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5番 THE HIEROPHANT 「法王」

「……出来ればカードの絵柄に描かれている礼拝堂そのものも再建していただけたら有難い……」

 フードの大男は、しわがれた重みのある声で丁重に愛流華奈に頼むのだった。


「カードの絵柄の礼拝堂を……?」

 愛流華奈が腑に落ちない様子でフードの大男に訊き返すと、リリスとイヴも愛流華奈の傍に近寄り、その口を開いた。


「うむ、そうじゃ。こう言ってはなんじゃが、ホルスの目に焼き尽くされたカードの世界を完全に元通りにしたと胸を張って言えるのは、元々のカードに描かれていた絵柄そのものを完全に再現出来てこそのことなのじゃ……」

 リリスが申し訳なさそうに愛流華奈に言う。


「わたくしもそう思います。元々、トート版『恋人』のカードは剣のアーチに囲まれた礼拝堂で王と女王の結婚式が挙げられている様子が描かれています。花や森など自然が甦っただけで、礼拝堂が無いのではまだ不十分と言わざるを得ません……」

 イヴもその口調はやや遠慮がちなトーンで言うのだった。


「そ、そう言われても……まさか教会を再建しろと言われるなんて思ってもいなかったわ……」

 愛流華奈が困惑していると、自身のタロット・ポーチから赤い光が発せられていることに気付いた。


「赤い光って、何のカードかしら……?」

 愛流華奈がタロット・ポーチを確認する。


「まあ、法王ちゃんだわ!」

 それは『法王』のカードであった。


 赤い法衣を身に纏った教会の長である法王が、三重の冠を頭に被り、左手に三重の十字架の付いたしゃくを持ち、ひざまずく二人の司祭に対してその右手を掲げて祝福のサインを送っているカードだ。


「5番、THE HIEROPHANTハイエロファント.『法王』のカードより具現化せよ、法王ちゃん!」

 愛流華奈が『法王』のカードに右手を重ねて叫んだ。すると、ボムッ! という音とともにカードから赤い煙がたちこめた。赤い煙が、しだいに人の形を作っていく。


「アルカナたん、それならボクちんに任してーよ!」

 カードから出た赤い煙は、赤い法衣を纏った一人の少女に変化した。


 カードに描かれた法王の姿と同じで三重の冠を頭に被り、左手に三重の十字架の笏を持った、釣り目がちな十代半ばくらいの少女だった。


「まあ! 法王ちゃんが教会を元通りに再現してくれるって言うの……?」

 愛流華奈が法王のカードから出て来た少女に訊ねる。


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