9番 THE HERMIT 「隠者」
「うふふっ。さあ、どうですかね……」
愛流華奈は清陀の質問を笑って濁すと、
「……まあ、清陀さんには誤解としか思えなくても、きっと校長先生やクラスの子たちには真実が見えたのかもしれませんね……」
と、愛流華奈は言うのだった。
「はあ? 愛流華奈ちゃんの言っていることはよく分からないなあ……」
清陀は海苔弁を箸でつつきながら首を傾げた。
「うふふ。清陀さんは、クラス委員長の青峰さんが言うような変態じゃない、ってことですよ……」
そう言いながら、愛流華奈はブレザーの制服の内ポケットから一枚のタロット・カードを取り出した。
「隠者ちゃん、出て来て!」
愛流華奈がカードに手を置き、そう叫ぶと、ボムッ! と音がして、カードから灰色の煙がたちこめた。灰色の煙が清陀の机の前に集まり、しだいに人の形を作っていく。
「アルカナや、また儂を呼んでくれたのじゃな?」
全身灰色の衣装を着てフードを頭に被った、銀髪碧眼の、見た目は十二、三歳くらいの少女がそこには姿を現した。右手にはカンテラを持ち、そのカンテラの灯りが辺りを照らしている。左手には黄色い杖を持っている。少女の足元にはフワフワした白い雲が広がっていて、少女はその雲の上に立っているのだった。
「ああっ! き、君はさっき、途中から校長室に入って来た女の子じゃないかっ!」
清陀はカードから出て来た全身灰色の衣装の少女の姿を見て驚きの声をあげ、驚きのあまり口の中に入れたご飯の塊を勢いよく飲みこんだ。
「うぐっ……ぐぐっ……」
清陀が苦しそうにもがく。
「おお、さっきの坊主じゃな? おぬし大丈夫かの……」
カードから出て来た少女が左手に持った杖で、
「ほれっ!」
と、勢いよく清陀の背中を叩いた。
「げほっ、げほっ!」
清陀は背中を叩かれた勢いで、ご飯粒の塊を口から吐き出した。
「ふう……た、助かった……もう、びっくりして、ご飯を喉に詰まらせちゃったじゃないかあ……」
清陀は涙目になりながら、カードから出て来た少女に文句を言うのだった。
「いやいやこれは済まなかったのう……なんにせよ、詰まらせた飯粒が口から出てよかったのう、坊主!」
少女は左手の杖を揺らしながら微笑んだ。
「9番、THE HERMIT.『隠者』のカードから出て来た、隠者ちゃんです。思慮深く慎重な性格で、常に真実を追究し、嘘や偽りが大嫌いな子なんです……」
愛流華奈が、カードから出て来た少女のことを清陀に紹介する。
「……なので、隠者ちゃんが校長先生やクラスメイトの皆さんの誤解を解いてくれたんですよ……『隠者』のカードには、真理や真実、と言った意味もあるんです。隠者ちゃんの目を見れば、必ず誰もが真実を知ることになるんです……」




