へえ、君の名前と同じだね
「だから、その大アルカナとか小アルカナって何なんだよう……大きい愛流華奈ちゃんと小さい愛流華奈ちゃんがいるってこと……?」
清陀が首を傾げて愛流華奈に問いかける。
「大アルカナ、小アルカナと言うのはタロットのフル・デッキ七十八枚を構成する組のことですよ、清陀さん……二十二枚の大アルカナと、五十六枚の小アルカナでタロットは構成されているんです。今回は大アルカナ二十二枚のみで占っていますが……」
愛流華奈がカードをシャッフルしながら清陀に答える。
「へえ……君の名前と同じだね、大アルカナに小アルカナってさあ……偶然にしてはすごいなあ……」
清陀はまたしても不思議そうに首を傾げて、愛流華奈に言った。
「はい、父が大のタロット好きで、私にタロットにまつわる名前を付けたかったみたいで……」
愛流華奈はカードをシャッフルしたまま恥ずかしそうに言うのだった。
愛流華奈はカードをシャッフルし終えると、それぞれのカードをまた一つの束にまとめ、テーブルクロスの上に置いた。
「このカードの山を、三つの山に分けてもらっていいですか?」
愛流華奈が青峰貴梨花に話しかける。
「え? あ? わ、私がやるの?」
貴梨花は、動揺しながら不安げに愛流華奈の目を見つめて訊いた。
「わた、わた、私がカードを触っちゃっていいのかしら……?」
「はい、カードに触れていただいて結構ですよ。貴梨花さんにカードを触っていただくことに意味があるんです」
愛流華奈は優しく貴梨花を見つめ返して言った。
「どちらの手で触れればよろしいのかしら……?」
貴梨花は右手を出そうとして、急に右手を引っ込め、今度は左手を出そうとしては急に左手を引っ込めて、カードに触れることを躊躇している様子だった。
「そうですね、では左手でお願いします」
愛流華奈が優しく告げると、
「三つ、三つよね? カードを均等に三等分にするってことよね?」
と、貴梨花はブルブルと震わせながら左腕を伸ばし、カードの山の上に左手を置くと、積み重ねられたカードの束をジッと覗きこむようにして、正確に三等分にしようとカードの枚数を目で計測し始めた。
「いえ、ご自分の感覚で三つの山に分けていただければ大丈夫ですよ。きっちり三等分しなくて大丈夫です」
愛流華奈はニコッと微笑んだまま貴梨花を見つめ、そう言った。
「わ、分かったわ。私の好きなように三つに分ければいいのね……」
貴梨花はブルブルと震える左手でカードの山を掴みあげ、それをテーブルクロスの上で三つに分けて置いた。
貴梨花が動揺しているせいもあってか、三つに分けられたカードの山は、それぞれ高さがバラバラで、極端にカードの枚数の少ない山と、極端にカードの枚数の多い山とに不均等に分かれていた。
「これでよろしいのかしら?」
貴梨花はまるで飼い主のご機嫌を窺う子犬のように怯えた目で愛流華奈を見た。




