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0番 THE FOOL 「愚者」

「0番、THE FOOLフール.『愚者ぐしゃ』のカード、ですね……」

 少女はカードをめくるとボソッと告げた。


 そのカードには一人の少年が崖の上で大空を見上げている絵が描かれていた。


 少年は紺色の生地に黄色の花柄の入った、まるでワンピースのような服を着ている。そして、先端に荷物をくくりつけた棒を右肩で背負い、左手には一輪の花を手にしていた。

 その少年の足元のすぐそこには崖が迫っているのに、少年は空を見上げて足元には目を向けていないように見える。

 少年の後ろでは一匹の白い犬が前足を上げ、少年に向かって吠えているかのように顔を上げているのが描かれている。


「ぐしゃ?」

 清陀は自分の引いたカードをまじまじと見つめると、少女の顔に目を向け、訊ねた。

「どういうカードなの、これ?」


「はい。あなたが今、いちばん望んでいることをカードで観させていただきました。愚者のカードが出ましたので、そうですね、あなたが今、心から望んでいることは……」

とそこまで言いかけて、少女は沈黙した。


「な、なんだよ。教えてくれってば!」

 清陀は沈黙にすこし苛々して少女を急かした。


「……自由、ですね」

 少女が清陀の目を見つめ、ボソッと言った。

「愚者のカードには、自由、そして子供のような無邪気さ、などの意味があります。私の観たところ、あなたが望んでいるのは、自由です。それも子供のような無邪気さが伴う自由……」


「なんだあ。タロットなんて、そんな程度かあ」

 清陀は少女をバカにするような口調で言った。


「たしかに僕の望んでいることは自由さ。だけどね、一言で自由、と言ったって、自由にもいろいろあるだろ? まあ、僕はそうだなあ、あまりにも運が悪いし、毎日も憂鬱なんで、自由を望むと言ってもさ、そんな子供みたいな自由じゃなくって、なんかこうもっと高校生らしく将来やこれからの人生を考えた上での自由が欲しいかなあ。まあ、漠然としちゃうんだけどさ。どっちにしろ、君の占いなんかではどうにも出来ないことさ。でもさ、しいて言えば、とりあえず自由に大空でも飛び回ってみたいかな。そんな歌があるだろ? 私に翼を付けて自由に空を飛ばせてください、みたいな歌がさ。そんなこと現実には無理だろうけどね……」

 そう言って清陀は苦笑いした。


「分かりました。あなたを自由にして差し上げます……」

 少女はまたも清陀の目を見つめ、ボソッと言った。


「へ? 君に一体何が出来るって言うのさ?」

 清陀は、きょとん、として少女を見た。


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