見方を変えればポジティブさ
「あたいはさ、青髪のお姉ちゃんと、その相手の鈍感ボーイと、どっちの味方ってわけじゃないんだけどさ、まあ、皆が皆、『塔』のカードを不吉なカードだ、最悪なカードだ、って思い込んでいるのにも納得いかないんだわ……この青髪のお姉ちゃんみたいに『塔』で運命感じる奴もいるわけだしさ……」
塔ちゃんは、泣き崩れる貴梨花と、その前で呆然と立ちつくしている清陀の姿を見て、しみじみとした口調で言った。
「……オメエさあ、青髪のお姉ちゃんとはじめて出会って、あまりの意地悪さに、自分の存在が否定されたように思ったって言ったろ? でもさ、それってそんなにネガティブに思うことか? 今までのくだらない自分自身を破壊して崩壊させて生まれ変わらせてくれる、まさに運命変えてくれる出会いだって、どうしてそうポジティブに思えないわけ?」
塔ちゃんが清陀に向かって責めるように言う。
「はああっ? 意地悪くされてポジティブに思えって、ぼ、僕はそんなにマゾじゃないよ!」
清陀が、塔ちゃんの言葉に納得いかない様子で言い返す。
「鈍感ボーイは分かっちゃいないなあ……要は気の持ちようさ! とにかくよ、『塔』のカードのことも、青髪のお姉ちゃんのことも、表面だけの見た目でネガティブに思わないでさ、その本質を見極めろってことさ! 一見、ネガティブに見えることも、見方を変えればポジティブな面が見えるってことだよ!」
塔ちゃんが清陀を諌めるように言うのだった。
「たしかに……『塔』のカードは落雷で塔が焼け落ち崩壊しようとしているそのショッキングな絵柄から、まるで、おみくじの『大凶』のように忌み嫌われる傾向もありますが、カードが意味する破壊や崩壊のような出来事は、それをネガティブに受け取るか、ポジティブに受け取るかは、占われた側の気持ちしだいですからね……」
塔ちゃんの言葉を頷きながら聞いていた愛流華奈が、塔ちゃんの言葉を後押しするかのように言った。
「ええーっ? 愛流華奈ちゃん、君は、僕と塔ちゃんと、一体どっちの味方なんだい? 塔ちゃんの言う通りにしたら、僕はクラス委員長とお付き合いしなきゃいけなくなっちゃうじゃないか……」
清陀が、愛流華奈の言葉に動揺する。
「むう……私は占い師としての見解を述べただけですよ、清陀さん……」
愛流華奈は清陀に不機嫌に唇を尖らせてそう言うと、
「……私だって、清陀さんと貴梨花さんがお付き合いすることになったとしたら、それこそ『塔』のカードのように崩壊してしまいそうよ……」
と、か細い声で付け足したのだった。




