うわあ、なんてセクシーなんだあ
「き、きゃああああっ! タ、タロット・カードから、お、女の子が! 女の子が飛び出して来たわあっ!」
その時、突然、杏奈先生が悲鳴をあげたかと思うと、
「わ、私はやっぱり疲れているのよ! げ、幻覚を同じ日に二回も見るなんてえええ!」
と言いながら、バタン、とそのまま後ろ向きに倒れ込んだ。
「杏奈先生がまた倒れちゃったぞーっ!」
「保健委員ーっ! 保健委員ーっ!」
他の生徒たちが慌てるなか、一日に二度ともなると、さすがに保健委員も慣れたもので、杏奈先生の二回目の保健室への搬送は速やかに行なわれたのだった。
「杏奈先生!」
愛流華奈は突然、席を立ちあがると、教室の外へと運び出されようとする杏奈先生を追いかけようとした。
「全部、私のせいよ! 杏奈先生が二度も倒れるなんて! 私が……私が、むやみにタロットで占ったりなんてしたから……」
「待ちなさいよ……」
青峰貴梨花は唐突に起き上がると、教室の外へ出ようとする愛流華奈の腕を掴んだ。
「あなた、逃げる気なの? この私をここまで動揺させて、追い詰めておきながら、占いの途中で逃げるなんて許さなくてよ! ちゃんと最後まで占いを続けなさいよ! まだ最後まで説明を全部聞き終わっていないわよ!」
「そうだよ、アルカナ! これでも、あたいはこの子に同情してんだぜ! 運命感じた男と出会った瞬間に終わっちまっているような関係ってさ、女心にゃエライ打撃なんだぜ?」
塔ちゃんは貴梨花を不憫な目で見つめると、
「それによ、コイツもコイツだぜ! オメエもよ、女を表面だけの振る舞いで見んなっての!」
と清陀を見て言った。
「な、なんだよ! なんで僕が関係あるのさ! それに塔ちゃんはなんで黒いビキニ姿なのさ? もう冬になるんだよ? そんな水着姿で寒くないのかい?」
清陀が塔ちゃんに向かって言い返した。
「へっへっへっ! あたいのダイナマイトバディがより魅力的に見えるだろ、このビキニだとさ。まさに『塔』のカードの意味通り、『衝撃』を感じるだろ?」
塔ちゃんは両腕を頭の上で組むと、すこし身体を横にひねりながら、背伸びをするようなポーズをして、胸の大きさと、腰のくびれを強調して見せた。たしかに出るべきところは出て、へっこむべきところは、へっこんでいる、理想的な体型ではあった。
「うわあ、なんてセクシーなんだあ……」
清陀は塔ちゃんのセクシーポーズに口を開けたまま見とれていた。
「ちょっと清陀さん! なに見とれているんですか!」
「ちょっと海野君! なに見とれているわけ!」
愛流華奈と青峰貴梨花がほぼ同時に、塔ちゃんを見て鼻の下を伸ばしている清陀にツッコミを入れた。




