糾弾される愛流華奈
「ね、ねえ、愛流華奈ちゃん……」
清陀が隣の席の愛流華奈に向かって囁き声で話しかける。
「皇帝ちゃんの近衛兵たちは柿淳先生を体育倉庫なんかに連れて行ったんだね……そのまま一人で置き去りにするなんて酷いなあ……」
「ええ、まあ……酷いと言えば、酷いかもしれないわね……」
愛流華奈はバツが悪そうに下を向くのだった。
「愛流華奈ちゃんがカードから呼び出す女の子って、愚者ちゃんみたいに優しい子もいれば、悪魔ちゃんや皇帝ちゃんみたいな、ちょっと手に負えないような子まで、いろんな子がいるんだねえ……」
清陀が、好奇心と呆れた気持ちとが両方入り混じった様子で言った。
「う、うん……私もまさか皇帝ちゃんが近衛兵まで呼んであの先生を連れて行くなんて思ってもいなくて……」
愛流華奈は責任を感じたのか申し訳なさそうに清陀に言うのだった。
「……私が具現化魔術で呼び出すのは主にタロットの大アルカナ二十二枚のカードからなの……タロットは全部で七十八枚あるのだけど、その内の二十二枚の大アルカナだけでも色々なカードがあるから、呼び出す子たちにも色々な性格の子がいるのよ……」
「へ? 大アルカナって? 大きくなった愛流華奈ちゃんのことかい……?」
清陀には愛流華奈の言っていることがよく理解できなかった。
その時、
「転校生の愛流華奈さんがカードから召喚した女の子の仲間たちが柿淳先生をロープで縛りあげて体育倉庫に拉致したんです!」
と、クラス委員長の青峰貴梨花が急に席を立ちあがり、愛流華奈を指さして、やや意地の悪い声のトーンで言った。
「カードから召喚した女の子たちの仕業とはいえ、現役教師を縛りあげ拉致するとは、とても許せることではありませんわ! いいですか、皆さん! これはカードを使った暴力です! 前代未聞の暴力事件です! このクラス委員長の青峰貴梨花は、今回の暴力事件の首謀者である、転校生の愛流華奈さんの退学処分を学校側に求めますわ!」
「なんだよ、何か起きると、すぐ退学処分、退学処分、って喚いちゃってさあ……」
清陀は青峰貴梨花の発言を聞き、小さい声でボソッとつぶやいた。
「……自分だって柿淳先生が懲らしめられてスッキリしたくせにさあ……クラス委員長は杏奈先生の前でイイカッコがしたいだけだよ。愛流華奈ちゃん、委員長の言うことなんて、気にすることないよ……」
清陀が小さい声で、隣の席で落ち込んだ様子でいる愛流華奈を慰めるように言った。
「で、でも……全部私の責任だわ……」
愛流華奈は暗く沈んだ表情で俯いたまま、清陀にそう言うのだった。




