吊るされた女ちゃん、避けて!
「わーっ、鎌が回りながら襲って来るぞーっ!」
「キャーッ! うまくジャンプして飛び越えるのよーっ!」
クラスメイトたちが次々に飛び跳ねながら、大鎌を必死で避けていくなか、回転する大鎌が、吊るされた女ちゃんの、逆さ吊りになっているその頭部に迫っていった。
「つ、吊るされた女ちゃん! 危ないっ!」
清陀が必死に叫ぶ。
「きゃあ! 吊るされた女ちゃん! 避けて! 避けるのよーっ!」
愛流華奈も必死になって叫ぶのだった。
「バカ言わないでよ、アルカナちゃん……逆さ吊りで片足を縛られているこのボクが、あの大鎌を避けられる筈ないじゃない!」
吊るされた女ちゃんはそう言ってニヤッと笑みを浮かべると、飛んで来た大鎌にガブッ、とその口で噛みついた。
「うわあ、吊るされた女ちゃんが大鎌を口で受け止めた! す、すごいよ、吊るされた女ちゃん!」
清陀が驚きの声をあげる。
「……っていうか、吊るされた女ちゃんはボクっ娘なんだね! なんだかボーイッシュな感じで、やることもとっても大胆だなあ!」
「ふごごっ……物事はすべて忍耐あるのみさ……忍耐さえあれば必ず奇跡は起きるんだ……ふごふごっ……」
吊るされた女ちゃんは大鎌を口に挟んだままでそう言うと、
「ペッ」
と大鎌を吐きだした。
大鎌は、ガシャン、とそのまま床に落っこちた。
「……ふう。まったく、死神ちゃんのおイタが過ぎるせいで、せっかくの占いが台無しじゃないか。まだ『現在』のカードの意味の説明も終わっていないというのにさ……」
吊るされた女ちゃんが呆れ顔でそう言うと、
「ぜひぜひ、私と海野君の『現在』の様子を教えてください!」
と、青峰貴梨花がすり寄って来た。
「ああ、もちろんだよ、教えるよ。二人の『現在』はね、ボクのこの姿を見れば分かると思うけど、ご覧のとおり、宙吊りさ……」
吊るされた女ちゃんが貴梨花に向かって、苦笑しながら言う。
「キミは好きな男の子をデートにも誘えず、告白もできず、片想いの恋が宙ぶらりんになったまんま。でも、いつかは必ずチャンスが来ると、心の奥底では希望を捨てていない、と言ったところかな……
相手の男の子はと言うと、キミから受ける執拗な誹謗中傷に辟易して、身動きも取れなくなっていると言った感じだね。でも、孤立無援で八方ふさがりだと思っていたところに救世主が現れて、彼にも希望が見えてきたみたいだね……」




