運命の恋の衝撃?
「な、なんだか不吉な感じがするカードね……た、建物が雷で燃えて、ひ、人も落っこちているわ……」
青峰貴梨花が『塔』のカードを見て、ワナワナとその身体を震わせて怯えた様子で言う。
「私が買ったタロットの本では、たしか『塔』のカードには破壊とか崩壊とか、衝撃とか事故とかアクシデントとか、そんなような意味ばっかり書いてあったような気がするわ……」
杏奈先生は身を乗り出して、愛流華奈の手の中の『塔』のカードを覗きこんだ。
「ええ、そうですね。杏奈先生の仰るとおりです。『塔』のカードにはそのようなネガティブな意味合いが強いですね……」
愛流華奈が杏奈先生の言葉に頷きながら言う。
「私の観たところ、このお相手の男性は貴梨花さんと初めてお会いした時、貴梨花さんのことをその第一印象からして、相当ショッキングに感じたはずです。まるで今までの自分の存在が破壊されて崩壊させられてしまうかとも思えるくらいに、インパクトの強い出会いだったことがうかがえますね……」
「ああ、僕、それ分かるなあ! 僕も入学してこのクラスで青峰さんと一緒になった時、青峰さんがあまりにも意地悪く僕のことを責めるからさ、僕の存在そのものが否定されたかのように感じられて、何日も落ち込んだよ……」
清陀は、愛流華奈の説明にウンウンと頷きながらそう言うも、言い終えた後で、「ハッ」と手を口に当てて、言ったことを後悔するような素振りを見せた。
「あ、青峰さん、ごめんなさい……いや、その、つい、本音が……」
「う、海野君、あ、あなたって人は……」
青峰貴梨花がプルプルッと身を震わせながら清陀の顔を睨み付ける。
「わあああっ! ごめんなさい、ごめんなさい……本音じゃなかったです。僕のただの思い込みでしたあ……錯覚ですううう……幻覚ですううう……」
清陀はペコペコと何度も貴梨花に頭を下げ続けた。
「でも……貴梨花さん御自身は、このお相手と初めて会った瞬間に、何か運命のようなものをお感じになったようですね……」
愛流華奈が貴梨花の目を真っ直ぐに見つめて言った。
「『塔』のカードにはネガティブな意味しかないわけではありません……カードの絵柄によく注目してください。天から塔に落ちる稲妻が、ビビビッ、と運命の恋を感じた衝撃のようにも見えませんか?」
愛流華奈はそう言いながら、『塔』のカードを手にした腕を貴梨花に向けて突き出した。
貴梨花が『塔』のカードをもう一度よく眺めると、天から稲妻がジグザグに跳ねるようにしながら塔を直撃している様子が、芸術家などがよく言うような、「天からの啓示」のように天からインスピレーションが降りてくるといった様子をそのまま絵に描いたイメージにも感じることができた。
「そうね、その通りだわ! 私が、そのお方に初めてお会いした時、まさにこれは運命の出会いだと感じたわよ! それこそ私の全身に雷が落ちるような衝撃を感じたわ!」
貴梨花は目を輝かせ興奮気味に言った。
「でも、これは相手の気持ちを観るカードだったのではなくて? 相手だけでなく、私の気持ちも観れるということなの?」




