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これならムード満点だろ?

「……皆だって見ているし、こんな教室の中で裸になんて、私、なれないわ……」

 愛流華奈はクラスメイトの視線が急に自分の身に集まってくるように感じ、そのプレッシャーを避けようと自らの視線を教室の床へと向けた。


 でも、愛流華奈がもっとも避けたかったのは清陀の視線だった。もし、自分が今ここで裸になって、あられもない姿をさらけ出したとしたら、あの人は一体どんな目で私の裸を見るのだろう……

 そう考えただけで、愛流華奈の頬は赤らみ、その胸の鼓動は早まるのだった。


「へえ、そうかい。こんな教室の中じゃムードが無い、ってかあ!」

 悪魔ちゃんはそう言うと、指をパチッと鳴らした。


 その瞬間、誰も手を触れたわけでもないのに、ひとりでに教室の窓際のカーテンが動き始め、すべての窓がカーテンで覆われた。


 そして、教室の天井に設置されている照明が急に点滅し始めたかと思うと、ピンク色の薄暗い照明へと変わり、教室全体が妖しげなピンク色の照明で照らし出された。そして愛流華奈一人だけに向けて、ひときわ強烈な光がスポットライトのように当てられた。


 教室の壁に設置された校内放送用のスピーカーから、いつの間にかエキゾチックな妖しげなBGMが流れ始めた。


「ケケケケッ。これならムード満点だろ? アルカナのストリップショーにはピッタリのムードだろ? ケケケケッ」

 悪魔ちゃんが教室全体の雰囲気を眺め、満足げに笑う。


「……そうそう、ストリップショーには、観客も欠かせないよなあ。ケケケケッ」

 そう言って悪魔ちゃんはもう一度、指をパチっと鳴らした。


 その瞬間、今度は、周囲のクラスメイト達が一斉に席を立ちあがり、愛流華奈の周囲を取り囲むようにして集まって来た。

 男子も女子も、皆、目をトローンとさせて焦点の合わない目をしながら、愛流華奈に向かって一斉に、

「脱ーげ! 脱ーげ! 脱ーげ! 脱ーげ!」

と大合唱を始めるのだった。


「ケケケケッ。ホラホラ、アルカナさんよ。お客さんは皆、お前がストリップを始めるのを楽しみにしているぜ? さあ、早く裸になったらどうなんだよ? とっとと、素っ裸になっちまえよ! ケケケケッ」 

 悪魔ちゃんはそう言いながら、背中の羽をバサバサッと羽ばたかせて、まるで飛び石の上を飛ぶように、机から机へと、机の上を嬉しそうに飛び跳ねて回るのだった。


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