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占い師としては、まだまだだわ

「ええーっ! なんでだよおっ! 愛流華奈ちゃんの占いが凄く当たるってことを、僕はよーく知っているけどさ、クラスの皆はまだ知らないんだよ?」

 隣の席で清陀が残念そうな顔をして嘆く。


「ごめんなさい、清陀さん。私のタロット占いは、私と清陀さんの二人だけの秘密にしましょう。ね? 清陀さん?」

 愛流華奈は清陀をなだめるようにそう言って、笑った。


「なんだよ。つまんないの。愛流華奈ちゃんのタロット占いの凄さを皆の前でガツーンと見せてあげたらさ、あまりのもの凄さにクラス委員長だってきっとビックリして言葉を失うと思ったのになあ……」

 清陀はそう言いながら、しぶしぶと倫理の教科書を開くのだった。


「ふん! どうせ占いなんて、全部インチキよ。この科学時代に占いなんていう迷信を信じるなんて馬鹿げているわよ……」

 後ろの席から青峰貴梨花の意地悪い声が聞こえてくる。


「……海野君も退学処分になりたくなかったら、転校生の愛流華奈さんに占いなんかさせないことね! 予言めいた占いで生徒を惑わすなんて言語道断! 愛流華奈さんに占いをしろとそそのかす海野君の退学処分を校長に直談判したってよろしくってよ?」

 そう言って貴梨花は、その切れ長の瞳を光らせながら清陀を睨んだ。


「わああ、やっぱり僕は青峰さんは苦手だなあ。きっと僕のこと大嫌いで、学校から追い出したいんだろうなあ……ねえ、青峰さんはホント酷いと思わないかい、愛流華奈ちゃん?」

 清陀が同意を求めるような目で愛流華奈を見る。


「うふふ。私は、貴梨花さんはとても純粋で、真っ直ぐな心を持った、いい人だと思いますよ」

 愛流華奈はそう言って清陀に微笑み返すのだった。


「青峰さんの一体どこが純粋だって言うのさ? 愛流華奈ちゃんはぜんぜん分かってないなあ……青峰さんは僕のこと全否定する超意地悪委員長だよ……」

 清陀は唇を尖らせ、ふてくされた顔で言う。


「はいはい、雑談はそこまで! じゃあ倫理の教科書を開いて……」

 教壇の杏奈先生がパンパンと手を叩く。


「あ、そうそう、上井戸さんは転校したばかりで教科書が無いかしら? じゃあ、隣の海野君に見せてもらってね……」

 杏奈先生はそう言って愛流華奈に微笑んだ。


「愛流華奈ちゃん、僕の教科書一緒に見ようよ」

 清陀が愛流華奈の席に自分の机を近づけ、愛流華奈の目の前で倫理の教科書を開いた。


「ありがとう、清陀さん」

 愛流華奈は清陀に礼を言うも、その心は上の空になっていた。

 

 私も占い師としては、まだまだだわ……


 愛流華奈は心の中で自分自身を責めていた。


 自分が軽い気持ちで占いをしたばっかりに、貴梨花さんを自殺寸前にまで追い詰めることになってしまった……


 その自責の念が、愛流華奈の心を強く締め付けたのだった。



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