。
「アルカナ、お前みたいな学問一辺倒な、知識だけの優等生が魔法剣士を具現化したところで、我に敵うわけがない!」
カキン、カキンと鋭く刃と刃がぶつかり合う音を響かせながら、愛流華奈とアテュとの間で激しい剣戟が繰り広げられる。
「アテュ! 私だって、本当はあなたなんかと戦いたくないのよ……いい加減に目を覚ましたらどうなの!」
愛流華奈がその瞳に哀しげな色を浮かばせる。




