インチキ占いの生贄?
「うわあっ、青峰さんがまた退学処分って叫んでるよっ! 今日これで三回目じゃないか? 僕に一回、愛流華奈ちゃんには二回も言ってさあ……」
清陀は表情を青ざめて、隣の席の愛流華奈に言うのだった。
「……愛流華奈ちゃん、大丈夫かい? 青峰さんにボロクソ言われているけどさあ。あまり気にしちゃだめだよ……青峰さんは君の占いの素晴らしさを知りもしないでインチキだなんて決めつけて、言いがかりをつけているんだ。あんな奴の言うことを真に受けて落ち込んだりしないでくれよ……」
「ええ、私なら大丈夫ですよ。占いを迷信だのインチキだの言われることには慣れていますから……」
愛流華奈は自分の机の上に赤いテーブルクロスを敷きながら、清陀に振り向き微笑んだ。
「へえ……愛流華奈ちゃんって、意外と打たれ強いところあるんだなあ……さすがプロの占い師だなあ」
清陀は、愛流華奈の笑顔を感心しながら見つめた。
「ねえ、青峰さん。あなたの言うことも尤もだけれど、クラス委員長のあなたにそんなに強い口調で言われると、クラスの皆だって上井戸さんに占ってもらいにくくなるでしょう?」
杏奈先生はすこし困り顔で青峰貴梨花を見つめると、
「……だから、まずは青峰さん、あなたが最初に占ってもらったらどうかしら? 占いを体験もしないで、迷信だ、インチキだって決めつけるのは、それこそ非科学的な態度じゃないかな? 科学者はね、一つの仮説を証明するために、何度も何度も実験を繰り返して、そのプロセスを経てはじめて自分の説が主張できるのよ。青峰さんも占いを迷信だ、インチキだって言うのなら、まずはそれを証明するために青峰さん自身が実験してみないと、だめなんじゃないかしら?」
と、半ば屁理屈とも受け取れるような言葉を並べたてて青峰貴梨花に微笑みかけるのだった。
「な、何ですって……?」
青峰貴梨花は冷や汗を垂らしながら驚愕の表情で杏奈先生を見つめた。
「こ、この私に実験台になれと……?」
「そうだ、そうだ! まずは委員長が占ってもらえよ!」
「そうよ! 青峰さんはクラスの模範なんでしょ? だったら模範見せてよ!」
青ざめた表情のまま、身を震わせて立ちつくす青峰貴梨花に、クラス中からの、「まずは委員長が手本を!」コールが投げかけられた。
「ほ、ホホッ。ホーホッホッホッ……よ、よろしくってよ。そ、そこまでクラスの皆さんがこの私に言うのなら、このクラス委員長の青峰貴梨花が率先して皆さんの模範となり、い、インチキ占いの生贄……じゃなかった……一番手になりますわ……」
青峰貴梨花は口元を手で押さえ、高笑いをしながらそう言うも、その顔は、完全に引きつっていた。貴梨花はそう言い終えるやいなや、その足をヨロヨロとよろけさせながら、愛流華奈の席へと歩み寄った。
「う、占いって、い、一体、何を占ってもらえばいいのかしら……?」
青峰貴梨花が動揺しながら、愛流華奈と向かい合うように置かれた椅子に座りこむ。




