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では、さっそく占いを始めさせていただきます

「あの……貴梨花さん、それでいいですか? 貴梨花さんの今好きな相手の気持ちを占うということで……」

 愛流華奈が貴梨花に優しく問いかける。


「え? ええ、まあ……そ、そうね……それでよろしくってよ……そ、それを占って頂戴ちょうだい……」

 青峰貴梨花は、ほとんど半ベソ状態になりながら、タロットで恋愛運を占うということに、それも貴梨花の意中の相手の気持ちを占うということに同意したのだった。


「おおーっ! ところで委員長の好きな相手って誰なんだよー?」


「そうね、青峰さんのことだから、すっごいイケメンで超お金持ちの御曹司とかかしら? 少なくともこのクラスの男子でないことは確実よねー」


 貴梨花の意中の相手を詮索する野次が次々に外野から投げつけられた。


「な、なによ……好きな相手の名前を教えないと占えなくって……?」

 青峰貴梨花は次々に飛ばされる、「好きな相手の名前を言え」的な野次に動揺し、愛流華奈の目を不安そうに覗きこんだ。


「こ、校内一の才女である、この青峰貴梨花様が、好きな殿方の御名前を、クラスメイトなんかの前で気安く教えるわけがなくってよ……こ、これはトップシークレットに属する事項ですわ……」

 貴梨花は涙目で、愛流華奈に必死に訴えかけた。


「ええ、ご心配いただかなくても大丈夫ですよ……お相手のお名前が分からなくてもタロットは占えますので……」

 愛流華奈はニコッと貴梨花に微笑み返すと、

「では、さっそく占いを始めさせていただきます。貴梨花さん、どうぞ、よろしくお願いします。貴梨花さんの好きなお相手の気持ちと、貴梨花さんとそのお相手の方との関係がこの先、どのように展開していくのかをカードで観させていただきますね……」

と、言って、赤いテーブルクロスの上に積み重ねられたタロット・カードの束の上に手を置き、そっと目を閉じるのだった。


「ああ、なんか集中しているって感じがする!」


「きっとカードに何かの念を送っているのよ!」


 外野のクラスメイトたちが、愛流華奈の振る舞いを目にして囁き合っている。


 愛流華奈は目を閉じてその両手をカードの束の上に置いたままの姿勢で、しばらくの間、無言で何かを念じているように見えたからだ。


「あら、二十二枚の大アルカナだけを使って占うのかしら? カードの束がそんなに厚くないのね……」 

 その時、杏奈先生が愛流華奈の手を置くカードの束を見て、すこし驚いた様子で言った。


「はい、私は普段は大アルカナと小アルカナとを併せた七十八枚のフル・デッキも使いますが、七十八枚だとポケットに入りきらなかったので……でも、二十二枚の大アルカナだけでもタロットは充分に占えますよ。初心者の方はいきなりフル・デッキで占おうとしないで、はじめは二十二枚の大アルカナだけで占うと分かりやすくていいですよ……」

 愛流華奈は目を開け、杏奈先生にそう答えると、手元のカードの山を崩し、両手でカードをかき混ぜるようにシャッフルし始めた。


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