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窓から飛び込む少女達

「きゃああああああ」

と悲鳴をあげながら窓から突然、抱き合った二人の女の子が飛び込んで来た。


 バゴン、と音をたてて二人の女の子はそのまま教卓に激突した。


 教壇に立っていた杏奈先生は、

「キャー」

と、かん高い悲鳴をあげて瞬間的な速さで教卓から逃げ無事だった。


「イタタタタタッ」

と呻き声を出し、教卓にぶつけた頭を手で押さえながら起き上った片方の女の子は教室の中に清陀の姿を見つけると、

「わあ、セイダがいるーっ!」

と満面の笑みを浮かべ清陀の席へ走り寄って来た。


「ぐ、愚者ちゃん?」

 清陀の目には紺色の生地に黄色い花柄のワンピースを着た愚者ちゃんの姿が映った。


「えへへ、そうだよーアタシ愚者ちゃんだよおっ!」

 愚物ちゃんは清陀の席まで来ると、

「セイダーっ、大好きぃーっ!」

と言って、清陀に抱きついた。


「うわあっ、愚者ちゃん! ここ三階だよ? 窓を割って入って来たの? それに、ここ教室だよ? み、皆がいる前で抱きつかないでよーっ」

清陀がバタバタと腕を動かしながら悶える。


「なんでー? 抱きついたって、いいじゃーん! セイダはアタシのダーリンなんだからさあ!」

 そう言って愚者ちゃんがペロぺロ~っと清陀の頬っぺたを舌で舐めまわした。

 ボムッ! という音がすると、愚者ちゃんの着ている紺色の生地に黄色い花柄のワンピースが、清陀の高校の制服に変わった。


「えへへへ、アタシもセイダと一緒にガッコーで勉強するうーっ!」

 愚者ちゃんは紺色のブレザーに胸に赤いリボンを付け、赤いチェックの入ったスカートを穿く、という女子の制服姿となって満面の笑みを浮かべて言う。


「愚者ちゃん、いけませんっ!」

 愚者ちゃんの背後から突然、女の子のビシッとした声でそれを制止する言葉が投げつけられた。


「あ、愛流華奈ちゃん……?」

 清陀が、抱きつく愚者ちゃんの身体からなんとか顔を逸らし、その向こうを見る。

 そこにはストレートの長い髪をしたパッチリ目の女子生徒が立ってこちらを見ている姿があった。紺色のブレザーに赤いチェックのスカートという姿で、胸につけた赤いリボンもとても可愛らしく似合っている、愛流華奈の姿があった。


「はい。愛流華奈です。昨日はありがとうございました……」

 愛流華奈は、すこし驚いた表情をして清陀に礼を言うと、愚者ちゃんに向けて一枚のカードを突き出し、

「愚者ちゃんはカードに戻りなさい!」

と強い口調で言った。


「わあああああーっ! アルカナちゃんがそんなに怒るなんて思わなかったんだようーっ……」

  愚者ちゃんは喚いたが、ボムッという音をたて、黄色い煙に形を変えながらスススウ~ッと吸い込まれるようにしてカードの中へと戻されていった。


「ふう~っ」

と愛流華奈は軽く息を漏らして、『愚者』のカードを制服の内ポケットにしまいこんだ。


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