そして始まる仲違い
「うわああ、助けて! 助けて! 私は無実だあ! 反逆などしていないんだよーっ!」
剣を突きつけられた柿淳大治は両手をバンザイして大きく広げ、抵抗する意思の無いことを示した。
「「両手を頭の上に乗せて、そのまま屈み込め!」」
剣を突きつけたまま少女たちが声を揃えて柿淳大治に命令する。
「はいいいっ、仰るとおりに……」
柿淳大治が両手を頭に乗せ、その場に屈み込む。
近衛兵の少女たちは、屈み込んだ柿淳大治の両腕を後ろに廻させて、ロープで柿淳大治の身体と両腕とをグルグル巻きにして縛り上げた。
「ううむ、お前たち。朕の名を汚す反逆者をよくぞ捕らえた! さあ、早く、牢に連れていけえっ!」
皇帝ちゃんは満足そうな笑みを浮かべると、教室の扉を指さし怒鳴った。
「「ははっ。陛下。仰せのとおり、この男を牢屋にぶちこんでおきます!」」
近衛兵の少女たちは皇帝ちゃんの方を向き一斉にビシッと敬礼をすると、
「「行くぞーっ! 一、二! 一、二! 一、二!」」
と数を数えながら行進し始め、縛られた柿淳大治を連れて教室の外へと出て行った。
「うむ、これで朕の名を汚す者は居なくなった。我が国家も安泰じゃあ」
皇帝ちゃんは満足そうに笑って言った。
すると、皇帝ちゃんの後ろから、
「ちょっと皇帝ちゃんとやら! このジャスティス様がせっかく剣の裁きをあの男に与えようとしたのに、よくも邪魔してくれたわね!」
と正義ちゃんが右手の剣を高く振り上げ、皇帝ちゃんに挑みかかろうとするのだった。
「罪を量りし、女神アストライアーの天秤が皇帝ちゃんを有罪だと言っております!」
正義ちゃんが左手で持つ天秤が大きく傾いていた。
「かくなるうえは大天使ミカエル様由来のこの剣で皇帝ちゃんの罪を断つしかありませんわ!」
正義ちゃんが皇帝ちゃんに向け右手の剣を振り下ろそうとした。
その時、
「ケケケケッ。このままじゃあ、このオレ様の存在感ってものが無いじゃんかよー」
と悪魔ちゃんが自らの尻に生えている尻尾をギュルギュルギュルッ、と正義ちゃんの右腕に絡ませた。
「きゃあ! なにをするのだ! このジャスティス様の裁きを邪魔だてしようと言うのか! この悪魔め!」
正義ちゃんは右腕を悪魔ちゃんの尻尾でがんじがらめに巻かれ、剣を振り下ろすことができなくなった。
「ううむ、朕に斬りかかろうとするとは、正義ちゃんとやらも反逆者のようじゃな」
皇帝ちゃんは右手に持つ生命の十字で、正義ちゃんの頭をバゴッ、バゴッ、と叩き続けた。
「きゃああ! このジャスティス様の頭を叩くとは不届きなーっ!」
「ケケケケッ。悪はいつだって正義に勝つのさあ! ケケケケッ」
「うーん、この悪魔ちゃんとやらもなんだか尻尾が気持ち悪いわい。この気持ち悪い尻尾は国家反逆罪じゃあ! 近衛兵ーっ! 近衛兵ーっ! 正義ちゃんと悪魔ちゃんも牢にぶちこんでおけい!」
外の廊下からザッ、ザッ、ザッ、とこの教室に向かう複数の足音が響き始めた。




