好きなカードを引いてください
「な、なんだよ、今度は泣き落としに色仕掛けかよっ!」
清陀は自分の手のひらに感じた、女の子の乳房の感触に、内心、幸せな気分に浸っていた。
こんなふうに服の上からでも女の子のおっぱいを触るなんて、生まれてはじめてだ。ああ、もっと触っていたいな……
清陀は心の中ではそう思うも、
「とにかく僕は変な宗教になんて関わらないからな! 手を放してくれよっ!」
と口では言うのだった。
でも、不思議だなあ。女の子と話す時、僕はいつも変にドギマギしちゃって、うまく話せなくなるのに、この占い師の女の子にはなんだか安心して話せるぞ。一体どうしてだろう……
清陀は両手で少女の胸の感触を感じながら、そう思うのだった。
「好きなカードを一枚、引いてください……」
少女が涙まじりの声で唐突に言った。
「えっ……?」
この状況でそんなこと言うの? おっぱい触らせているんだよ? 君はさあ……
少女がカードを引け、とあまりにも唐突に言うので、清陀はすこし驚いた。
「この中からどれでも好きなカードを一枚だけでいいんです……」
少女は片方の手だけを清陀から放すと、テーブルの上に束になって置かれていたタロット・カードを片手で崩し、テーブルの上に扇状にカードを並べた。
カードはどれも裏返しに並べられていて、裏面にはどれも同じ模様が印刷されていた。六芒星の模様が二つ並んで描かれている。なので当然、どれがどのカードなのかは分からないようになっている。
清陀にはタロット・カードの知識は皆無なので、どんな絵柄のカードがあるのかも知らなければ、占った結果にどんな絵柄のカードが出ればラッキーな未来が待ち受けているのかも分からない。
でも、どうせ引くなら幸運を告げるようなカードを引きたい、清陀はそう思った。適当な一枚を何の考えも無しに引くよりも、せっかくなので慎重に選んでカードを引きたい、そういう想いが頭の中をよぎってしまい、なかなか清陀はカードを引くことが出来なかった。
「考えちゃだめです。考えないで直観で選んでください」
少女がカード一枚引くのに迷い続ける清陀の心を後ろからポンと押すかのように言った。
「えっと……じゃあ、これ……」
清陀は自分から向かって一番左端のカード、少女から見れば一番右端のカードを、少女から解放された左手の人差し指で示した。
「これ、ですね……」
少女は左手で清陀の右手を自らの胸に押しあてたままで、空いている右手で清陀の選んだ一番右端のカードをゆっくりとめくった。