「12番 THE HANGED MAN 『吊るされた男』」、「13番 DEATH 『死神』」
「12番、THE HANGED MAN.『吊るされた男』のカードから出て来た、吊るされた女ちゃんです。カードの絵は男性なのに、なぜか私の具現化魔術では女の子の姿になってしまうんです……」
愛流華奈は、『現在』の位置のカードから出て来た、逆さ吊りの少女を手で指し示して説明すると、続いて『未来』の位置のカードから出て来た、黒い甲冑に身を包み、大鎌を手に持った少女を指し示した。
「13番、DEATH.『死神』のカードから出て来た、死神ちゃんです。ウエイト版のタロットでは『死神』は本来は神秘の薔薇が描かれた旗を手にしているんですが、私の具現化魔術で出て来た死神ちゃんは、なぜか旗ではなく大鎌を持っているんですよね……これだと、まるでマルセイユ版のタロットや、トート・タロットで描かれているような『死神』と同じになってしまうんですけどね……」
愛流華奈は、死神ちゃんが持つ大鎌を指し示しながら、そう言って苦笑いをするのだった。
「キャハハハ! だってさ、旗なんか持っていたって、死神っぽくないじゃんか! やっぱりー、死神は大鎌を持っていないと、らしくないじゃんねーっ!」
そう言いながら、死神ちゃんが手に持つ大鎌をブルン、ブルン、と振り回した。
「うわあっ! 死神ちゃん、危ないよーっ! これ、人に当たったら死んじゃうって!」
清陀が、大鎌を必死に避けながら死神ちゃんに注意する。
「わああ! 危ねえ! 危ねえ!」
「きゃあーっ! 怖い怖い! 当たれば死ぬわよーっ!」
周囲のクラスメイトたちが死神ちゃんの振り回す大鎌から必死でその身を引き離そうと逃げまどうなか、
「お願いですわ……死神ちゃんさん、私と海野君との恋の未来はどうなるの……教えて……教えて……」
と、頭を低く下げながら上手く大鎌をかわしつつ、青峰貴梨花は死神ちゃんに抱きつくように纏わりついた。
「ギャーッ! ワタシに纏わりつくなよーっ! 鬱陶しいなーっ! お前ウザイから、あの世になんか連れてってやんないよー」
死神ちゃんはそう言って悶えると、思わず大鎌からその手を放してしまったのだった。
ギュルギュルギュルッ、と音をたてながら、大鎌が教室の床を回転しながら飛び回る。
ガン! ゴン! と机の脚にぶつかっては跳ね返りながら大鎌がクラスメイトたちの足元に迫り行く。




