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放課後の愛流華奈

 放課後。


 清陀は下校するため、教室を出ようとすると、愛流華奈が自分の席に座ったまま、手に持った一枚のタロット・カードをしげしげと眺め、固まっていることに気づいた。


「あれ? 愛流華奈ちゃん、帰らないの?」

 清陀が愛流華奈に声をかける。


 その瞬間、ビクッ、と身体を仰け反らせ、愛流華奈は急いでカードを制服の内ポケットの中にしまいこんだ。


「あ、いえ、帰りますよ……もちろん、帰るんですけどね……」

 愛流華奈が取り繕ったような作り笑いをして清陀を見る。


「そう? よかったら一緒に帰らないかい?」

 清陀が愛流華奈にそう笑いかけた、その時、ボムッ! という音が鳴り、愛流華奈の制服の内ポケットから黄色い煙がたちこめた。


 清陀の目の前で、黄色い煙が人の形を作っていく。


「ふぁ~あ。まだまだ眠りたりないなあ……朝からまだ半日しか眠っていないよお……」

 紺色の生地に黄色い花柄が描かれたワンピースを着た少女が、あくびをしながら清陀の目の前に姿を現した。右肩に荷物のくくりつけられた棒を背負い、左手に一輪の花を持っている。


「わあ! 愚者ちゃんじゃないかあ! どうしてまたカードから出て来たんだい?」

 清陀が突然に姿を現した愚者ちゃんに驚く。


「セイダーっ! おはようーっ! アルカナちゃんが困ってるみたいだから、アタシまた出て来たんだよおっ!」

 愚者ちゃんは清陀にそう言うと、ベロベロッと清陀の頬を舐めまわした。


「うわああ、愚者ちゃん! 僕の顔を舐めまわすのが、まるで愚者ちゃんの挨拶みたいになっちゃっているじゃんかああっ!」

 清陀が腕をバタつかせながら、その身を悶えさせる。


 ボムッ! と音がすると、愚者ちゃんの着ているワンピースが、女子の制服姿に変化した。


「やっぱりアタシも、セイダとアルカナちゃんと同じガッコーのクラスメイトになりたいなあっ!」

 愚者ちゃんは紺色のブレザーに胸に赤いリボンを付け、赤いチェックの入ったスカートという姿で嬉しそうにはしゃぎまわる。


「実は私……家までの帰り道が分からないんです……転校初日で、朝は愚者ちゃんに空を飛んで連れて来てもらったし……だから、帰りもまた愚者ちゃんに空を飛んで家まで送ってもらおうかと思っていたんです……」

 愛流華奈は恥ずかしそうに下を向いて、そう言うのだった。


「なんだあ、そうだったのかあ! だったら、なおさら、僕と一緒に帰ろう。愛流華奈ちゃんの家って、道で占いをやっていた、あの大通りの近くなのかい? あの大通りまでなら僕が案内してあげるよ」

 清陀は笑って愛流華奈に言った。


「はい、占いをやっていたあの大通りまで行かれれば、そこからの道は分かるんですが……」

 愛流華奈も微笑み、清陀に言うのだった。

「……では、すみませんが清陀さんのお言葉に甘えさせていただきますね。一緒に帰りましょう。清陀さん、どうか道案内よろしくお願いします……」


「わぁい! セイダと一緒! 一緒に帰るうううっ!」

 愚者ちゃんは制服姿のまま跳び上がってはしゃいだ。


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